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紅い果実  作者: 酒田青
童話的小品集たち
32/58

銀の屋根

 銀の屋根瓦が太陽の光に輝く街がありました。

 辺りはうっすらと紫の霧に覆われて、街は秋色の森に抱かれていました。

 そこでは子供たちは健やかに、赤ん坊は笑顔、大人たちも明るく、犬も猫も太り、不幸なものは一人もありませんでした。

 毎日毎日、人々は些細なことで噂ばなしをし合い、微笑みあっていました。子供は元気に木登りをしました。

 そんなに幸せな街には、ある決まりがありました。

 街の人々はそれを知りつつも、毎日を精一杯楽しく生きました。

 とうとう、その日はやって来ました。

 空は墨のように黒く、森は泥のように崩れ、人々が不安におののく日が。

 一人の子が、お母さんにしがみつきました。怖くて仕方がないのでした。お母さんは子供を抱き締めました。

 地面が揺れ始めました。人々は動揺して、おろおろと家族のもとへ走りました。家族ごとに固まって、それぞれ地面を見ました。

 地面が少しずつ、下がっていきました。

 銀の屋根瓦が、落ちました。

 すると、全てが一度に落ち始めました。犬や猫、目を閉じ、抱き締めあった人々、銀の屋根瓦。

 大きな穴に、街は落ちていきました。

 街のあったところは、奈落になりました。

 そして、奈落の底から伸びた巨大な舌がベロリと、唇を舐めました。

 そのあと、ゆっくりと口は閉じました。

 後に残ったのは腐った森と、永遠の黒い空だけでした。


 《了》

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