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第14話

いや何事も無かったらダメだろ~・・・


クリスマスが終わった26日、朝起きて

ボーっとベッドの上で昨日を振り返りながら思う。


いまいち芹沢くんの好感度も上がってる気がしないし・・・

嫌われてるわけじゃないだろうけど、あくまでお友達として仲良くしたいですよ~って強調されてんのかな?


「はぁあぁあぁぁ・・・」


深いため息が無情にも寝室に広がって、結局は付き合う上で何が大事なのかわからなくなっていた。


長い間一緒にいた灯くんは、俺にとって頼りになる存在で、優しくて尊敬する人で、かつ見た目も中身もどタイプだった。

好きにならない理由がないし、ダメだとわかってても熱い時間を過ごしてたもんだけど・・・

いざお互い大人になって、空いた時間を埋めようにも立場が邪魔をして、それでも貫こうと思えば一緒にいられるけど、やっぱりお互いがお互いを諦めた。

本気で好きなら、諦められないもんなんかな・・・


適当な相手でいいなら恋人くらいできる。なんせ要領がいいもんだから。

なのにちゃんと選びたいなぁと思うのは、そろそろ人生経験として、真面目に好きな人とお付き合いしたいからだ。

けどここのところ・・・

灯くんといい、黎人さんといい、芹沢くんといい・・・いい男と全然上手くいかない・・・。


いや・・・そもそも俺が高望みしちゃってんのか・・・?

俺くらいになると選び放題っしょ♪とか内心思ってるってことか?


もしかしたらそうかもしれない・・・と思い当たるふしに、若干自分で引いていた。


芹沢くんは無意識にも意識的にも、俺が年上だからってんで、気を遣って話しているのが見て取れる。

俺もそれを当然と受け取ってるから、気安い言動を取って、浮かれてたんだ。

きっと芹沢くんはそういう俺の態度に気後れしてる・・・。

無意識下で俺は、そのうち好きになってくれるだろうな~なんて驕りがあるんだ・・・。

だからいまいち手応えの無さにヤキモキしてる。


あれ~・・?俺まぁまぁゴミクズじゃね?


いい加減ベッドから腰を上げて、まずは人として自分を律することからか?と思い始めた。

つってもモヤモヤ考え過ぎてもドツボにハマるもんで、誰かに聞いてほしさがある。


悩んでるというほどじゃなくても、決定的な問題点が洗い出せないままいた時

数日後の年末、バイト帰りにバッタリ柊先輩と朝野先輩に出くわした。


「・・・あ~~~先輩!お疲れ様です。」


大学の最寄り駅前近くを歩いていた二人は、会釈した俺に気付いて足を止めた。


「お疲れ、武井くん。」


朝野先輩にはよく思われていないだろうけど、柊先輩はごく自然に挨拶を返してくれた。


「いやぁ偶然っすね。・・・デート行く途中とかっすか?」


二人を交互に見つめながら問いかけると、意外にも朝野先輩が口を開いた。


「いいや、俺たちこの近くのマンションに一緒に住んでるから。」


「あ!そうなんすか!大学徒歩圏内なのいいっすねぇ。」


「そうだね。・・・武井くんは・・・どこか出かけた帰り?」


「いや、俺大学から直で行けるようにバイト先近いんすよ。」


二人は納得した表情で「なるほど・・・」と同時に漏らした。


「・・・年末は、先輩方どう過ごすんですか?」


二人はまた顔をチラっと見合わせて、雑談が億劫だなぁというのが表情で見て取れた。


「そうだね・・・」


「あ~いや、すんません・・・寒いのに引き留めちゃって・・・。ラブラブな年末年始をお過ごしください。良いお年を~~。」


半ば強引に会話を終えて手を挙げた。

柊先輩は踵を返す俺に手を振ってくれた。


ラブラブカップルに意見を聞きたいもんだけど・・・そもそも関係値が築けてないもんなぁ

・・・桐谷先輩も彼女持ちだけど・・・俺がデレデレ話しかけるもんだから、わりと毛嫌いされてるし。

だ~と~し~た~ら~・・・


「灯く~~ん♪」


あっという間に年が明けた正月、1月3日。

母さんと一緒に伯母の月山家、つまり灯くんの自宅へと訪れた。

粗方挨拶や食事を済ませた後、部屋に戻ってしまった灯くんの部屋を容赦なく開け放った。


「・・・なあに?」


嫌な顔一つせず俺を迎え入れてくれるのは、もう灯くんしかいない気がした。


「いやぁ~~・・・俺最近ちょっとモヤモヤでさ~。相談したいけど、適当なこと言う友達しかいないし・・・話聞いてほしいなぁって人には嫌われがちだからさ~~。灯くんが一番適任者なんだよね。」


「はぁ・・・・そうなんだ。」


数年ぶりに再会したあの時から会っていなかったけど、灯くんは特に以前と変わらない様子だ。


「あれ、聞きたくない?興味ない?」


ベッドに腰かけてデスクに向かう彼を覗き込むと、一瞥する彼は、さっきまでテーブルを囲んで和気あいあいと親戚付き合いしていた雰囲気とは違う気がした。


「理人が聞いてほしいことがあるなら、俺は何でも聞くよ?」


その優しさの奥に、いつも無理がないか探ってしまう。

繊細な彼を傷つけたくはないから。


「ふふ・・・。えっとねぇ~・・・ちょっと気になってる子がいるんだけどさ・・・その~・・・わりと大人しくて内気な子でさ・・・俺がグイグイいったら身構えちゃう感じで・・・そういう子ってどうやって仲良くなったらいいかなぁと・・・」


「ふぅん・・・。その子とは今現在どういう関係値なの?」


「えと、偶然知り合って、偶然同じマンションに住んでた子でさ、同じく母子家庭で・・・今年高2かな。時々連絡取り合ったり、クリスマスは夜ご飯行ったりしてさ・・・そこそこフレンドリーな関係にはなれたと思うんだけど・・・いまいち恋愛対象として意識されてない感で・・・。」


灯くんは前髪を触る癖を見せて、長いまつげを伏せた。

背もたれに体重をかけて、しばらく考え込んでから答えた。


「理人の目標はなに?その子と付き合うこと?」


「え、うん、もちろん。」


「じゃあ何でその子と付き合いたいと思ったの?」


「・・・・え~?ふふ・・・ん~・・・ふわふわしてて可愛くてさぁ・・・優しくて真面目で・・・ちょっと灯くんに似てるからかな。」


「・・・それは付き合いたい理由じゃなくて、好きになった理由でしょ?」


「あ、すいません・・・。えっと・・・・好きになったから付き合いたい、じゃダメ?」


「何を相手に求めてるかだよ。」


「あ~・・・」


足りてなかった分析だ。灯くんは更に続けた。


「例えばだけど・・・相手がどんな人であっても、好きになったら一緒にいられるだけで幸せっていう人もいるし、体の相性が最優先だと考えて求める人もいるし、もしくは相手のステータス、容姿や財力、学力とかスキルを求める人もいると思う。仕事熱心な人とかだと、公私ともにパートナーとして優秀かどうかっていう部分を、大きく求める人もいると思うんだ。」


「確かに・・・。ん~~~~・・・俺はさ・・・結構自分がいい加減な人付き合いしてきて、遊んできたな~っていう自覚があるからさ・・・そろそろ一人の相手と真剣交際してみたいなっていうのが入り口だったと思う。それを考えると、自分の表面じゃなくて、ちゃんと中身を感じて見てくれる相手を求めてるのかもしんない。」


灯くんはいつもの柔らかい笑みを見せて言った。


「そっか・・・。理人は自分っていう人間を、他人に愛してほしいんだね。」


「・・・そうだよ~?最初に愛してくれたのは、もちろん灯くんだと思ってるけどね。」


「ふふ・・・俺は理人の他人じゃないからなぁ・・・」


「あ~・・・まぁ近しい遺伝子を持ってるっていうことでは、自分を好きになるみたいに灯くんのこと、好きになってたんかなぁ俺・・・」


「・・・俺はそういうことかもってだいぶ前に気付いたよ・・・。でもそれでも完全に別々の人間ではあるし、俺は素直に男性として理人を好きになったけど・・・。まぁそんなことはいいとして、俺が言いたいのは、理人が恋人に求める『自分の中身を知って、愛してほしい』っていう欲求と、相手も同じことを思ってたら、付き合いやすい人なんじゃないかと思うよ。」


「なるほど・・・」


灯くんはその後も俺が投げかけるあれこれに、的確なアドバイスをくれた。

正月早々恋愛相談って・・・初詣のおみくじにでも頼ってろって話だけど・・・。

それでもやっぱり優しくて相変わらず頼りになる灯くんに、人間的に惹かれ続けていた。



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