『怪力』と女子力
「女子力とは、何ぞや」
ぽつり、そんなことをつぶやいたら、私の目の前で女の子二人がきょとんと首をかしげた。
当時、中学三年。受験勉強の合間の一コマ。
「いや、突然言われてもねぇ」
困ったように笑うのは、柳川美桜ちゃん。
名前が既に可愛い。
「珍しく真剣な顔してると思ったら、どういうこと」
呆れたように溜息をつくのは、南道梨里ちゃん。
こちらも名前が既に可愛い。ただし初見では読めない。
「私は女子力高い系女子になりたいのだー」
「いや、そう言われても」
「私たちにどうしろと言うのか……」
呆れる二人の前で、机に突っ伏す。
ちなみに現在地は、学校の図書室である。
「ただでさえ名前が男っぽいー」
「で、でも『かずき』って名前は中性的な方だと思うよ?」
「だがしかし如何せん漢字がコレだ……」
和樹。完全に男性名だ。
せめて『かずき』じゃなく『かづき』で、後ろが月で終わっていたら可愛かったというのに。
「何故、私の両親はこの漢字を選んだのだろうか……」
「和樹はまだいいよ、性別はともかくとして、初見でちゃんと呼んでもらえる名前なんだから」
深く溜息をつくのは梨里ちゃん。
そういえば、進級してすぐの頃、先生に『りり』とか呼ばれてたな。
「それを言ったら私の名前だって、字面こそ可愛い字がそろってるけど、『みおう』ってどうなの。そこどうして『みお』で止めなかったの、止めてもどうかと思うけど」
むっと頬を膨らませるのは美桜ちゃん。
確かに、字面は可愛いとして、音としてはどうなんだろうかと思わなくもない。
「和樹ちゃんが一番マシだと思う」
「そうかなぁー」
予期せず名前談義になってしまった。
私は女子力について二人の意見を聞こうと思っていたはずなのに。
「名前と言えば」
「んー? 何、美桜ちゃん」
「最近強いって噂になってる人で、『あすか』って名前の男の人がいるらしいよ」
え、何それ可愛い、私と名前交換してくれないかな。
あすかって可愛い。神川あすか、理想的な女子っぽい名前。
「『せんり』って名前の男の人の話も聞いたことあるな。ぱっと見、『ちさと』って読んじゃうけど」
「そっちも可愛い」
「意外と可愛い名前の人が多いということに驚きを隠せないんだけど」
「私も聞いたときビックリしちゃった」
「羨ましい……可愛い名前が羨ましい……」
がっくりとうなだれれば、美桜ちゃんがよしよしと頭を撫でてくれた。
ああ、こういうのが女子力なのかもしれない。
「ああ……女子力って本当に何なんだ」
「知らないよ。迷宮だよ、迷宮」
溜息交じりに吐き出された梨里ちゃんの言葉が、一番納得できた。




