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『百式』、不満

「不完全燃焼だ」


 現在地、図書室。

 左頬、剥がれかけた絆創膏を貼り直そうとしていた僕に、彼女はそう言った。


「どうしたんですか、斑鳩さん」

「どうしたもこうしたもない。帆風と戦えなかった」

「あー……」


 そうでした。

 斑鳩さんは、『百式』こと斑鳩奈音さんは、『極神』こと竜崎帆風さんと戦えることを楽しみに、全面戦争への参加を表明したのでした。


「それを言ったら僕も和樹ちゃんと戦いたかったものですよ」

「それでも信楽さんは『審判』さんと戦って楽しそうだったからよいではないか」


 ぐったり、図書室の机に突っ伏して、斑鳩さんは言う。

 そのため表情はうかがえないのだけれど、きっといつも通りの無表情をしているんだろう。おそらく。


「式ひゅんひゅん飛ばして重力に押しつぶされて終わったよ。何て不完全燃焼」

「後半燃え尽きててぐったりしてた僕もやや不完全燃焼です」


 大量の不良たちが集まってきたあたり。

 『審判』に体力で負けてへなへなになっていたあのあたり。

 何故か『審判』と『極神』と三人で屋上にいた、あのあたり。


「僕は何故あの時、あの面子と一緒にいなければいけなかったのでしょう」

「いや、別に一緒にいなければいけなかったということはないと思うけども」


 そう言いながら、斑鳩さんはようやく顔を上げた。

 やっぱり、いつも通りの無表情だ。


「でも私、そう言えばちょっと思ったんだよ」

「何をです?」


 斑鳩さんの言葉に首をかしげると、斑鳩さんは机に顎を乗せて、こてん、と顔を倒した。


「信楽さんと『審判』さんは、信楽さんが寄せなくても似てたと思う」

「えー、それは何か嫌です」

「で、『審判』さんと帆風は、向かい合っただけで何か似てた」

「ああ、それはわかるかもしれません」

「でも」


 それから斑鳩さんは、顔を横にしたままで僕を見る。


「信楽さんと帆風は、どう頑張っても似ない」


 ふむ、それは。

 椅子の背もたれに寄りかかって、腕を組む。


「……それはたぶん、あれですよ、斑鳩さん」

「あれとは」

「『審判』殿が真ん中で、僕と彼女は対極なんです」


 ぱちくり、斑鳩さんが目を瞬かせる。


「つまり、ニンジンと大根は似ています。形が」

「ああ、うん」

「大根とレンコンは似ています。色が」

「うん」

「ニンジンとレンコンはどこも似ていません。そういう感じです」


 どうでしょう。我ながらナイスなわかりやすい例え。

 そう思いながら斑鳩さんを見たら、眉をひそめられた。ええ、何故。


「例えが野菜ってあたり、信楽さんっぽくてなんかヤダ」

「それはひどい」


 思わず、笑った。

 僕としては、その毒舌が斑鳩さんっぽくてとても良いと思います。



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