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『怪力』、悟る

 現在地、病院。

 大事を取って入院中の会長こと東條飛鳥先輩のところへお見舞いに来た現在。


「戦争、終わるの速すぎですよー……」

「そう言われても、俺のせいじゃないし」

「回復してすぐに三高に向かったのに、到着したらもう全部終わってましたよー、ひどいですよー」


 椅子に座ってゆらゆらと揺れていたら、会長はベッドの上でくすくすと笑った。


「でも、『極神』とは戦えたんでしょう」

「あんなの、戦った内に入りませんー」


 頬を膨らませて、『極神』との戦いを思い出す。

 否。

 『極神』にとってアレは、もしかすると戯れ程度でしかなかったのかもしれない。


「私、途中で気を失っちゃったんですよぅ」

「えっ、そうなの」

「だから最後まで戦った感が全くないですー」

「そ、そっかぁ」


 苦笑を漏らす会長を軽く睨んでから、ため息を一つ。


「目が覚めたら携帯に皇牙先輩からメールが入ってて、急いで三高に行ったんですけど」

「うん」

「到着したら救急車だらけでなんも見えませんでした」

「それはなんか、ドンマイ」


 あの日、私は人生で一番救急車を見たと思う。

 この先何年生きても、あんなにたくさんの救急車を一度に見る機会は、二度と来ないと思う。

 ……来ない方がいい。


「できるなら参加したかったですー……日頃のいろんな憂さを晴らしたかったですー」

「そんなにストレスためてたの」

「女子力とは何かと悩みすぎてはげそうです」

「女子力?」

「女子力とはいったい……」


 深く溜息をつけば、会長は苦笑を漏らし、窓の方へ視線を移した。

 はてさて、今日も今日とていい天気である。


「すっかり夏らしくなってきたね」

「……そうですねぇ」

「和樹ちゃん、夏休みは何をして過ごすの?」

「えー、とりあえず海は必須ですよねー。新しい水着買うんです、そんで友達とキャッキャウフフして遊んでー、夜は花火とかしてー」


 指折り数えながら話していると、会長はにこにこと笑いながらその話を聞く。

 顔を上げて会長の顔を見たら、笑顔のまま。


「何ですか、その顔」

「大丈夫だよ、和樹ちゃん」


 そんなことを言って、会長は私から目を逸らす。


「今の楽しそうな顔だけでも、充分な女子力だよ」


 ……どうしたものか。

 不覚にもときめいてしまったではないか。


「会長」

「ん、何?」

「気障って言われません?」

「え!?」

「あるいはタラシ」

「いやいや、まったく言われたことないよ」

「どうだか」


 溜息をつけば、会長は意味が分からないとでも言いたげに首をかしげる。

 ……どうやら、会長は男子力がヤバい。



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