『時刻』、提案
「……ぶはっ」
「笑うな」
「いや、ごめん、まさか過ぎてうけ、げっほげほげほっ、むせた」
笑いすぎて咳き込む桧山を横目に、仁時は小さく溜息をついた。
「初恋! 仁時の初恋! うける」
「うけんな」
「やべーじゃん仁時、そいつ来たらどうすんの、お前戦えないだろ」
「うん、無理。だからそこは他にお任せしたい」
ごろん、と寝返りを打つ仁時。
桧山は笑いすぎた涙目のままメモ帳をめくり、仁時の方を見た。
「大丈夫だ、問題ない」
「そうかい」
「とりあえずは、そうだな……お前、従妹には勝てる自信あるか?」
「ねーな」
「『神官』には」
「……ねーな」
「……お前、誰になら勝てんの?」
「お前には勝てる」
「俺、敵じゃねーよ。まず戦えねーし」
参った。
困ったように小さな溜息をついた桧山は、もう一度メモ帳に目を落とす。
「あ、でもたぶんだけど」
「あん?」
「俺が勝てなくても、あいつが参加するなら大体なんとかなるんじゃねーの」
「あいつって」
「ほら、一年の女子でさぁ……何だっけ」
思い出せそうで思い出せない、とでも言うように、うろうろと手を動かす仁時。
その動きを見ながら首を傾げた桧山は、やがて何か思い出したように、口を開いた。
「『百式』?」
「そうそれ! 斑鳩奈音!」
「あの子か。そういえばまだ声かけてなかったな」
「あいつがいればまさに百人力」
がばっと起き上がった仁時は、楽しそうに笑みを深めて、桧山の顔を覗き込んだ。
「お前、よくわかったな?」
「まあ、仁時の考えてることなら大体は、な」
「さっすが親友」
「褒めても何も出ねーぞ」
がさごそ、桧山がポケットを探る。
仁時が掌を上に向けて手を出せば、桧山がその上に何かを乗せる。
のど飴、だ。
「おばあちゃんかよ」
「うっせ」
「いただきます」
にんまりと笑う仁時に、桧山もつられたように笑った。




