『時刻』、呆れる
「聞いた? 一高と二高の言い出しっぺのやつら、二人とも重傷で入院中だってよ」
「いや、それ俺に言われても反応に困るやつなんだけど」
全面戦争から一週間が経った、ある日の昼休み。
三座川高校屋上にて、『時刻』時宮仁時は呆れたような顔を俺に向けた。
「その情報の終着点はお前でいいだろ。なんで俺に言った」
「共有したくて」
「知らんがな」
相変わらずの気だるそうな顔で、仁時は溜息をつく。
「しかし、他の二人が重傷で入院してんなら、なんでお前はそんなに元気なの」
「いやぁ、戦う振りして逃げ回ってたから」
「なんて卑怯な」
「だって俺、基本的には戦えねーもん。武器とかポーズで持ってるだけだし」
「あっそ」
昼食のパンを一口かじって、仁時は俺から視線をずらす。
「まあ、結局『最強』の重力にやられてペシャったんだけどな!」
「ポシャったみたいに言うな」
「重力系の能力だっていうのはうっすら聞いたことあったけどさ、あそこまで効果範囲が広いとは思わなかったっていうか」
『最強』永峰一斗。
噂では、自分の能力を自分で制御しきれていない部分もあるとか。
あの能力をもし制御できるようになったら、あの男の異名は『最強』ではすまないだろう。
それこそ『災厄』と呼んでもいいと思う。
「とりあえずまあ、無事に終わってよかったよな☆」
「無事じゃねーわ、どこが無事だ! 見ろ、あのひしゃげた時計を! へし折れた木を!」
「俺には見えない……」
「諦めんなよ、見ろよ!」
確かに仁時の言うとおり、校門付近は大変な有様になっている。
今回の被害について、人員的な被害が一番大きかったのは二高で、器物的な被害が一番大きかったのが三高。
どちらの被害も少なく済み、そのうえで坂凪最強の称号をかっさらっていったのが、一高というわけだ。
「まあ、器物破損に関しては二高と三高で半額ずつ負担して直すことになったらしいし、大丈夫」
「一高は?」
「……器物破損は負けたやつで弁償というルールで戦ったもので……」
「じゃあ完全に一高の一人勝ちじゃねーか」
やってらんねえ、などとぼやきながら、仁時はパンをかじる。
確かにそれは俺も思う。やっていられない。
これはネットとかで『一高強すぎワロタ』とか言われるやつだ。
嘆かわしい。
「次の戦いでは必ず三高が優勝してやる……!」
「えぇぇそうなるのか? お前、案外やる気満々だな……」
さて、手始めに。
まずは入院している二人の『発端』と、もう一度話をしてこようか。




