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欲張ってチートスキル貰いすぎたら、ステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します  作者: ゆさま


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鏡像イグニス

 俺とレイナは、木の陰に隠れて、ディアージェスが来るのを待っている。


 手をつないで転移したのだが、転移後もそのまま手をつないでいた。レイナが、ちょっと強めに俺の手を握っているのが、なんだか可愛い。


 二人で魔力を抑え込んで、息をひそめていると、レイナが俺にべったりと密着してきた。彼女の吐息と鼓動、それに体温を感じて、思わず俺の体は強張ってしまう。


「そういえば、レイナと二人きりになるのって久しぶりだよね?」


「はい。カイト様に初めて可愛がっていただいた時以来です」


 レイナは熱っぽく俺を見ている。普段あまり表には出さないけど、彼女はかなりの肉食系女子だ。潤んだ赤い瞳には、飢えた獣のような抑えきれない衝動が宿っているように思える。


 そんな目で見つめられると、俺の鼓動まで速くなってしまうじゃないか。


「次のディアージェスって、どんな奴だろうね?」


 俺は高鳴る鼓動を誤魔化すために口を開くが、どんな奴かなんてレイナが知るわけないよな……。


「どんな相手だろうと、身命を賭して必ずやカイト様をお守りいたします」


 俺の手を握るレイナの手の力が、一層強くなった。レイナの俺に対する感情が伝わってくるようで、余計にドキドキしてしまう。


「うん、頼りにしてるよ」


 そう返して、それからは何も言えなくなってしまった。


 気恥ずかしいような、微妙な空気感でしばらく待っていると、上空に強い波動を持った男が見えてきた。


「来たな。レイナ、頼む」


 レイナは「はい」と返事をして転移能力を使い、俺たちはそいつの進路を遮るように転移した。


 突然目の前に現れた俺たちに、男は一瞬慌てたように見えたが、周囲を探って俺とレイナの二人だけだと確認すると、ニィと笑みを浮かべた。そしてマントを翻し声を上げる。


「俺様は『鏡像』のイグ……」


 その時、レイナはその男の背後に瞬間移動すると、大鎌を一振りして頸を飛ばしてしまった。


「カイト様の前に立ちふさがるのなら、何者であろうとも斬り捨てるのみ」


 名乗り終わる前に、斬り捨ててしまうとは容赦がない……。レイナが倒すと、俺のレベルが上がらないんだけど……なんて、やる気になっている彼女にとても言えないが。


 ところが、斬られた男は赤黒い煙になって消えたかと思うと、すぐに元の姿に戻った。斬られたはずの頸も元通りになっており、余裕の笑みを浮かべてレイナを見ている。


「そっちのねーちゃんはせっかちだな? きちんと名乗らせろよ。俺様は『鏡像』のイグニス。魔王軍幹部ディアージェスの一人だ」


 蘇生した? いくら何でも不死ってことは無いはずだから奴の能力か? あるいは幻覚の類か……。


 そんなことを思っていると、背後に強い魔力を感じた。振り返ると、イグニスがもう一人空中に立っている。


 なんだ? あっちに立っているあいつは双子とか、そっくりさんとかか?


 俺が戸惑っていることなどお構いなしに、二人のイグニスの魔力が急激に上昇する。


「ククッ、燃え尽きろ『バーニングダンパー』」


 二人のイグニスが同時に魔法を発動させると、空を覆うほどの火炎が俺たちめがけて飛んできた。俺とレイナは即座に魔装術を発動し、武器で薙ぎ払いながら回避した。


 どうにか魔法を凌ぐと、二人のイグニスは移動し、並んで立っている。全く同じ見た目で、感じる波動も全く同じの男が二人いる……?


「この程度の魔法じゃ、効かないってか? なかなかやるな」


「俺を殺すのは魔王の役目じゃないのか?」


「お前が俺を殺しに来たんだから、返り討ちにするのは当然だろ? その辺は女神様にも確認済みだ」


 それもそうか。俺も無抵抗の相手を殺すのは抵抗があるから、丁度いいと言えば丁度いい。


「それよりさー、俺を殺したはずなのに復活しただろ? ってか、俺が二人いる理由を知りたくないか?」


 教えてくれるなら聞くが、能力の解説なんてしない方がいいんじゃないのか……?


 そんなことを考えていると、イグニスは勝手にペラペラと話し出した。


「さっき復活したのは、女神様より賜った『双魂の神鏡』っていう神器の能力だ。使用者の鏡像を作り出す能力の神器なんだぜ」


 片方のイグニスは、もう片方のイグニスを指差す。


「こいつは神器で作り出した鏡像だ。しゃべらないってとこ以外は本物と同じだ。スゲーだろ? さらに俺を殺しても、鏡像がバックアップとなって俺を蘇生する。もちろん鏡像をいくら倒しても復活する。俺と鏡像をまったくの同時に殺さないと、永久に蘇生し続ける!」


「黙っていた方が良かったんじゃないか?」


「はっ! 言ったところで、俺を殺すなんて無理なんだよ!」


 イグニスがそう言った直後、奴の鏡像が消えた。奴は勝ち誇るように笑っている。


「俺と鏡像をまったく同時に殺さないと無限に復活できる、ということは鏡像をどこかに転移させれば、実質不死身だスゲーだろ?」


「なんて面倒な能力だ。他にもっといい能力の神器はなかったのか?」


「ふん、女神様が俺にこの神器をくれたんだよ! 俺に拒否権はねぇ!」


 こいつも女神の玩具か。気の毒だが、手は抜いてやれない。


 鏡像の波動を探っても、ここからでは全く感じられない、かなり遠くに転移したのだろうか。俺は魂のハーネスを通した念話で、ノエルに事情を説明した。


「……そんなわけで、イグニスってやつの鏡像がどこに転移したか調べて」


「えっと、ダンジョン内にいるわね」


「レイナに転移して追ってもらうから、詳しい位置情報をレイナに送ってくれる?」


「了解、レイナに位置情報を送ったわ」


 一瞬だ。さすがノエル、仕事早いな……。


 俺はレイナに「行けそう?」と尋ねると「問題ありません」と頷いて、転移していった。


 俺はイグニスに向き直り、剣を構える。


「鏡像の位置を特定して、レイナに追ってもらった。これで鏡像とお前を同時に倒せばいいんだな?」


「ばかな!? 転移先は俺のダンジョンの管理区画だぞ? 一度も行ったことのない場所に転移できるわけがない!」


「レイナならできるよ」


「なんだとっ? だが相棒の姿も見えなきゃ、声も聞こえない。この状況で俺と鏡像を同時に殺せるわけねぇ!!」


 普通はそう思うよね。でも俺とレイナならそれも可能だ。俺はレイナに念話で話しかけた。


「レイナ、この状況って、双子の悪魔アーヴィルとイーヴィルの時とほとんど同じだよね。俺たちなら余裕だろ?」


「おっしゃる通りです。この愚か者に、カイト様の偉大さを思い知らしてやりましょう!」


 俺がレイナと念話でやり取りしていると、イグニスは焦れたのか大声を出した。


「実は相方がいなくなってビビってるんだろ!? かかってこないならこっちから行くぜっ!」


 イグニスは、杖を出して俺に向けた。同時に奴の魔力が急激に上昇し、神聖魔法の火炎が顕現する。


「くらえ! ヴォルカノン!!」


 俺はベネトレイトグリームで、放たれた火炎の相殺を試みる。魔法の威力は俺の方が弱くて消しきれないか。これなら素直に避けた方がいいな。


 まぁ、奴の持っている持っている武器は杖だし、魔法タイプなんだろう。奴の高いレベルも併せて考えれば仕方ない。接近して斬ってみるか。


 俺は魔力を解放し空中を素早く駆ける。真正面からイグニスに向かって突進すると、奴は威力の高そうな火炎魔法を乱射するが、狙いは適当なので回避自体は簡単だ。


 距離が詰まったところで、神剣ベイルスティングを振り下ろす。


 奴の硬い障壁に弾かれるが、繰り返し剣を振るうと障壁はひび割れ砕け散った。イグニスは慌てて身体を反らし、俺の攻撃を避ける。


 こいつ、体捌きがなっていない。さては真面目に鍛錬していなかったな? 倒すだけなら簡単そうだが、レイナと息を合わせて鏡像と同時に倒さなくては。


 俺が考えを巡らせていると、レイナの声が俺の頭の中で聞こえる。


「三度ほどイグニスの鏡像の頸を刎ねましたが、こやつは私の瞬間移動からの攻撃に全く対処できません。カイト様のタイミングに、私が完璧に合わせてみせます」


「さすがだな。なら今から神剣ベイルスティングの固有技で奴を倒す。合わせてくれ!」


「はい、お任せを」


 俺は神剣ベイルスティングに魔力を思いっきり込める。 


「じゃあ行くよ。ディヴァインバースト!!」


 俺の剣から放たれた閃光が、イグニスを飲み込んで炸裂した。爆煙が収まると、奴の姿は跡形もなく消滅していた。


 復活はしてこないな。同時に倒せた……のか? そう思っていると、レイナが俺の元に転移してきた。


 同時に、神剣ベイルスティングを介して、俺の中に大きなエネルギーが流れ込んでくるのが分かる。


「イグニスの鏡像は、砕け散りました。カイト様の勝ちです」


 俺は戻ってきたレイナに「俺たちの勝ち、だろ?」と手を挙げてハイタッチの構えをすると、彼女はニッコリと笑ってハイタッチに応じてくれた。


「神域のダンジョンで、初めて双子の悪魔を倒した時のことを覚えてる? あの時はレイナに触れなかったからハイタッチもできなかった。でも今はこうしてレイナに触れるし、ハイタッチもできる。だからレイナが実体化してくれて、嬉しいなって改めて思うよ」


 レイナは目を潤ませて「私も嬉しいです!」と俺に抱きついた。そして、俺に唇を合わせると、舌先で俺の前歯をなぞる。


 俺がそれを拒否できるわけもなく顎の力を抜くと、彼女の甘い吐息と柔らかい舌が入り込んできた。


 気分が昂ってしまった俺は、レイナの名を呼びながら彼女の背に腕をまわして、もう片方の手で髪を撫でる。


「レイナ……、大好き……」


 レイナは色気全開で微笑み「はい」と一言頷く。その時、ノエルの念話が聞こえた。


「カイト、モンスターの群れは片付いたから、私たちは今からナロッパニア王国に向かうね」


「お、おう。こっちも終わったから、レイナに転移してもらうよ」


 あーびっくりした。みんなにモンスターの大群を押し付けて、俺たちだけイチャつくわけにもいかないからなぁ。俺はレイナの肩に手を置いて、おでこに軽くキスする。


「俺たちも行こうか?」


「カイト様……、ご褒美を、あと一分だけ……」


 レイナは残念そうに眉尻を下げるので、俺は「ああ」と頷いて、しばらく彼女のなすがままになっていた。


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