『職人』、推挙
「なるほど、なるほど。それで千里にーちゃんが二高に来られたと」
「まあ、そういうことだね」
現在地、二階堂高校生徒会室。
灯熾に敗北したはずの千里は、灯熾に入れてもらった紅茶などいただきながら、今回奇襲に至った経緯を語った。
「しかし『審判』が出かけていたとは誤算だったよ」
「会長も今日突然出かけるって言いだしたからね。普段ならいたと思う」
「じゃあ、本当に不測の事態だったわけだ」
「まあ、一高が今日あたり攻めて来るかもー、ってことには、感づいていらっしゃったようだけど」
「なら結局、奇襲作戦としては失敗だな」
紅茶を飲みほして、千里はカップを置く。
それからゆっくりと立ち上がって、深く息をついた。
「ちなみに、どこに行ったの」
「聞いてどうするの」
「時間が許せば、追いかける」
「千里にーちゃん、私に負けたのに?」
「……痛いところを突くなぁ」
へらり、笑顔を浮かべながら、千里は窓の外を見る。
「確かに灯熾には負けたけど、それが『勝てない』証明にはならない」
千里の言葉に、灯熾はしばし無言。
それから、口を開いた。
「行き先は、三座川高校」
「!」
「考えることは同じみたいだね。千里にーちゃんがやったように、奇襲作戦に出た」
「三高に奇襲って、勇者か」
「さすがに一人じゃないよ」
「え」
きょとん。千里が目をしばたく。
二高で戦えるとしたら、『審判』、『怪力』、今目の前にいる『幻影』。
それから現在入院しているという『踊子』と『鏡像』。
それだけ、だったはず。
「二高にまだ戦える子いるの」
「いるよ。本人はあんまり戦いたがらないから、知ってる人少ないけど」
「誰?」
「きっと聞いてもピンと来ないよ」
「それでも教えて」
食い下がる千里に内心で溜息をついてから、灯熾はホワイトボードを指さした。
「ここで、会長と『怪力』ちゃんが話していたらしいんだ。ほら、その名前」
「……『職人』」
先ほどの戦いで、大きな傷がついたホワイトボード。
その片隅に、いびつな形で書かれた文字。
「そう。『職人』・伊田詠時。私と、三高の『時刻』の、幼馴染」




