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本城家へ

本城蓮 十四歳 二○○X年 四月五日 午前零時


背中からでも感じられる程に、お嬢の体温がどんどん下がっていっているのが分かる。


ボタボタボタッ…。

 

血が漏れないように布をキツく巻いたが、足を切断された傷口から血が溢れ出ていており、お嬢の小さな体では血を流し過ぎるのは危険だ。 

 

出血多量で死亡してしまう可能性が高くなって来てしまう。


お嬢が死んでしまったらと、嫌な考えが僕の頭の中を支配して行き、足が鉛のように重くなる。


僕が足を止めえてしまえば、お嬢の命がどんどん危なくなる。


自分の奮い立たせ、何度も力が抜けそうな足に力を入れて走る続けていた時だった。   


タタタタタタタタタッ!!! 

  

「ヒヒィィィン!!」


馬の大きな鳴き声と足音が聞こえ、顔を上げると目の前に式神の馬に跨った親父の姿があった。


慌てて来たのが額の汗の量から見て、すぐに分かった。 

 

「蓮!!聖様は?」


「足が切断せれて、それにかなり血を流し過ぎている。お嬢と同じ血液型の輸血パックの準備をしてほしい!!!」


僕の説明を聞きながら親父は、お嬢の様子を見て驚いた。


お嬢の顔は青白く、切断された部分からは血が流れており、ギュッと強く結んだ布は真っ赤に染まり、意味のない状態だった。


僕の足元を見ても、お嬢の体から血が血が大量に流れ出しているのが見て分かる。

 

「呼吸も小さくなって来ている、急いで治療をしないと…」


自分でも話しながら声が震えているのが分かるし、目頭がどんどん熱くなってきていた。  


親父は僕の表情を見ながら、瞬時に冷静な判断を下す。


「息はしてるのか?」


「してる…。だけど、段々弱くなって来てる…」


「分かった、医療班は用意してある。すぐに聖様と同じ血液の輸血パックを用意させよう」


医療班とは本城家専用の医療班の事で、ちゃんと医療資格を持っているプロの医療関係者だ。


明治時代から本城家に支えてくれている医療家系の人間が今も尚、本城家の人間が怪我をしてもすぐに治療が出来るように、待機してくれている。


ただ妖怪から受けた傷は普通の治療では傷が癒せない。


その為、陰陽師術の中にある医療術を使用しながらの治療を施す必要があり、かなりの高技術を要する。 


今回は異常事態の為、親父が医療班の人間を多めに派遣してくれたのだろう。  


「聖様をこちらに、お前も馬に乗りなさい」


「分かった」 

 

親父にお嬢を預け僕も馬に跨り、「行くぞ!!」と親父の掛け声と共に馬を走らせた。


ドドドドドドドッ!!!


ものの数分で本城家に着くと、やはり親父が手配していた大人数の医療班の人間が門の前に担架を持って立っていた。


「親方様!!!御子柴家のお嬢様をこちらへ!!!」


「大至急、聖様と同じA型の輸血パックをあるだけ持って来てくれ!!!出血の量がかなり多い、急げ!!!」


「「かしこまりました!!!」」


お嬢を担架に乗せながら、大声で医療班の人間に指示をし、慌ただしく医療班の人間達は動き出す。


タタタタタタタタタッ!!! 

 

担架に乗せられたお嬢は、本城家にある医療室に急いで担ぎ込まれて行く。


担ぎ込まれたとはいえ、お嬢hが危険な状態なのは変わりない。


僕も、僕も付いて行かないとっ…、お嬢が…。  


「僕も、お嬢の所に行かないと…っ」


歩き出そうとした時、ガクッと膝が崩れ落ち倒れそうになった所を親父に支えられる。


ガシッ!!!


僕の右腕をちから強く掴み、ゆっくり立ち上がらせてくれた。 


「聖様の所に行く前に、お前も手当てしてもらいなさい」

 

「僕はっ、大丈夫だ。お嬢の所に行く」


「ボロボロで顔色が悪い癖に、強がるのはやめなさい。今お前が行っても、何も出来ないだろ」


「そんな事、親父に言われなくても分かってる!!!」


パシッ!!!

  

つい、カッとなってしまった僕は親父の手を払い除けた。 


自分の不甲斐なさと不安、怒りが込み上げて来て泣きそうになる。


「僕が側にいながら、お嬢に大怪我を負わせてしまった…。お嬢専用の護衛係なのに、何も出来なかった…」 


「聖様が目を覚ました時、ボロボロのお前を見たら悲しむだろ。御子柴家で起きた事の報告をして貰わないといけない。良いか蓮、後悔して落ち込む暇があったら、二度と後悔が無いように行動しろ。今は治療だ」 


僕の言葉を静止させ、父は近くに居た医療班の人に声を掛けた。


医療班の数人が僕の体の状態を触るながら確認し、驚きながら言葉を発する。


「蓮様っ、肋が何本か折れています。左肩にはもヒビが入っております。出血もかなり多いですし、絶対安静にして貰わないと…。今、動けているのが奇跡の状態ですよ!!?」


「僕の事は、どうで…っ、ゔ!?」


ドスッ!!! 

 

親父に強く首を叩かれ、手刀を喰らった僕の意識は遠退いて行った。


*** 


ドサッ!!!


意識を失った本城蓮を抱え、本城克也に医療班の人間の一人が慌てて声を掛けた。


「お、親方様っ!?蓮様の体の傷が開いてしまいますのでっ。何とぞ、優しく…」


「こうでもしないと、この馬鹿息子は素直に治療を受けないだろう。もう一つ治療室が空いているだろ。そこに蓮を連れて行く。手の空いている奴は、蓮の治療を頼む」  


「か、かしこまりました」 

 

本城克也が本城蓮を抱き上げ、歩き出すと数人医療班の人間達も同時に歩き出す。


ガラガラッ!!!


「急いで、A型の輸血パックを持ってきて!!!急いで!!!」


「「かしこまりました!!!」」

    

第一医療室から出て来た白衣を真っ赤に染めた年配の女性医師の指示に従い、看護師達は長い廊下を全速力で走り出した。

  

「聖様の容態はどうだ、トメさん」


「あ、親方様…。御子柴家のお嬢様の意識が戻りません、致死量近くの血液が流れ出てしまっていますから。それと右脚が切断されている所為で、輸血しても血液が流れ出てしまう状態です。大妖怪の攻撃を多く受けていらっしゃいますから…」


トメと呼んだ年配の白髪頭の女性の報告を聞きながら、本城克也は自分の側近達を呼び付けた。


トメは本城克也の祖父の代から、長く本城家の医療班の班長を務めているベテランの医者であり、医療術の使い手である。

  

「お前達は引き続き、八岐大蛇の動向を探れ。まだ京都市内に潜伏しいている可能性がある」


「「承知致しました、親方様」」


本城克也の指示を聞いた数人の男達は、すぐに気配を消して八岐大蛇の捜索に向かった。


「トメさん、聖様の事を宜しく頼む。うちの馬鹿息子の大事なお姫様だからな」


「最善を尽くします、親方様。そうですか…、あのお嬢様が蓮様の…」


「「先生!!!追加の輸血パックお持ちしました!!!」」   


タタタタタタタタタッ!!!


本城克也とトメが話していると、輸血パックを取りに行った看護師達が戻ってくるのが見える。


「私めは治療に戻らせていただきますね、親方様」 

 

トメは本城克也に頭を下げてから、そそくさに治療室の中に看護師達と戻って行った。 


「動き出しやがったな、八岐大蛇…」


八岐大蛇の封印が解かれた事、御子柴家の殆どが死んだ事が本城克也の耳にすぐに入り、同時に次々に大妖怪達の封印が解かれと言う異例自体が発生していた。


誰が封印を解いたかは不明で、各地の御子柴家の傘下に入っている陰陽師の末裔の家の当主達を含め、本城克也も本城家総出で捜査を行なっていたのだった。


数百年、大妖怪達の封じ込めていたのに八岐大蛇の封印が何者かの手によって解かれ、堰を切ったように次々と人の手で解かれて行った。


本城克也は、この大妖怪達の封印を解いているのは、同一人物の仕業だと予想している。 


ガラガラッ!!!

 

タタタタタタタタタタッ!!!

 

「親方様!!!坊ちゃんを止めて下さい!!!」


第二医療室から出て来た看護師が額に大粒の汗を流しながら、本城克也に駆け寄る。


ガシャーンッ!!!


「れ、蓮様っ、おやめくださいっ!!!安静していないと!!!」


「離せっ!!!お嬢の意識がまだ戻ってないんだろ?そんな時に寝ている場合じゃないだろ!!!」


「で、ですがっ!!!」


第ニ治療室から騒音と本城蓮の叫び声を聞き、本城克也は溜め息を吐きながら頭を軽く痒いた。  

 

「はぁ…、馬鹿息子はもう目を覚ましたのか」


「我々だけでは蓮様を止める事は出来ませんっ。まだ、動ける状態ではないのに…」


「分かった、俺が行こう」


「ありがとうございます、親方様」   


看護師と共に第二治療室に向かい扉を開けると、治療途中の本城蓮が部屋を出て行こうとしてる所に遭遇する。


本城克也と目が合った本城蓮は、キッと父親を睨み付けながら言葉を吐く。  


「わざと気絶させただろ、僕の事。お嬢の側に居ないといけないんだ。寝てられるかよ、お嬢がまだ意識を取り戻してないのに」


「今のお前が行っても、何にもならん。大人しく、治療を受けろと言った筈だが?」


ドンッ!!! 


「坊ちゃん!!?傷口が開きます!!おやめ下さい!!」


本城蓮は壁を叩くのを見た看護師は驚きながら声を上げ、本城蓮は再び本城克也を睨み付ける。


「聖様が危険な状態が続いているのは変わりない。ただトメさん達が手を施してくれている中で、お前が居ても治療の邪魔だろうが。御子柴家での出来事の詳細を、お前から聞かなければならない」


「…」 

 

「分かってるなら、大人しく治療を受けろ。そして御子柴家で起きた事を説明しろ、良いな」


「…、分かった」


「失礼します」


本城克也との会話が終わった事を見計らい医療班は手早く、本城蓮の体傷のの治療を始めた。


普通の医学ではなく陰陽術にある医療班を使い、傷の治りを早める効果を持たせ、妖怪からの攻撃を受けたダメージも軽減させてくれるのだ。


本城蓮の体には医療術の札があちこちに貼られている状態で、札からは小さな光が漏れ出ている。


「八岐大蛇の封印を解いた人物は見たか」


「いや、見回りをしていた時には怪しい人物はいなかった。八岐大蛇の封印が解かれてから数十分の間で、御子柴家の使用人達や人間達が殺された。一瞬の出来事の中に酒呑童子が御子柴家に現れ、陽毬様と大西様を殺されて…。その後の事は…、分からない」


「成る程、陽毬様や大西殿も…。実はさっき、大阪の鬼頭(きとう)家から連絡があったんだ。酒呑童子の封印も解かれたって聞いてな?」


鬼頭家は大坂で最も大きい陰陽師家であり、御子柴家の傘下に入っている家系の一つで、他にも二つの家系がある。


酒呑童子の封印を鬼頭家が行っていたが、八岐大蛇の復活と同時に封印が解かれてしまっている状態。


「東京で眠る玉藻前(たまものまえ)や、京都の大嶽丸(おおたけまる)、名古屋のだいだらぼっちの封印が解かれている」


「大妖怪の殆どの封印が解かれたって事?八岐大蛇の封印が解かれてから、そんなに時間は経っていない筈…」


「再び、百年前の悲劇がまた起ころうとしている。」


「百年前?」


本城克也の神妙な面持ちを見た本城蓮はあ、事態が大きくヤバイ方向に傾いている事を察する。


いや、察するしかなかった。 

 

「この話は、聖様が目を覚ましてからにしよう。もしかしたら…、聖様は選ばれてしまったかもしれない」


「選ばれたって…?」


「月下美人の器に」


「月下美人の器って、何だよ。八岐大蛇と関係があるのか?百年前の悲劇って…、どう言う事だよ」


本城蓮は本城克也に尋ねたが、本城克也は何も答えてくれなかった。


「お嬢が危険な目に遭う…、そう言う事なのか?」


「分からない、まだ確証がないからな。ただ、可能性があると言う話だ」 


「何だよそれ、親父の顔を見たら分かる。お嬢が今、別の意味でも危険な状況に居るって事だろ」

 

「今は…。聖様が無事に目覚める事を祈ろう。」


本城克也の曖昧な返答を聞いた本城蓮は、治療が終わった事を確認してから椅子から腰を上げる。


「おい、蓮。どこに行くつもりだ」


「お嬢は第一治療室で治療を受けてるんだろ。廊下で、トメさん達が出てくるのを待ってる。もう、あんな思いはごめんだ」


「蓮?」


本城克也の問い掛けには答えずに、本城蓮は静かに部屋を出て行った。


ガラガラッ。


「八岐大蛇と聖様…、二人には共通点があるのか?調べてみる必要があるな…。アイツに連絡しておくか」


そう言って本城克也はスマホを取り出し、とある人物に電話を掛けた。


*** 


本城蓮 十四歳


重い体を引き摺りながら、お嬢が治療を受けている第一治療室に向かった。


ガラガラッ。


第一治療室の前に着くと、治療を終えた疲れた顔をしたトメさんと看護師達が治療道具を持って出て来たのだ。


「トメさん!!!」


「あ、蓮様っ」


「お嬢の容体は!!?どうなったの?大丈夫なの!?」


「蓮様の大事なお嬢様の治療は無事に終わりましたよ、今は麻酔が効いておりますから寝ていますが」


トメさんの言葉を聞き、安堵した僕はその場で体の力が抜け座り込んでしまう。      


「蓮様!?大丈夫ですか!?」


「良かった…、本当に良かった…っ。ありがとうトメさんっ、本当にありがとうっ」


「とんでもございませんよ、蓮様…。私めはただ役目を果たしたまでです。中に入られますか?蓮様」


立ち上がりながら黙って頷くと、トメさんは静かに第一治療室の扉を開けて中に入れさせてくれた。   

  

部屋を訪れると沢山の器具に繋がれた痛々しいお嬢が、静かな寝息を立てて眠っている姿が見え、泣きそうになる。


ツー、ツー、ツー。


呼吸器の音が部屋に響き、ベットの横にあったパイプ椅子に深く腰を下ろす。


ギシッ…。


「呼吸も落ち着いていますので、今は体を休ませてあげて下さい。お嬢様の体はまだ小さいので、治療の時にもかなり体に負担があった筈ですので…」


「分かった、ありがとうトメさん」


「何かありましたら、すぐにお呼び下さい」 


そう言って、トメさんは第一治療室を出て行き、僕とお嬢の二人きりの状態になった。


静かな空間の中で、僕の心情は後悔ばかりが募って行く。 

 

「僕がもっと、強かったら…。お嬢が、右脚を失う事が無かったのに…。あの時、僕が代わりに斬られていれば…」


御子柴家で起こった悲惨な出来事は、誰かが意図的に仕組んだ事の可能性が高いって親父は言ってた。


それに各地で封印されていた大妖怪達が、同じタイミングで封印が解かれてしまった。   


誰が何の為に、脅威な存在となる八岐大蛇達の封印を解いているのか…。

 

月下美人の器、百年前の出来事…、お嬢が選ばれたってどう言う意味なんだ。 


ギュッと、お嬢の小さな手を握りの手の甲に額を付ける。


小さい手なのに、古い切り傷や手当てされても癒えていない傷の痕がある。

 

こんなに苦しい想いをするのも、胸が締め付けらる思いも、懲り懲りだ。


「ごめん、守るって約束したのに…。守れなかった、本当に….、ごめんっ」


お嬢は眠ったままになったら、どうしよう…。


二度と目覚めなくて、死んでしまったら…。


お嬢が死んだら、僕は生きていけない。


嫌だ、それだけは嫌だ。


「お嬢…、早く目を覚ましてください。お願いですから、僕を置いて行かないで下さいっ…」


「お前、力が欲しいか?」


「っ!?」


僕は勢いよく、声のした方に顔を向けるが部屋の中には誰も居なく、不気味な空気が流れた。


人の居る気配がしていない、していたらすぐに気付くのに。


ただ、何か人ではない何かが部屋の中に居る感覚がし、誰もいない所に声を掛けてみた。 

 

「誰か…、居るのか?」


「よう、坊主」


「は…?」


僕の目の前に現れたのは、伝承で見た毘沙門天そのもの姿だった。


いきなりどうやって現れた?


体が少し透けて見えているのは、僕が幻覚を見せられている所為なのだろうか。


どうなっているんだ、この状況は…。  

 

「毘沙門天…、なのか?」


恐る恐る毘沙門天に声を掛けてみると、毘沙門天は満足げな表情を浮かべて、僕が座っていたパイプ椅子に腰を下ろした。


ギシッ…。

 

「俺の姿が見えるって事はぁ、合格だな。わざわざ、降りて来た甲斐があったと言うものだ」


「一体、何の話をして…」


どう言う事だ?


*毘沙門天、仏教の守護神で北の方角を守護し、四天王の一尊、七福神の一柱としても知られ、武勇や財福、福徳、勝負運、商売繁盛などのご利益をもたらす神。

甲冑を身に付け、高塔や宝棒(げき)を持ち、足元に邪鬼を踏み付ける姿で表され、悪を払う武神として、特に武将からの信仰を集めていた*  


何で、僕は毘沙門天と普通に会話してるんだ…?


頭が追い付かない。


「その子もまた、選べるぞ」


毘沙門天の言葉を聞き、僕は瞬時にお嬢の前に立ちながら毘沙門天を睨み付けた。


「お嬢に何する気だ。神だからと言って、お嬢に手を出すのは許さない」


「威勢の良いガキだ、嫌いじゃない。ただ、そんなに睨むな、阿修羅だよ、阿修羅。阿修羅の野郎、その子を選んだんだぜ?」


「だから、選んだって…、何だよ」


「守護する人間をさ。そして、俺はお前を選んだ。」


「え?」


守護する人間だ?どう言う事だ…? 


「なぁ、その子を守るには俺の力が必要になる。どうだ?」


僕を選んだ?


毘沙門天が何で…。


「もし…、アンタが言っている事が本当なら、僕を選んだ理由が分からない」


「理由?そんなものがいるのか?」


「はい?」


「強いて言えば…、そうだなぁ。お前への恋の行く末を見たくなった」


毘沙門天の言葉を聞いて、思わず顔が赤くなる。


な、何で毘沙門天がその事を知ってるんだよ!!?


誰にも言った覚えがないし、バレないように必死に隠し通して来たんだ。


それなのに、何で毘沙門天が知ってるんだよ…。  


「なっ!?な、な、な、な、な!?」


「あははは!!!良いではないか、若い証だ。さてと、そろそろ札に戻るとしよう」


「札?」


「案ずるな、お前が必要な時に出て来る」


ボンッ!!!


「ゴホッ、ゴホッ!!何だ…、これ?赤札?」


目の前に白い煙が立ち込み、僕の手のひらに真っ赤な赤札が舞い落ちて来た。


***


御子柴聖 二○○X年 四月五日 午後一時。


「はぁ、はぁ、はぁ…」

 

体が熱い、痛くて、重くて、辛い。


目の前が真っ暗で、何も見えなくて、怖い。


浅い呼吸を繰り返しすが肺や身体中に激痛が走り、痛過ぎて涙が出そうになる。  


蓮…、蓮…。


どこ?


どこにいるの?


暗闇の中、蓮の名前を呼びながら何度も何度も手を伸ばした。 


蓮は無事なの?


蓮は生きているの? 


蓮に会いたい、会いたいよ…。

 

(なんじ)よ」


誰…?


男の人の低くて冷たい声が聞こえるが、人の姿なんて見えない。


こんな暗闇の中に誰か居るのだろうか。 

 

ガシッ!!!

 

誰かに強く腕を掴まれ目を開けて見ると、開かれた視界の中に映ったのは神々しい輝きを放ってる阿修羅だった。

  

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