『二高』、迎撃
「あ」
声を上げたのは、奈音。
そちらを振り返ったのは、深花と桧山、そして詠時。
「どうかしたか?」
「そこからの手招きはまずいですよ、『審判』さん」
「ん?」
「だってたぶん」
奈音が何か言いかけたのと、校門のそばで帆風が地面を蹴ったのが、同時。
「このくらいならあの子、跳びますよ」
跳躍。
いや、飛翔に近い、飛距離。
着地点は、屋上のフェンス。飛鳥のすぐ隣。
ちらり。帆風はその場の面々を見回すと、おもむろに口を開いた。
「一足お先にスミマセン」
フェンスから降り、屋上に足を着く。
「千里さんたちが屋上に到着するまでに、まだしばらくかかるから」
ぐるり、その場にいる全員の顔を見回して、最後に飛鳥で視線を止める。
にこにこと笑う飛鳥に、帆風もにこりと笑顔を返す。
「誰か、私と遊んでくれるかな」
「それ、誰でもいい感じ?」
「できれば一番強い人がいいな」
「じゃあ、俺が相手になってあげるよ」
フェンスから飛び降りた飛鳥が、帆風の前に立つ。
右手に握られる長刀。それを見た帆風は、満足そうに笑う。
「『審判』、だっけ」
「ご名答」
「まぁまぁ、いいんじゃないかな」
その言葉と共に、帆風の右手に握られるのは槍。
「来なよ」
先ほど、飛鳥が千里に向かってしたように、帆風は千里を手招きする。
挑発するように。
「生意気だね」
一歩、飛鳥が踏み出した直後、空間がゆがむ。ひずむ。
違和感を覚え、帆風は後ろに飛び退いた。
……が、空間のゆがみが、ひずみが、伸びる、延びる。
「!」
「捕まえた」
「……何コレ」
痛みはない。
あるのは、不快感。
腹の底を浚われているような、不快感。
「規則設定」
ぽつり、飛鳥が呟く。
「この空間内において、『刺突』は無効」
空間のゆがみの中で、帆風は小さく笑った。




