『神官』、呆れる
一ノ宮高校精鋭による二階堂高校奇襲作戦当日。
「架月ー。行こうよー」
「あー、はいはい、了解」
教室まで迎えに来た帆風に返事をしながら、架月が荷物をまとめる。
「あれ、上川くんデートでも行くの?」
「似たようなものかな」
「マジで!? っていうか上川に彼女いたんだ、意外すぎるウケる」
「意外がるのは構わないけどウケるのやめてくれない」
クラスメート女子の言葉に溜息をつきながら、ちらり、帆風の方を向く架月。
その視線に気づいた帆風が、眠そうな顔で親指を立てた。
…どういう意味だ。
「お待たせ」
「うん、行こう。やれ行こう」
「テンションどうしたの」
ひょこひょこと歩き出す帆風の後ろに続いて、架月も歩き出す。
「帆風、寝癖ついてるよ」
「さっきまで寝てた。おかげで体力満タン。しかし眠い」
「ダメじゃん」
眼鏡をかけ直しながら、ちらり、架月は窓の外へ視線を送る。
やたらといい天気だ。奇襲日和。なんて。
「そう言えば帆風」
「何かな、架月」
「二高の場所分かる?」
「………………うん」
「何その気になる間、絶対知らないじゃん」
「てへ」
「無表情でそういうこと言っても可愛くはないから。むしろイラつくから」
「無慈悲」
「誰がだ」
くだらない会話を繰り広げながら、階段を下りる。
すれ違う生徒の中に、彼らがこれから他校に奇襲をかけるなどと考える者がいるだろうか。いや、いまい。
「やあ、お二人」
玄関に差し掛かったところで、楽しそうな声が聞こえる。
二人そろってそちらを向けば、にこにこと笑いながら片手をあげる千里の姿。
「千里さん、こんちはー」
「こんにちは」
「元気そうだね」
「さっきまで寝てた。体力満タン。ただし眠い」
「途中で寝ないように気を付けてね」
帆風の頭をわしわしと撫でてから、千里は架月に向かってにっこりと笑って見せた。
「さあ、行こうか」




