プロローグ
一台の赤いバイクが、タイヤが地面を踏みつける音と、荷台の中身が振動でぶつかり合う音を出しながら走っている。
そのバイクの座席には、前にシャオ。そのすぐ後ろにヴィハーンが乗っていた。今はシャオが運転している。
地面はひび割れ歪んでおり、時折バイクが段差で跳ねるので、緊張からハンドルを強く握りしめていた。
集落の住居やアンドロイド達も、修繕が進んだ事で状況が落ち着いており、今の所急ぎで必要なものは無い。
なので、今回は依頼したアンドロイドが挙げた新しい街に行くことにしたのだ。
場所は探索時間を一日として、それも含めて三日かかる場所。初めての遠出の探索だった。
今は探索も終え、集落に帰っている最中である。
「いつもと違う場所なだけあって、色んなのが集められたね!」
「あのエリアは小規模とはいえ商業で成り立っていたからだろう。住居エリアとはまた訳が違う」
「でもナルさんの欲しい物は無かったな。ナルさん、今までどうしてたんだろう」
「幻惑リキッドか。使い捨てカートリッジが無い今、腕のいい幻惑師を求める奴は多い。だが原料が無く煙が出せない今、あいつがアンドロイドに払えるものは無い」
シャオの声は、バイクの振動に合わせるように上下に揺れている。反面、ヴィハーンの声は少しもぶれることなく続いていた。
「そういえば、結局他のアンドロイドはいなかったなあ。ゲペちゃんがお散歩してただけだった」
「エリアルールはあれど、デッドラインが無い街だ。誰でも入れるからこそ、殆どが回収済みで、残りカスの街でしかない。お前がいることで回収できる素材は多かったがな」
「あそこのエリアルールって何だったの?」
「知らん。知らねば危険なルールを除いて、自身に適用されないルールは表示されない。まあ、【窃盗行為の禁止】ではないのは確かだ」
そう雑談を交わしながら走っていると、突然道に銀色のボールがコロコロと転がってきた。太陽の光を反射してチカリと光る。
それは転がってきたというには少々不自然にも動きを停止する。場所が悪いことに、ボールが止まったのは道路のど真ん中だった。
「!?、止まれ!」
「止まる、えっと、ブレーキ! ブレーキは……!」
静止するため、ヴィハーンが咄嗟に声を張り上げるも、シャオの運転技術ではすでに遅かった。
今無理に避けようとすれば横転の危険がある。
ぶつかる直前、ボールがこちらに振り向き……。
――ボールが、振り向いた?
「わぁあああ!」
「ぽぴ? ぽ、p、ぴ――」
ぽぴいいぃぃ…………。
そうして事故が起きたのであった。
シャオ。十歳。初めての事故記念日。




