『二高』、危機
「変な感じがする」
「そういう能力だよ」
「ふうん」
笑みを浮かべたまま、くるくる、槍をまわす帆風。
一歩、踏み込むと同時に、飛鳥の腹を穿つ。穿った、はずだった。
「お」
攻撃は、無効。
同時に、帆風の左肩に斬撃が走る。
すぐさま後ろに跳び退って、帆風は自分の左肩に手を置いた。
「斬られた?」
「俺が、ではないけどね」
長刀を肩に担ぎながら、にこり、飛鳥は笑う。
「なんとなくわかってると思うけれど、俺の能力はいわゆる『法』というものでね」
「……」
「『法』を犯せば『断罪』される。それが摂理」
「そういうこと」
肩から手を外し、槍を握り直す。
今度は、横方向に薙ぐ。つまり斬撃……だが。
「ん」
ピシ、という音と共に、今度は帆風の頬が切れる。
「判定おかしくない?」
「何言ってるの。俺は『槍による攻撃』と言う意味で『刺突』を指定したんだけど?」
「おかしいのは設定か」
にじんできた血を拭きとりながら、帆風は笑う。
可笑しそうに、笑う。
「まあ、いいか。槍なんかなくても」
ぽい。
効かないと見るや、帆風はあっさりと槍を投げ捨てた。
槍が空中に霧散するのを見届けることもなく、左手に右拳を打ち付ける。
「槍さえ使わなきゃいいんだ、とりあえずは」
右手を広げた途端、帆風の周囲を包むように、風が起きる。
風は勢いを増し、やがて鋭利な刃物のように。
「それが君の能力かい?」
その問いかけに、帆風は答えない。
にやり、笑みを浮かべて、地面を蹴る。
頭めがけて放たれた蹴りを、寸でのところで躱す飛鳥。
「!?」
帆風の足が通った後を、風が追う。
飛鳥の頬がわずかに裂ける。飛鳥の髪が、わずかに切れて落ちる。
まるで鎌鼬。
「これは、やばいかも」
自分はどうやら、彼女の何かしらのリミッターを外してしまったらしい。




