↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
90/108

『極神』と級友

 何とも大変な現場を目撃してしまった。


 先に名前を名乗っておこう。市川凛那(いちかわ りんな)という名の私は、一ノ宮高校において、あるいはこの坂凪町において、まったく目立つことのない人物である。

 そんな私が何故こうして物語を語るかについては、語りたくなったから、とでも説明しておくこととする。


「凛那、あれって竜崎さんじゃない?」

「あ、本当だ」


 ある放課後のこと。

 クラスメートであり親友の市瀬遥耶(いちのせ はるや)と二人、何気なくプリクラを撮りに来た日の出来事である。


「何だろう、何してるのかな」

「竜崎さんだし……もしかしたら何かしらの喧嘩のようなことを……」


 遥耶と二人、そんな予想をしながらそちらの方向へ近づいて、絶句。

 ゲームセンターの表で仁王立ちする彼女、竜崎帆風の足元には、どうやら二高の生徒らしき女子が二人、折り重なるように倒れ込んでいたわけで。


「私の勝ちですので、嫁はいただいていきますね」


 そう言うと、竜崎さんは店員が持っていたフィギュアを手に取り、つかつかとゲームセンターを出て行った。


「て、店長! 救急車!」

「おおお、おおう、今呼ぶ今呼ぶ!」


 にわかに騒がしくなる店内。店長さんが慌てて電話をかけているのが見える。

 そしてどうやら様子を伺っていたらしい野次馬たちが、次々に解散していく。


「やべー、『極神』のバトル、生で見ちゃったよ!」

「いくらか攻撃くらった時はどうなるかと思ったけどな!」


 野次馬たちの会話を聞いてから遥耶と目を見合わせた。

 アイコンタクト。すぐにゲームセンターを出て、竜崎さんの背中を追った。


「竜崎さーん!」

「ん」


 前方を歩いていた竜崎さんは、私たちの声に気付くと、振り向いて歩みを止めた。


「えーっと……あ、市川さんと市瀬さん。いっちーコンビ」

「いっちーコンビ!?」


 初めて言われた。今まで誰からも言われたことない、そんなこと。

 まさかクラスメートたちに陰でそういうふうに呼ばれていたんだろうか……。

 でも『いっちーコンビ』ってなんか可愛いから許そう。


「怪我とかしてない? 大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫。ご迷惑かけたかな、ごめん」


 心配そうな遥耶の言葉に、お礼どころか謝罪を返してくる竜崎さん。

 あまりしゃべったことがなかったから勘違いしていたけれど、彼女は決して人間に興味がないわけではないようだ。


「いやいや、大丈夫! プリ撮って出てきたらもうバトル終わってたし!」

「ああ、ならよかった」


 再び歩き出す竜崎さんの隣について、並んで歩く。

 すると、竜崎さんはきょとんと首をかしげ、不思議そうに私たちを見た。


「ん、二人ともこっち?」

「うん、バス乗るからこっち」

「じゃあバス停までご一緒しようか。私はそのあと、左へ曲がって帰宅です」

「そうしよう!」


 その日、バス停までの短い帰路の間で。

 私たち『いっちーコンビ』は、彼女を『帆風』と呼ぶまでに親しくなった。


 何が言いたいかというと、つまり。

 一般人の私が『極神』と仲良くなっちゃったよ!っていう、ただの自慢だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。