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ヴァルキリー戦記【戦闘中行方不明になっていた父親が人型戦闘兵器になっていたので、元の姿に戻す為に一緒に戦い抜く】  作者: 尾松成也
episode2 Boy Meets Girl

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第十五話 「白いヴァルキリーからの脅迫」

 頼むから何もしないでくれよ……。


 そう心の中で願っていたが、女の子は〝白いヴァルキリー〟のコクピットに滑り込んでいった。


 それからすぐに〝白いヴァルキリー〟の関節部分にハッキリとした水色のエネルギーラインが通うのを見て、父さんが小さく溜息を吐く。


『やっぱり、そうなるよな』

「これ以上、格納庫で暴れるわけにはいかない。こっちの話が通じる相手だったらいいんだけど……」


 俺は〝白いヴァルキリー〟に向けて呼び掛けてみる事にした。できれば、戦わずに話し合いだけで終わってほしい。じゃないと、今度は監獄送りになっちまう!


 焦る気持ちを抑えつつ、俺は外部スピーカーを起動して〝白いヴァルキリー〟に呼びかけた。


「〝白いヴァルキリー〟のパイロット、俺の声が聞こえるか?」


 反応はなかった。もしかして、こちらの出方を伺っているのだろうか? マリウス先生が通訳として駆り出されるくらいだ。話が通じていない可能性もある。


 次の一手を必死に考えていると、突然、頭上から父さんの怒声が降ってきた。


『おい、クソガキ共! 抵抗はせず、そのままジッとしてろ! 動いたら即座に〝グルヴェイグ〟の爪をコクピットに突き刺す! 理解したらスリーカウント以内に返事をしろ!』


 それを聞いた俺はサッと血の気が引いてしまった。


「相手を刺激するような発言は控えてくれよ、父さん!」

『あ? これくらい普通だろ?』

「言葉が通じてないかもしれないだろ!? それにこっちが動けば、反撃する理由を与えちゃうかも――」


 〝白いヴァルキリー〟が壁に手を突き、軋む音をたててゆっくりと立ち上がった。


 こちらを鋭く睨み付ける水色の眼光。その口元からは、獣の呼吸を思わせる冷たい蒸気が「フーッ、フーッ」と激しく噴射されている。どうやら、向こうは完全にやる気になってしまったようだ。


『おっ、いいねぇ! 血の気の多い女は嫌いじゃないぜ!』

「そんな呑気な事を言ってる場合じゃないんだけどなぁ……」


 これ以上の被害を出さないため、俺は渋々ながらも〝グルヴェイグ〟の体勢を立て直した。気を引き締め、改めて敵を観察する。


 骨格フレームは線の細い女性的なタイプのようだが、弱点を補うように白い鎧が装着されていた。特に腰から腿にかけてを覆うプレートが分厚く見える。あそこが邪魔で、こちらの攻撃が通りにくそうだと感じていた。


 どこを狙うべきか考えていたところ、〝白いヴァルキリー〟は〝グルヴェイグ〟に向かって手を伸ばした。手の中に光を集約させ、一本の氷の長剣が形成されていく。


『へぇ! もうそこまで使いこなしてやがるのか!』


 思わず、父さんが感嘆の溜息を漏らしていた。


 氷の長剣で攻撃してくると予想した俺は身構えていたが、〝白いヴァルキリー〟は予想外の行動に出た。持っていた氷の長剣を格納庫の床に深々と突き刺したのだ。


 そして、外部スピーカーから凛とした女の子の声が響き渡る。


「赤いヴァルキリーとパイロットに告ぐ! 私達に指一本でも触れたら船を丸ごと氷漬けにするわ! 理解したらスリーカウント以内に返事をしなさい! でないと、貴方達から氷漬けにするわよ!」


 今の脅迫を聞いて、俺の顔から完全に余裕が消えた。


 この宇宙船・ブラズニルは上層・中層・下層の三層構造になっている。そして中層には、俺が通っている学校や、多くの生徒たちが暮らす居住区がある。


 ここは密閉された格納庫だからまだいい。

だが、もしさっきの冷却蒸気や氷の力を外で解放されたら、一般市民はひとたまりもない。


 ここは抵抗せずに、大人しく要求を飲むべきか――。


 一瞬、弱気な考えが頭を過った。

 

「……いや、駄目だろ。なんで俺達が()()()()()の言う事を聞かなきゃいけないんだ?」


 今度はふつふつと胸の奥から怒りが湧き上がってきた。

あの居住区には、俺の友達やお世話になってる人達が暮らしている。その人達に危害を加えると言った時点で、俺の中では完全に敵となってしまった。


「俺はまだ学生だ。軍人じゃない。これからやるのは殺しじゃない。あくまで無力化させるだけだ……」


 暗示をかけるようにブツブツと呟いた後、思いっきり自分の両頬を叩いた。


『腹括ったのか?』

「アイツがやってる行為はテロリストと何ら変わらない。周りにいる軍人達は上官の命令待ちなのか動きやがらねぇし、俺が止めるしかないんだ。父さんは俺に協力してくれるよな?」

『流石、俺の息子! そうこなくっちゃな!』


 俺が操縦桿を強く握りしめると、腕が一層熱くなるのを感じた。エネルギーが〝グルヴェイグ〟に送り込まれ、俺の腕の電子回路が、これまでになく鮮烈な赤色に輝き出す。


『お。〝グルヴェイグ〟の身体が暖まってきたな。今なら〝ナンバーズ〟の能力が使えるかもしれねぇぞ』


 父さんがサブモニターに現在の〝グルヴェイグ〟の状況を表示してくれた。胸部コクピットから全身へ赤いエネルギーが巡っている図に加えて、同調率四十パーセントと表示されている。

 

「これくらいの同調率になれば使えるのか?」

『あぁ。〝グルヴェイグ〟は火を扱うのが得意な機体でな。俺も昔は戦場で大暴れしたもんだ。とはいえ、今の同調率だと使えるのが限られてるがな。アイツらが凍らせた機体を溶かしたりするのは朝飯前だぞ』


 それを聞いた瞬間、俺の口角がグッと上がった。

 

「氷に対して、こっちは火! 相性抜群だな!」


 〝白いヴァルキリー〟のパイロットがカウントし始めている中、今度はこっちからモニター越しに〝白いヴァルキリー〟を鋭く睨み付けてやる。


 自分の視点が〝グルヴェイグ〟のセンサー視点へと完全に切り替わったのを見計らい、俺はスロットルを一気に押し込んだ。

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