『職人』、送り出す
「え、一人で戦えってこと?」
「戦いの場が屋上になるなら、俺は戦えないっす。能力の都合上」
「えぇー」
「えぇーじゃないっすよ、とにかく行きますよ」
地面にスコップを突きたてたまま、呆れたように飛鳥を振り返る詠時。
「俺、どこにいればいいの」
「俺の近くにいてください」
「え、やだ告白?」
「……俺、彼女いるんで」
「そこ真剣に返されるとこっちが反応に困るよ!」
飛鳥が自分の近くに来たのを確認してから、詠時はもう一度スコップを担ぐ。
方向を確認。高さを確認。
そして。
「じゃ、行きますよ」
ざくっ、スコップを地面に突き立てた直後、地面が大きく隆起した。
「うっわ、派手なことするね!」
「大丈夫っす、被害は最小限に抑えるんで」
「いや、この状況でそう言われても説得力が」
「とにかく会長はその地面にいてください」
「へ」
ぼこっ、めきっ、そんな音が足元から聞こえて、飛鳥は不意に足元を見た。
瞬間。
「行ってらっしゃい」
隆起する、とは違う。めきめきと音を立てて、地面は形を変えていく。飛鳥は言葉通り地に足を付けたまま、空中に押し上げられた。
「伊田くん! 君はそう言いながらもちゃんと来てくれると信じているよ!」
「いや、行きませんって」
「待ってるよ!」
「行きませんって」
形を変えていく地面の上、意外と余裕そうに詠時に向かって手を振る飛鳥。
その様子を見て、飛鳥が屋上に到達するのを見届けてから、詠時は小さく溜息をついた。
「で、まさかとは思うけど、俺と戦いに来たとかそういう感じですか」
くるり、スコップを担いで後ろを向いた詠時の目の前。
校門の方に二人、一人はスパナを片手に、もう一人はハンマーを片手に。
「おっと、よくわかってるじゃないか、他校生」
「分かりたくなかったんすけどね」
「まあまあ、楽しく行こうじゃないか、他校生」
「楽しくないっすよ」
深く溜息をつく詠時に、その二人はにんまりと笑った。




