『鏡像』と『踊子』と『極神』
「彩加ちゃん、やべーよ彩加ちゃん、私の嫁が閉じ込められてる」
「は? ……ああ、UFOキャッチャーに好きなフィギュアがあるって話?」
ある放課後の出来事。
私の相棒こと五咲ちゃんが、ゲームセンターの前で立ち止まった。
「ちょ、行こう、寄ろう、私は嫁をあそこから救出しなければいけない」
「UFOキャッチャーしたいのね、そういうことね」
真顔のくせに、オーラが妙にウキウキとしているのが分かる。見て取れる。
呆れてため息をつきつつ、五咲ちゃんに付き合うことにしたのが三十分ほど前。
「ああっ! くっそう、そんなに私のところに来たくないのか……!」
挑戦すること何回だったか。数えるのもおっくうだ。
私は五咲ちゃんから離れ、他に何か面白いものでもないかと、ゲームセンター内をうろうろと歩く。
そうこうしている間に小銭が切れたらしく、五咲ちゃんは両替機に向かって走った。
「ああっ! ちょっ! 何してやがるんスか、私が取ろうとしてたやつっスよ!」
五咲ちゃんの叫び声だ。何かあったのかと先ほどのUFOキャッチャーの位置まで戻ると、五咲ちゃんが取ろうとしていたフィギュアを抱えた女子高生。
制服を見ると、一高の生徒のようだ。
「何ですか、ほしいフィギュアだったから取ったんです、問題ありますか」
「私がさっきから何十回と挑戦して取れなくて、両替してからまたやろうとしてたやつっス、問題だらけっス」
「公共の場でそんなこと言ったって」
それは確かにそうだ。
フィギュアを持っている女子高生に賛成。
「こうなったら実力行使っス、そのフィギュア力ずくでぶんどってやるっス。彩加ちゃんも手伝って!」
「え、本当に?」
五咲ちゃんに手を引かれて、ゲームセンター前。
フィギュアを抱えた女子高生は、深くため息をつくと、そのフィギュアを近くにいた店員に預けた。
「勝った方があのフィギュアを手に入れられます!」
「五咲ちゃん、そこまでするの」
「する! あれだけは譲れねーもの、愛しい嫁!」
「思うに五咲ちゃんはそろそろ二次元から三次元へ帰ってきた方がいいんじゃないだろうか」
「私たちはコンビなので二人で戦うけど文句は言わせない!」
「しかも結構卑怯って言う」
呆れながら正面の対戦相手を見ると、相手も呆れたようにガシガシと頭を掻いていた。
面倒なことに巻き込まれたなぁ……と顔が語っている。それは私も同じ気持ちだ。
「分かりましたよ、相手すればいいんでしょう……面倒くさい」
「言っちゃった」
「分かればいいんスよ! さて始める前に、名前を聞いておこうか!」
自信満々で言う五咲ちゃんに、彼女は、その女子高生は、呆れ交じりに、吐き出すように名前を言った。
「『極神』、竜崎帆風」




