『戦場』、鎮圧
視界にその存在を捉えた皇牙以外にも、何人かがその気配に気付いた。
何人かはその時点で行動を止め、何人かは『それ』を倒そうと武器を振るう。
しかし、誰にも止められないまま、『それ』は架月の目の前を通り過ぎ。
中央。
「あぁぁぁっ! うるせえ、うるせえ、うるせぇぇえ!!」
がくん。
響く声と同時に、重力が増す。
立っていた生徒全員が、押し付けられるように、押し潰されるように、倒れ伏した。
「誰だ、俺の通学路で戦争なんかやってんのはよぉぉお!」
倒れ伏す有象無象の中央。
なおも叫び、吠える、その男。
ぐるり、周囲を見回して、再び大きく息を吸って。
「血が騒いで仕方ねえ! 腕が疼いて仕方ねえ!」
空気が震えるほどの咆哮。
さらに増す重力に、残っていた生徒の幾人かが、膝をつく。
その男は。
誰もが知る、その男の名は。
「永峰、一斗」
誰かの呟いた言葉が、名前が、空気に溶ける。
「……はっはっは」
小さな笑い声。
ボロボロになってしりもちをついたままの千里が、へらり、情けなく笑った。
「絶対参加しないって、言ってたくせに」
結局来たんだ。
そんなことを思いながら、千里は後ろに倒れ込む。
「俺の手には負えないや」
永峰一斗。
能力は『重力』。
自身で制御できずに発動してしまうその能力が、自身の戦闘欲を満たさないまま、敵を一掃する。
「おい、戦えるやつはいねーのかよ! なあ!」
一斗の吠える声に、屋上で倒れていた帆風が目を覚ます。
ゆるり、視線を巡らせれば、校門から校庭にかけての惨状が目に入る。
倒れ伏す有象無象。
立っているのはたった一人。
薙ぐように右手を振れば、その手に握られるのは黒い剣。
得物を片手に立つその姿は。
「まさしく、『最強』」
こうして、『最強』永峰一斗の介入により、終わりの見えない戦争が、あっけなく終わりを迎えたという話。




