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青藍の魔術師は陰に咲く  作者: RIM


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4.魔力測定

 昼休みを終え、午後は魔力測定の時間である。


 軽く昼食を取った後、クラスでは四人一組となった。


 魔力測定とは、魔力測定器である無色透明な魔水の入った定型の丸い瓶を手に取り、色の変化によって魔力の質を測るというものである。


 流れのままに、エルはファルとアルウィンと共に魔力を測定することになっていた。




「この班、一名分足りませんがもう一人探してきますか?」


「いい。ここにいるメンバーで大丈夫だ」


「そうですか」




 特に注意をされることもなかった為、教師には話を通してあるのだとエルは受け取った。


 周りからエルへの視線は相変わらずあるが、それも特に口を出されることもなく、魔力測定の説明を受けた。




 丸い瓶に入れられた魔水に魔力を込めることによって、オドの量と濃度を測ると教師が説明をしてから、それぞれ班になり測定を開始した。


 最初は透明だが、魔力が濃いほど晴れた闇夜の色に近くなるといわれ、闇夜に近いほどの濃い色は滅多に見られないという。




 ファルは魔水を見ながら、思い出すように口にした。




「滅多には見られないだろうが、エルも知っている奴がその闇夜に近い色をこの学園で出したことがある」


「私の知っている方ですか?」


「サーシャ」




 サーシャ……そう聞いて、あの火竜に襲われた時の記憶が蘇ってきた。


 火竜に襲われたあの場には、ファルとセリア先生の他にもう一人、サーシャと呼ばれる結界で私を守ってくれていた人がいた。


 あの時はいっぱいいっぱいで、顔もほとんど覚えていない。




「あの方はそんなに凄い方だったのですね」


「――いや、魔力量も濃度もありすぎてコントロールするのにかなり苦労していた。結局、魔術は実際に使えなければ意味がないんだ」


「なるほど、大変だったのですね」




 エルがファルと話をしている間、アルウィンが魔力を測り終えていた。




「……アルウィン様の測られたその魔水、なにやらどす黒くないですか?」


「そうだね。黒い霧のようだ」




 魔力量が多ければ、魔水には青色が付いていく。


 対して濃度が濃いほど、その色は暗がりが広がっていく。


 アルウィンの魔力は黒い霧にほんのり薄い青が付いているような色をしていた。


 というか、ほぼグレーである。




「アルウィンは魔力量が少ない割に、濃度が濃いんだよ」


「魔力の濃度が濃いと、たしか陰陽の属性魔術の具現化が出来ると聞きますが……。そもそも魔力量が少ない場合はそれは可能なのでしょうか?」


「僕は陽属性だから一瞬ならば光を出せる可能性はある、といったところかな。長時間は魔術自体を扱えないんだ」




 その言い方からして、魔力の量が少ないということは、発動時間も短くなってしまうということなのかとエルも理解した。




「だから普段は少し、工夫をしているんだ」


「工夫ですか?」


「そう。僕は水属性魔術を使うんだけど……」




 アルウィンはそう言いながら握りこぶしをつくって最短詠唱を口にした。


 直後、キンと高い音が小さく鳴ると、アルウィンが手を広げる。


 そこからパラパラと机の上に落ちていくのは氷の粒で、机に落ちると共にすぐ水に変化してしまった。




「氷、ですか」


「そう、温度を少しいじって凍らせたんだ。これなら手から離しても形を保っていられるからね」


「アルウィンの濃度が濃いからこそ出来る技だな」




 そう話しているうちに無色透明に戻った魔水の瓶を、今度はファルが持つ。


 先程見たアルウィンの色よりは青色が付いているが、青黒い霧のようだった。




「具現化した所を見ていた時点で、エルもこうなることは知っていただろうけど」


「やはり濃いのですね」




 陰属性魔術の具現化……それは一人であの火竜の炎を一瞬にして消したことからして、予想はしていた。


 正確には、炎の魔力を『奪った』のであるらしいが。




「深い夜空の色になるには、もっと魔力量があって青色が強くなければ見られないのでしょうか」


「そうだな。サーシャに見せてもらうか?」




 そう言ってファルはエルに意地悪な笑みを向けてくるが、さすがに年上のようだった彼にこんな理由で魔力を見せてくれなんて頼めるはずもない。




「遠慮します」




 そう彼に断ってから、ようやくエルの魔力を測る番となった。


 初めて触れる魔水の入った瓶を、恐る恐る手に取る。


 もわりもわりと色付いていく青色に、エルの心が少し踊るようだった。


 綺麗に色付く青色は、澄み切った青空の色をしていた。




「これは」


「どちらも中程度の色付きだね」




 アルウィンもファルも、その光景をじっくりと覗き込んでくる。


 そんなにじっくりと見られてしまうと、自分の魔力が少し恥ずかしく思えてきた。


 濃度の濃い二人から見たら、私の色は劣っているように見られるだろうか?


 顔には出さないが、心の内では少しむっとしてしまう。




「あら綺麗な青色だこと」




 ふとエルの背後からそう声が聞こえると、思わず手の力が抜けて瓶を落としそうになってしまった。


 何かと思えば巡回していた教師である。




「あなたの魔力はバランスがとてもいいのね。綺麗だわ」


「あ、ありがとうございます」


「まだ皆さん成長途中であるのに、この班だけ成熟しているようだわ」


「え?」




 そこで初めてエルは他の班の魔水の色を見たが、どれも水色や薄いグレーばかりで、ここまで色付きを見せている班は見当たらなかった。


 もしかして、思っていたよりは恥らわなくて大丈夫だったのかもしれない。




「さて皆さん、各自記録して提出してくださいね」




 そう話しながら教師は教壇に向かっていった。


 エルも一息ついてから記録用紙を提出しに行き、そしてまた班に戻る時だった。




 ファルもアルウィンも触れていない魔水の瓶が、青黒く色付いているようだった。


 エルは己の目を疑い、目を擦った。


 しかし魔水は瞬く間に色を失っていき、再び無色透明になったのだった。




「ファル、いじりました?」


「なんのことだ?」


「イタズラしないでください」




 あの色を出せるのはこのメンバーの中でファルしかいない。


 頬杖をついた彼はまたニヤリと楽しそうな笑みを見せ、べーっと舌を出した。


 その舌引きちぎってやろうか?


 おしとやかなエルはその言葉を内心で留めたのだった。


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