『炎帝』、気づく
「さて、改めて、だけど」
現在地、一ノ宮高校・資料室。
眼鏡の位置を直しながら、架月は口を開く。
「現時点で、集まったメンバーは僕と帆風の二人」
「お、おう」
「で、『最強』に提示された人数は五人」
「おう」
「どうするか」
はあ、と溜息交じりに天井を仰ぐ架月。
頭を抱えて机に突っ伏す三崎。
ふあ、と小さく欠伸を漏らす帆風。
「でもね、三崎くん」
「何、帆風ちゃん」
「たぶん永峰一斗、どうあっても参加する気ないと思うんだよ」
「へ」
帆風の言葉に、三崎が顔をあげる。
「だってね、永峰一斗レベルの戦闘要員が五人も準備できるなら、永峰一斗が五人いるようなもんであってね」
「それはそうだな」
「そうしたら、『そんなにいるんだから俺いらないじゃーん』とか言って逃げる可能性もあり」
「……何だと永峰さんあの野郎!!」
がたがたっ、勢いよく立ち上がる三崎を、帆風と架月はきょとんとした顔で見る。
「え、じゃあ何、人数揃えずに行けば逆に『お前ら仕方ねーなぁ』みたいな感じで参戦してくれるとか」
「その場合は『人数集められなかったんだから俺は参加しないぜ』になる」
「そこは言葉通りかよ!」
がっくり、肩を落とし、机に突っ伏す三崎。
顔を見合わせた帆風と架月も、小さく溜息をついた。
「あー、でも三崎くん」
「何だよ」
「私、一人心当たりある」
「え! マジか!」
「ん。最近あんまり名前聞かないけど、たぶん一高に進学したはず。そんな噂聞いた」
「誰、誰!? 一年?」
「んーん、三年」
「三年?」
三崎が首をかしげるのと、架月がドアの方を向くのと、帆風が口を開いたのは、ほぼ同時。
「『炎帝』・浦谷千里」
その言葉と、ドアが開いたのは、同時。
帆風と三崎が同時にそちらを振り向けば、ドアを開いた状態で目をしばたく人影が一つ。
「あれ、もしかして呼ばれた?」
自称・善良な一生徒。
永峰一斗が友人と呼ぶその男こそ、『炎帝』・浦谷千里である。




