『審判』と夫婦漫才
俺たちの一学年下に、幼馴染の女の子がいる。
高校二年になってすぐの頃、皇牙がそんな話をした。
「なんやぴーちくぱーちく口うるさい女でな?」
「それ、皇牙は人のこと言えないんじゃない」
「いやいやそんなことないわ、俺なんて大人しい方やろ」
「そうでもないだろ」
相変わらず、皇牙は俺を笑わせにかかってくる。
楽しいからいいんだが、たまには俺以外のところに出張して漫談を披露してくればいいものを……とも思わなくもない。
「で、その幼馴染がどうしたの」
「何でか知らんけどあいつも二高来てん、機会あったら飛鳥にも紹介するわー」
「別に紹介しなくてもいいけどね」
どう考えても、皇牙が二人になるみたいな恐ろしい想像しかできない。
皇牙一人でも持て余しているというのに、二人になったら大変だ。
「そう言いなやー、つれん男やなぁ」
「そのあたりは皇牙よりマシだと思う」
そんな話をしていたのが数日前。
そして今日。
「飛鳥ー。コレがこの間言った幼馴染やでー」
「コレ言うな、どつきまわしたろか!」
「何か思った以上に口悪そうな子が来た」
昼休み、皇牙が教室に連れて来たのがその子。
その子は皇牙を一発ぶん殴ってから、俺の方に向き直った。
「初対面でお見苦しいもん見せてしまいまして、すんません」
「あ、はい」
意外にも丁寧に頭を下げる子だ。
驚いていたら、その子はにっこり、八重歯をのぞかせながら笑った。
「私、北崎星良いいます。なにとぞ、なにとぞ」
「ああ、こちらこそよろしく、俺は東條飛鳥」
「飛鳥先輩! よろしくお願いします」
なおも丁寧に頭を下げるその子、星良ちゃん。
いい子じゃないか。そして皇牙より断然大人しいじゃないか。
「ほんま、うちの幼馴染いっつも迷惑かけてますやろ?」
「はぁー? 俺がそんな迷惑がられとるわけないやろ、なぁ飛鳥!」
「そう言うてお前、どうせしょーもない話ばっかしてんねやろ!」
「んなことあらへんわ、毎回ちゃーんと笑かしてるで! なぁ飛鳥!」
「何やねん、さっきから『なぁ飛鳥』『なぁ飛鳥』て! 語尾か! 特徴的な語尾か!」
俺をほったらかしで漫才が始まってしまった。
「お前はいっつもいっつも自分の話ばっかして! せやから嫌われんねんアホ!」
「きっ嫌われてへんし! 嫌われてへんよ!」
「面と向かって嫌いやなんて言えるわけあらへんやろ、察せ!」
「飛鳥ァー! お前、俺のこと嫌いか? 俺、嫌われてんのんか!?」
「いや、嫌いではないよ」
「ほれ見ィ! 嫌われてへんやろがい!」
「先輩、遠慮せんでええねんですよ!? おもっくそ罵倒してええねんですよ!?」
結論。
皇牙が二人になったようです。




