神剣ベイルスティング
アダマンタイトを持って帰ってから、フィリスのお兄さんが襲撃してきたり、クレアを奴隷から解放したり、マユのご機嫌を取ったりと少しばかり脱線した。
脱線と言っても、完全に無駄なことばかりじゃなくて、俺の大切な人全員と魂のハーネスで繋がることができた。
これで離れていても話ができるし、魔力のやり取りもできる。魔王と、そして女神との戦いに役に立つはずだ。
とはいえ俺も剣が折れたままだと困るので、そろそろ剣を創るのに集中したいところだ。
神が本気で創った剣を人間が創るのは、想像以上に大変なようで、ノエルの指揮のもと連日みんなで準備をしている。
そして昨日、神器を創るための魔法陣がようやく完成した。屋敷の庭の一角を整地して、みんなの魔力を注ぎながら描いた縦横10m程の大きな魔法陣だ。
今日はそれを使って、武器を試作する予定だ。
「まずは試しにレイナの鎌を創ってみましょう。まずは材料の鉱石を魔法陣の中央に置いて来て」
俺はノエルの指示通り魔法陣の中央に行って、精製したアダマンタイトと手持ちのミスリルとオリハルコンを、アイテムボックスから取り出して置いた。
俺が魔法陣から離れると、ノエルが「始めるよ」と合図し、レイナがスキルを発動させる。
みんなでレイナに魔力を送ると、魔法陣に置いた鉱石が溶けて混ざり形を変えていく。しばらく魔力を送り続けていると、緋色の大鎌が出来上がった。
ノエルは完成した鎌を手にして見つめる。
「この大鎌は『冥途鎌クリムジレット』。性能はラングザード並みだけど、ソウルイーターのスキルは付けられなかった。このデータを解析して微調整するね。また明日カイトの剣を創りましょう」
冥途鎌? 聖鎌とかじゃないんだな……。あの鎌、どう見ても聖っぽい感じがしないもんなぁ。
それにしても、かなり疲れた。みんなの顔を見ると、俺と同様に消耗しているのが見て取れる。今日はゆっくり過ごして明日に備えるか。
* * *
翌日、魔法陣の所にみんなで集まった。
昨日と同様にアダマンタイトの塊と、折れた魔剣ベイルスティングを置き、レイナがスキルを発動させて集中して魔力を操る。
ノエルは魂のハーネスを経由して、細かい指示をレイナに送っているようだ。他のみんなは、魂のハーネス経由で魔力をレイナに送りつつ見守っている。
魔法陣に俺たち全員分の魔力が満たされると、アダマンタイトの塊とベイルスティングが溶け、徐々に混ざり合っていく。混ざった物体は虹色に煌きながら球体になり、次第に剣の形に変わっていった。
出来上がったのは輝く刀身を持った美しい剣だ。刀身から放たれる青い煌きは、まるで波のように揺らいで見える。その揺らぎは剣に意志が宿って、俺に早く握れと語り掛けているような気がした。
俺は惹きつけられるようにして、出来上がった剣の柄に手を伸ばす。柄を握った瞬間、剣に内包される膨大な魔力が俺の全身を駆け巡る。
その力強い波動に、思わず俺の口から「これはすごいな」と感嘆の言葉が漏れた。
ノエルは「鑑定するね」と言って、完成した剣に両手のひらを開いて向けながら、じっと見つめる。しばらくして口を開いた。
「『神剣ベイルスティング』性能は私のラングザードよりも上ね。ソウルイーターのスキルもついている。事前にラングザードをよく調べておいたことと、昨日試作したおかげだね」
「へー、神剣かー」
俺が軽く感激していると、ノエルがガクッと崩れて膝をついた。
「さすがにちょっと疲れたわ……」
集中していて分からなかったが、三時間も経っていた。こりゃ疲れるわけだ。みんなの顔にも疲労の色が浮かんでいる。
「みんな、お疲れ様! 昼ご飯にしようか」
* * *
みんなでダイニングに移動すると、俺はアイテムボックスから料理を取り出してテーブルに並べた。レイナもスキルを全力で使ってへとへとだろうからな。
昼食を取りながらノエルの話を聞く。
ノエルによると、事前に魂のハーネスを通じて、ラプラスの記録で調べたラングザードの詳細な情報をレイナと共有して、神剣ベイルスティングを設計したらしい。
それならばラングザードよりも強力な性能になったのも頷ける……のか? 神が創った剣を超える剣を創れるなんて、ノエルとレイナって凄いなぁ。
「この剣ってノエルの剣より強いの? じゃあ、これノエルが使ってよ。俺がラングザードをもらうよ」
「それは無理だよ。この剣は他の神器を手に入った時とは違って、眠りから覚めたばかりじゃないのよ。材料にした魔剣ベイルスティングには、カイトの波動が染み込んでいたから、既にカイトを所持者として認めている。だからカイト以外には使えない」
「そうか……俺専用の剣」
俺は神剣ベイルスティングの柄を両手で持って、じっと見つめる。魔力の揺らぎが、まるでよろしくと言っているように感じた。
「必ず女神を倒すわよ」
いつになく真剣な目で俺を見つめるノエル。元よりそのつもりだ。今のモテモテハーレム生活を奪われるなんて絶対に嫌だ。
「ああ、そうだな!」
俺が力強く応えると、フィリスは不安そうな顔で口を開いた。
「しっかりレベルを上げてから戦いに行くんだよね? いつまでに魔王を倒せとかは言われてないし」
するとノエルは、首を横に振って応じる。
「レベルを上げるのは確かに必要だけど、一か月以内には女神を倒すわよ」
一同は驚きの声をあげる。もちろん俺も驚いて「え!?」と聞き返してしまった。
「今のフォルトゥナのレベルは約1000。フォルトゥナは先日直接人間界に来て、カイトに手を出したので、ペナルティでレベルが半分になっている。ペナルティの期間は60日間。フォルトゥナが私たちに会いに来てからの日数を考えると、あと一か月で元のレベルに戻ってしまう。そうなると私たちに勝ち目は無くなるわ」
ペナルティってなんだよ? 神様にもルールとかペナルティとかあるのか? まぁそれは一旦置いておくとして……。
「えーっと、1000が半分になって500になってるってこと?」
「違うよ。半分になって1000よ」
「おぉぅ……レベル上げ頑張ろうな。って言うか、そんな相手と二十年前によく戦ったよな?」
「その時はラプラスの記録を見れなかったから、女神のレベルも分からなかった。勝てると思っていたのよ」
「互角に戦っていたって……」
「きっと、私との戦いを楽しむために、手を抜いていたんでしょう」
「ノエルが体を取り戻した直後は、俺を殺してレベルを上げたら倒せるって言っていたけど?」
「それは……、ラプラスの記録の女神のレベルが隠蔽されていて見れなかったから。女神のレベルを見られるようになったのは、カイトと魂のハーネスがつながってからだよ」
あの女神に完全に遊ばれてるよな……。ノエルはそれでも全く怯んでいる様子はない。
「大丈夫! 勝機ならある。険しい道のりだけど頑張ろ」
ノエルが言うなら大丈夫だな。俺がビビっているところを見せるわけにもいかないので、胸を張って「任せろ!」と応えておいた。
俺Tueee&ハーレムをこの先ずっと楽しむためにも、できることを最大限頑張ろうと誓うのだった。




