『幻影』、思い出す
「忍者みたいだね」
「一緒にしないでください。これは所詮『手品』なんですから」
「いやいや……手品の域は軽く超えてるでしょ」
生徒会室内、視線を巡らせる千里。
どこを見ても、どちらを向いても、灯熾の姿がそこかしこにある。
内心で混乱しながら、千里はもう一度刀を構えた。
ぱしゃり。
水が跳ねる音に、振り向きざま刀を振るう。
確かな手ごたえ……かと思いきや、真っ二つになって落ちたのは分厚いファイル。
ぱしゃ、ぱしゃ、いろんなところから聞こえる水音に、千里は辺りを見回す。時々飛んでくるのは、ノートだったり、ペンだったり、はたまた座布団だったり。
「うわー、君も相変わらず性格悪いね」
「そういうわけじゃないですよ」
灯熾の声が聞こえてきた方向に、炎を飛ばす。
ぼっ、と音を立てて燃えたのは、観葉植物。
「基本的に戦うことは好みません」
次に聞こえた声に炎を飛ばせば、段ボール箱が燃える。
「さすがにこれ以上器物破損をされますと困りますので」
声がした方向に振り向いた直後、ごつっ、と後頭部に何かがぶつかる感覚。
がくり、千里が膝をついた瞬間、水浸しだった生徒会室からは水が消え、散らかり放題の生徒会室に変わった。
「これでチェックメイトと言うことで、ご勘弁願えませんか」
「……うわぁ……まさか過ぎて現実を受け入れたくない」
千里の後頭部に突き付けられたのは、教師が板書に使うような三角定規。それを持ったまま、灯熾は怪訝そうに眉をしかめる。
「灯熾に負けるとか屈辱すぎる。本当、やってらんないよ」
くるり、振り向いた千里は、灯熾に向かってにこりと笑って見せた。
その笑顔に、灯熾はきょとんと目をしばたいた後、小さく吹き出した。
「何笑ってるの」
「ごめんなさい。今、思い出した」
くすくす、楽しそうに笑った灯熾は、くしゃりと千里の頭を撫でた。
「元気そうだね、千里にーちゃん」




