『咲乱』、咲く
「規則設定、この空間内において」
にやり、笑顔を浮かべたまま、飛鳥は長刀を振りかぶる。
空間を薙ぐように、深花が右手を振り下ろす。瞬間、深花の身を守るように、ツタが幾重にも重なって広がっていく。
「『盾』は無効」
ぽつり。
つぶやくと同時に、飛鳥が長刀を振り下ろした。
ざんっ、深花の前に重なったツタが、切り裂かれて落ちる。
そしてさらに、深花の肩を斬撃が走っていく。
「……ほう」
肩をぺしぺしと抑えながら、深花は感心したように飛鳥を見る。
「規則。法。……審判。断罪。……へえ」
ぶつぶつ、小さくつぶやいてから、今度は深花がにやりと笑った。
「ずいぶんえげつないことしますね」
「そう? 能力を取り上げないだけまだましじゃない?」
「やっぱりあなた、『いいキャラ』してます」
右手を一度広げて、もう一度閉じる。
指の隙間からバラが咲く。指の隙間から、棘の生えた茎が伸びる。
「空間内において『盾』は無効、それが今回のルールということでお間違いないでしょうか」
「間違いないよ」
長刀を担いで、にっこりと笑う飛鳥。
「ルールはそれだけですか?」
「そうだね。ご存知の通り、空間内においてのルールはひとつしか設定できないものだから」
「ははぁ。もっとよく考えて設定した方がよかったのではないでしょうかね?」
ぴしっ、バラの鞭で床を叩く深花。
同時に、床に花が咲く。深花の足元を囲むように、花が咲く。
「あなたは僕をなめすぎです」
にっこり、微笑んで。深花はもう一度、飛鳥の方へ踏み込んだ。
深花が振りぬいた鞭を、飛鳥の長刀が防ぐ。
今度は飛鳥が、深花の鞭を長刀で切り払う。
「気づきませんか?」
「何にだい?」
「あなたの『空間』、ちょっと『穴』があるんですよ」
床に片膝をつき、手をついて、深花はにやりと笑う。
瞬間、飛鳥の張った結界の外側で、花が一つ、咲いた。




