第6章 ①
「ぐはっ……!」
炎の一太刀を浴びて、男が地面に伏した。
「勝者、ルーミック・ヴェルトゥール選手!」
実況者の声に観客席が湧く。
『初戦を鮮烈なデビューで飾ったルーミック選手でしたが、二戦目となるこの試合、クアトロ中位の一年生との対決。全く危なげなく勝利を収めました。これによって二人のランクは入れ替わり、ルーミック選手は一躍クアトロ中位へ。まだまだ底を見せてはいない様子の彼が果たしてどこまで上り詰めてくれるのか、期待が高まります!』
「今日も勝ったようじゃの、ルーミック」
「まあな」
部屋に戻るといつもの如くヴァリーがリビングでくつろいでいて。……自分が帰ってきた時にはいつもいるけど、ちゃんと学園に行ってるのだろうか?
着替えるのは後回しに、ソファへ沈み込むルーミック。
「見に来てくれたのか?」
「いや、少し用事があっての。デバイスで中継を見とったんじゃ」
「中継とかまでやってるのか……」
「コイツはなかなかの万能ツールだぞ。三年も使っとるのに未だによくわからん機能もかなりあるからな」
「それは逆にどうなんだ?」
少なくとも、そんな威張って言うことではないと思うけど。
「どうだった、俺の戦いは?」
「そうじゃな……」
顎に手を当てて考え込む様子のヴァリー。彼の視線が値踏みするかのようにルーミックを射抜く。社交辞令のような感じで訊いただけなのに思いのほか真剣なルームメイトに若干気圧されつつ。酷評される覚悟で言葉を待つ。
「とりあえずトリプルまでに敵はおらんだろうな。ダブル相手にもそこそこやりあえるはずじゃ。一年の中でなら五指には入るじゃろう」
「――」
思ってもみない好評価に面食らう。――次の一言で一転するとも知らずに。
「じゃが、そこまでだ。やりあえたところで勝てはせんし、シングルは夢のまた夢。到底及ばん。気づいていないのであればなおさらの……」
「気づく……?」
――一体何に?
やれやれと言いたげにヴァリーが首を横に振る。
「やはり気づいとらんかったか」
「何か、欠点があるのか?」
「教える義理はあるまい」
突き放すような冷たい口調に言葉に詰まる。
何が悪かったというのか。ルーミックは今日の試合を反芻してみようとするも、そもそも思い返すような場面がない。
今日の相手はルーミックと同じ剣使い。序盤少し切り結んだだけで、あとはもう前回のランク戦と同様に一瞬で決着はついた。そんな戦いのどこに反省するような点があるというのか。
単なる言いがかりという可能性はヴァリーに限っては考えにくい。ルーミックにとって短い付き合いではあるが、他人を動揺させてどうこう、なんて性格ではないことはわかっているつもりだ。
なら、無いように思えても、きっとどこかに――。
「ワシがお主の戦いを見たのは数回じゃが、今のお主には何度やっても負ける気がせん」
「……なら、やってみるか?」
挑発や卑下だなんて、ヴァリーにそんなつもりはないのはわかってるつもりだ。自分でも、自分が最強だなんて思っていない。それでも。実力も知らない相手にここまで言われて黙っていられるほど大人しくない。
「さっきの試合の疲れはいいのか?」
言葉はない。ヴァリーと視線を交わす瞳が答えだ。
「ふむ……」
ルーミックの欠点は遅かれ早かれ自分で気づくこと。本来ならわざわざ口にするまでもないことだ。
「準備するからちょっと待っておれ」
嘆息? それとも他の感情か。小さく息をついて自室に入って行った彼は何を思って?
それを知るのは本人ばかり。ルーミックがいくら考えたところで答えが出ることはない。
「待たせたな」
「――え」
数分足らずで部屋から出てきたヴァリーは、ルーミックには初見となる制服に身を包んでいた。サイズが合っていないのかカッターシャツはパツパツで、上着もボタンが留めらていない。でも、問題はそこじゃない。ルーミックの目をくぎ付けにしたのはその上着の襟につけられた、自分のモノとは異なる校章。




