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マジック×ウィング ~魔法少女 対 装翼勇者~   作者: マキザキ
第一章:魔法少女部 対 カライン 編

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第13話:蒼の新入生案内




 5月も中旬に入り、光風高校にも初夏の足音が聞こえ始めた。

 つい先月入学したばかりの詩織を始めとする新入生達も高校生活に慣れてきたのか、大城駅前や、宮木商店街等のいわゆる学生街がにわかに活気づき始める。



「ここはゲームセンターとかカラオケ店なんかが多いエリアだよ。ウチの校則では登下校に関する規定はないから、放課後の遊び場に使うといい。でも完全下校時間+3時間を超えると警察官に説教食らうから気をつけてな」



 女子生徒を引連れ、街を行く蒼。

 唐突にハーレムを築いたわけではない。

 今日は新入生にこの街を案内する校内行事で、各部の部長が新入生を連れて大城市を案内することになっているのだ。

 当然魔法少女部の長たる蒼にもお鉢が回り、10人ほどの後輩を連れて街を行脚している。


 光風高校は全国でも有数の進学校であり、市外、もしくは都外からも多くの生徒がやってくるのだ。

 かつての主要産業がほぼ壊滅し、光風高校の城下町と化している大城市は宮木東町にとって、彼らの放課後、休日の消費活動はいわば生命線。

 高校も地域振興に全面的協力を標榜していることから、今回のような地元とのコラボ行事が定期的に開催されている。



「ねーねーあの人詩織の部の部長なんでしょ? 結構カッコよくない?」


「変な部の変な先輩って聞いてたけど全然普通じゃん! むしろフランクで優しそうだよ」



 何の因果か、蒼が受け持ったのは詩織のグループであった。

 蒼に関してなんやかんやと言われ、複雑な気分になる詩織。

 確かに容姿は悪くないかもしれないし、フランクでもあるし、優しさもある。

 しかしサイコなのだ。

 フランクに人をカプセル詰めしたり、自分で撮影した延べ数百時間にも及ぶ魔法少女ビデオを人に延々見せ続ける男なのだ。

 そもそも魔法少女支援が高じて、ほぼ生身でゼルロイドと戦おうとする時点で一般的には相当狂っている。

 とも言えず、とりあえず詩織は「そうだね~結構イケメンだとは思うよ~」「まあ~優しい部長だとは思うよ~」等と適当に受け流した。

 なぜ彼の情報を知っているだけで友人相手にこれほどまでの居心地の悪さを感じなければならないのだろうか。と、詩織は香子の気持ちが少し分かった気がした。




■ ■ ■ ■ ■




「高瀬先輩ってなんで魔法少女部なんて作ったんですか?」


「自分で部を作りたいときって何したらいいんですか?」


「センパイ彼女いるんですか?」



 正午を回り、蒼達は宮木商店街にある食堂「飩啄」で昼食兼、座談会と相成った。

 初めは奇人、変人の類だと聞いて警戒していた新入生たちだが、人当たりのいい蒼と話すうちにすぐに打ち解け、既に蒼は人気者の様相である。

 光風高校ではランチチケットという券を販売しており、高校内の購買や食堂の他に、提携している商店街の飲食店でこれを使うことができるのだ。

 今日は学校のイベントのため、各々1000円分のランチチケットをもらっている。


「うーん……。同じ年くらいの女の子が頑張ってるのに、何もしないでいるってのはどうなのかって思ったからかなぁ」


「空いてる教室を見つけて、顧問の先生見つけて、申請用紙出せばすぐ作れるよ」


「いないなぁ……。 どうにも俺は評判が良くないみたいでね」



 新入生たちからの質問攻めに丁寧に答える蒼。

 彼女たちは蒼の答えに感心したり、笑ったりと、皆好印象のようだ。

 詩織も当初は彼がいつ魔法少女の話題で怪気炎を上げるのかとヒヤヒヤしていたが、この場で燃え上がることはなさそうだと胸をなでおろす。

 


「おっ! 高瀬くん美少女引連れて昼メシかい?」


「そうですよ~。俺も今やモテモテです!」



「この間うちの会社裏で馬鹿でかい蛾を見たんだけどアレはゼルロイドかね?」


「あ~……そいつは多分一昨日紫の魔法少女と戦って倒された個体だと思いますね」



「蒼くんアタシこの間また魔法少女見たわよ! 黄緑色の光…オーラって言うのかしらね? なんだかウニョウニョしたの纏ってたわよ!」


「流さんそれ初出没の子かもしれませんよ! 流さんの魔法少女発見率凄いっすね!」



 食事を後輩たちより早く食べ終えた蒼は、店のオヤジさんとも随分仲良さげに話し、近所の会社勤めと思われるサラリーマンや、新聞の集金のおばちゃんからはゼルロイドや魔法少女の情報を教えてもらっている。

 サイコは基本的に人当たりが良いと言われるが、本当にその通りなのかもしれないと、蒼を見ながら思う詩織。

 しかし一方で、彼が面識のない多くの生徒から気味悪がられているのは気の毒に感じた。

 平日も休日も魔法少女やゼルロイド達の情報を収集し、時に自ら戦い、ズタボロになりながらも何度でもゼルロイドに立ち向かう。

 この進学校にあって、自分の時間を限りなく削りながらの活動は相当に厳しいだろう。

 彼はこれから、大学やその先にまともに進んでいけるのだろうか……。

 詩織はおせっかいながら、そんなことを考えていた。



「君が詩織ちゃんだね!」



 不意に調理場のオヤジさんから声をかけられた。



「えっ!? はい! そうですけど……ゲホッ…ゲホッ!!」



 突然の威勢のいい呼びかけに驚き、詩織は鴨せいろのネギを喉に詰まらせてしまった。



「おっと!悪い悪い! 君、高瀬くんの部の初めての部員らしいじゃないか!」


「え……えぇまあ……」



 むせる詩織にお冷とティッシュを差し出しながら、オヤジさんは嬉しそうに続ける。



「色々奢ってもらいなよ? なにせランチチケット20万円分近く持ってるからな」


「え? 先輩お金持ちなんですか?」


「違う違う……。校内テストやら全国模試やらで万年一位だから毎回奨励チケット貰ってるんだよ。変なことやってるけど勉強は出来る子だからなぁ」



 等と言いながら蒼の肩をポンポン叩くオヤジさん。

 蒼は「いや~ テストは覚えるだけだから簡単ですよ~」等と言いながら笑っている。



「えー!先輩すごーい!」


「今度勉強教えてください!」


「やっぱり学校紹介パンフレットに載ってたのって高瀬センパイだったんですか!?」



 詩織の同級生たちが驚きと尊敬の黄色い声を上げる中、詩織はこのサイコ眼鏡が生徒たちから気味悪がられているのが何となく分かった気がした。


 その後、蒼が良からぬ発言や行動をするでもなく、新入生案内イベントは無事終了した。

 詩織は部室で今日あったことや蒼に対して感じたことを香子に話してみたが、香子は「アイツはそういうヤツだから」と呆れたような、ふてくされたような、それでいて笑っているような複雑な表情でアッサリと答えた。


 

「新里! 今日の子たちみんなウチのマップアプリインストールしてくれたぞ!」



 等と言いながら蒼が満面の笑みで部室に飛び込んできたのを見て、詩織は肩の力が抜けていくのを感じたのだった。


アイテム解説のコーナー


ランチチケット

 光風高校で購入できる食事券。

 1ポイント=1円で光風高校の購買、学食で使うことができる。

 その他にも宮木商店街、大城駅前通りなどの「光風高校ランチチケット提携店」で使用が可能。

 1万円で10500ポイント、2万円で20750ポイント分のチケットが買えるので、多くの生徒は一定期間ごとにまとめ買いしている。

 購入する以外でも入手する方法はあり、校内テストで学年1~3位にはそれぞれ1万ポイント~3000ポイントが支給される。

 全国テストで全国上位に入った場合や、部活の大会で全国トップクラスの成績を残した場合でも2万~1000ポイントがもらえるので、それを目当てに文武に励む現金な生徒も少なくない。


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