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初恋奇譚

野々山雛 七歳


本城蓮さんが来てから一週間経っても、あたしと美月は一本も取れなかった。


初めて実力差を見せつけられ、自分達よりも強い相手と出会った事がなかったし、出会えるとも考えてなくて。


「この人に勝ちたい」と言う純粋な気持ちで稽古に望めたのも初めてだった。


「やあっ!!!」


ドカッ!!! 


美月が木刀の先を本城蓮さんの瞳を築こうとしたが、本城蓮は一歩後ろに下がり美月の手に回し蹴りをし木刀を落とされる。


本城蓮さんは美月が木刀を拾おうとした時、本城蓮さんが持っていた木刀の先端が美月の喉に向けられた。


審判役が本城蓮の方に手を上げ「勝者本城蓮!」と叫び、ものの数分で美月は本城蓮さんに負かされてしまったのだ。


「クッソー!!またかよ!!」


「だけど、大分良くなったよ。悔しがる所は何もない」


そう言って、本城蓮さんは美月の頭を撫でると、美月は嬉しそうな顔をしながら口を開く。


彼が来てから美月は明るくなり、本当の兄のように本城蓮さんの事を慕い側を離れようとしない。


「本当!?じゃあさ、こう言う時は、どうしたら良い?」


「ん?あー、この時はな…」


本城蓮さんと美月は仲良さそうに、さっきの戦いの反省をしながら木刀を一緒に振っていた。


私の中に募った恋心は日に日に増し、私は本城蓮から目を離す事が出来ないまま日々を過ごすばかりで、私の気持なんか本城蓮さんは知らないだろう。


そんな事を思いながらも見つめていると、ふいに本城蓮と目が合った。


「雛も来いよ、こっちに来て一緒にやらないか?」


「え、い、いいの?」


「良いよ、早くおいで」


本城蓮さんは優しい声色で私の事を呼び、側に来いと手招きしてくれる。


私にだけ向けられた視線と言葉、きっとこの世界で私だけに向けられたものなんだって思いたい。


「早く雛も来いよ!」


「うん!」


美月に呼ばれて、あたしは二人の元に向かい一緒になって木刀を振るった。


こうやって、三人で稽古に明け暮れる日々が好きだったし、本城蓮さんの近くに入れる大切な居場所になって行った。


何回やっても本城蓮さんには勝てなくて、何度も何度もあたしと美月が挑んでも嫌な顔一つ見せなかった。


そんな些細な事が嬉しかくて、私達の事を子供扱いしてくれる事が嬉しかったのだ。


父や母、野々山家の人間には年相応の扱いはされてずに、大人の一員として扱われて来た事が心のどこかで嫌だったのだろう。


野々山家の人のじゃなく、本城蓮さんに扱われた事が嬉しかったのかもしれない。

 

それから、私と美月は本城蓮さんの事を蓮兄様と呼ぶようになり、私達三人の中が深まって行った中で、山菜取りの帰り道に美月があたしに聞いてきた。


「雛さー、蓮兄様の事好きだろ?」


「え!?な、何でそう思うの?」


美月に不意に尋ねられ、私は思わず歩いていた足を止めてしまう。


どう答えて良いのか分からなかったから、どう答えるのは正解?


正直に蓮兄様の事が好きだって、美月に言った方が良いね?


「いや、見てれば分かるし…?」


やっぱり双子だから分かるのかな、私の口に出していなかった思い。


それは恋心だと言う事を、私は気付いてないフリをしてきたのに気付かされてしまった。


「好き…なのかもしれない…、蓮兄様の事」


美月に蓮兄様への恋心を告げた瞬間、自分の顔が赤くなるのが分かる。


「俺、蓮兄なら喜んで応援するよ。他の奴だったら応援しないけど」


「何で、美月が偉そうに言うの?」


「あ、笑うなよ!!大事な家族を渡すんだぞ?それ相当の男じゃないと俺は認めない!」


「ありがとね、美月。あたしの理解者は美月だけだよ」


「当たり前だろ?」


「それと、花との事もちゃんと教えなさいよね!」


私はそう言って美月の背中を叩いた。


美月は近所に住む幼馴染の花の事が好きで、花もまた美月に恋心を抱いている両想い同士だ。


「は!?は、花!?わ、分かったよ…」


付き合うのはそう遠くはないだろう、私も花が相手なら美月の事を安心して任せられる。

 

美月の言う通り、大事な家族を渡す訳なんだから信頼がおける相手ではないと駄目だ。


二人が早く互いの思いを分かり合えたら良いと、私は心の中で強く願った。


***


ある日の夜、お風呂を澄まして廊下を歩いてた時、蓮兄様が縁側に座り涼んでいる姿があった。


「あ…。」


さり気なく手櫛で長い髪を整え、早まる鼓動を抑えながら蓮兄様の元に向かうと、蓮兄様は愛おしそうに一枚の写真を見ている。


う、美月とあんな話をしたからドキドキして、妙に意識してしまう。


「れ、蓮兄様、何してるの?」


私は平然を装って、自然な仕草を繕って蓮兄様の隣に座った。


「あ、雛か。写真を見てたんだ」


「写真?」


「そうだよ」


「どんな写真なの?」


私がそう言うと、蓮兄様は私に写真を見せてくれる。


写真に写っていたいたのは、私と同じ歳くらいの女の子で、桜の花のように可憐で尊く、雪のように白い肌をした人形みたいな見た目をしていた。


蓮兄はその子を愛おしそうに見つめていて、私には向けられた事がない視線を写真の女の子に注がれている。


あ…、この視線を私は見た事がなかった。


誰が見ても大切なモノを見つめる視線だと言う事は、誰が見ても分かるモノ。


「か、可愛い子だね?そ、その子、蓮兄様の知り合い?」


「本当に可愛いんだ、お姫様見たいでしょ?この子は僕が支えてる主人なんだ。ここに来たのはね?この子の為に強くなるって決めたんだ」


ズキンッと、針が刺された様な痛みが心臓に響いた。


蓮兄様がここに聞いた理由が、この子の為だったって聞きたくなかった。


「蓮兄様はそ、その子の事…を好き…なの?」


かすかの希望を信じて言葉を放ったのだが、返って来た言葉は私の心を打ち砕く。


「僕は、この子に初めて会ったあの瞬間から恋に落ちた。誰にも言った事がなかったんだけど、この子事を愛してるんだ」


そう言って愛おしそうに写真を撫でた。


最初から私が入る隙間なんてなくて、蓮兄様の心はとっくにこの子のモノだったんだ。


恋心が宿った視線を私にも向けてほしい、羨ましいなんて思う方が烏滸(おこ)がましい。


だけど…、この気持ちをどうしたら良いの?


このモヤモヤした気持ちのやり場が分からない、恋心の捨て方なんて誰にも教わって来なかったから。


「ん?どうした?」


蓮兄様が心配そうな顔をして、私の顔を覗き込んでくる。


その視線は妹を心配するような眼差しで、あの子が向けられている視線は私に向けられる事はない。


きっとこの先一生、私の思いは叶わないだろう。


「れ、蓮兄様…。私と今から手合わせしてほしい」


「今から?」


「お願い、蓮兄様」


私はそう言って、ジッと蓮兄を見つめた。


蓮兄様は何かを察知したらしく「分かった」と一つ返事で了承してくれ、私達は誰もいない道場に向かう。


カァァァンッ!!


誰もいない道場で私と蓮兄様の木刀が混じれ合う、私は蓮兄様の攻撃を避けつつ少しの隙に突きに踏み込む。


空いている脇腹に斬り込みを入れたのだが、蓮兄様は木刀を持ち替え攻撃を防いだ。


カンッ!!


私の恋心を消すにはこうするしかなかった、他でもない貴方が私の恋心を殺してほしい。


好き、好きだよ蓮兄様、初めて出会った日から貴方の事が好きだった。


私の思が叶わないものだと知った時、本当に悲しかったの、蓮兄様の心を奪った女の子が羨ましくて仕方なかったの。


「雛、良い動きをする様になったね。見違える程に成長している」


フッと、優しい微笑みを私に向け、あまり笑わなかった蓮兄様が私に笑ってくれた。


笑ってくれただけでも私は嬉しいんだよ、貴方の妹ぬいなれているだけでも幸せな事じゃないか。


「まだまだだよ!!」


私は体勢を整えて、再び木刀を振り翳したのだが、蓮兄様は私の攻撃を軽々と止める。


この思いが届く事はきっとない、この気持ちは胸奥に仕舞おう。


叶わないとしても側にいたい、蓮兄様の力になって役に立ちたい。


そんな事を思い出した時、蓮兄様に木刀を私が持っていた木刀が振り払われてしまう。


カァァァンッ!!


激しい音を立てながら木刀が床に転がり落ち、蓮兄様が持っていた木刀の先が私の喉元に突き立てられ、敗北を知らされる。


本当に蓮兄様は強いなぁ…、私なんか一生叶わないんじゃないかな。


「蓮兄様、大好きでした」と心の中で呟きながら、口では本音じゃない「参りました」と言葉を吐いた。


そう言いながら床に落とされた木刀を拾い上げていると、背後から拍手が聞こえてくる。


振り返ると美月がこっちに向かって歩いて来るのが見えた。


「良い勝負だったよ、二人共。しっかし、蓮兄様は本当に強いなぁ、雛も良い所まで追い詰められたのにさ」


「美月!?いつの間に来てたの…!?」


「途中からね。道場の方から音がするなーって思って見に来たら、蓮兄様と手合わせしてるんだもん。俺も入れてよね」


美月の気配に気が付かなかった、蓮兄様だけに集中していた所為もあるか。


「それから、あのー、蓮兄様の好きな子の話も聞いちゃいました」


蓮兄様に向かってペコッと軽く頭を下げた。


まさか、縁側に居た時から美月が側に居たとは思わなかった。


「だろうとは思ったけど、堂々と来いよ。隠れてたから言わなかったけど」


「!?」


美月の存在に気付いていたのに、蓮兄様は私に好きな子の話をしたのは私の気持ちに気付いていたから?


私に諦めさせる為に、お願いを聞いてくれた…?


「詳しく聞かせてよ、その子の話!てか、俺にも写真を見せてよ」


「え?い、良いけど」


「めっちゃ可愛いじゃん!蓮兄様、結構な面食い?」


「失礼な、お嬢の顔だけを好きになった訳じゃないから」


「この写真を見たら、誰だってそう思うって。それで?この子はどんな子なの?」

 

美月の問いに少し戸惑っていたけど、蓮兄様が写真の子の話をしてくれた。


彼女は私達と同じように厳しい環境の中で育ち、一人で妖怪退治に行かされている事、逃げられない檻の中で彼女は蓮兄様だけに心を許し、弱音を吐かずに一人で戦ってる事。 

 

そんな男前の子なら蓮兄が夢中になるのが分かる、私が同じ立場だったら耐えられる自信がない。


「私、蓮兄様の役に立ちたい!」


私は床をドンッと強く叩いきながら立ち上がり、まっすぐ蓮兄様の事を見据える。


「ひ、雛?」


「私達は蓮兄様に鍛えて貰って、少しは強くなれたの。私はは蓮兄様の力になって、蓮兄様の役に立ちたいの」


私がそう言うと、隣にいた美月が手を握ってきた。


「俺も雛の言う通りだよ。俺達はさ、二人の空間で生きて来たんだ。それは…、誰も俺達と関わろうとしなかったから。だけど蓮兄様が来て、俺達に稽古とか話し相手になってくれて嬉しかった。凄く嬉しかったんだ、俺達に兄ちゃんが出来たみたいでさ」


「美月…」


「俺達は、誰からの命令も下に付く気はなかったんだ。だけど、蓮兄様の下なら付きたいと思った」


「だから、私達を蓮兄様の影武者にして」


「二人共、意味を分かって言ってるんだよな?」


蓮兄様は得私と美月の話を聞いた上で、私達に尋ねる。

 

影武者とは主人の剣となりけして、表舞台では動きを見せずに影で主人の為に働く事でいわば主人の影、命に代えても主人を守る事が影分者にとっての最大の仕事であり誉なのだ。


一度契りを交わしたら、命尽きるまで契りは解けない。


「分かってて言ったんだよ、私達の命を蓮兄の為に使う。美月もその事は理解してるよ」


「蓮兄様の大切な人なら、俺達姉弟にとっても大事な人だ。戦力は幾つ有ったって良いだろ?」


「分かった。雛達の気持ちは伝わったよ」


蓮兄様は私達の意志が固いと分かり、渋々了承してくれた。


私と美月は。道場に飾られている桃華月旦の刀を持ち、蓮兄様の前に膝を付いた。


「「我、本城蓮の影となり、御身に振り返る火の粉を討ち払わんとし、生涯尽きるまで御身に支えると誓う」」


私と美月はそう言って、刀を両手で持ち前に翳し、蓮兄様の顔を見上げる。


「お前達の命は無駄にさせない、簡単に死なせてやらない。良いな、自分の命を常に天秤に掛けろ。生きる選択肢を捨てないでくれ、僕の為と思うなら忘れないでくれ」


貴方はどこまで優しいのだろう、私達の命の事まで考えてくれるなんて、影武者にとってこんなに喜ばしい言葉はないだろう。


私と美月は言葉の代わりに深く環球を下げ、蓮兄様の言葉を胸に刻んだ。


***


それから蓮兄は京都に戻ると、陰陽師協会会長を務める御子柴家が八岐大蛇に斬殺され、生き残りはいなかったと野々山家にも連絡が行く程、京都で大きな事件が起きていた。 


八岐大蛇を始めとした壱級の妖怪達の封印が解かれ、陰陽師達が次々と殺され、妖怪達の行方が不明となり、協会は血眼になって行方を追っている。


私達は蓮兄様の生死を確認する為に本城家に連絡を入れた所、重傷だが命の心配はない事だった。


それ以来、本城家に連絡を入れても蓮兄様に繋げてもらえなくなり、私達は強制的に蓮兄様との縁を切られてしまったのだ。


「蓮兄様、どうしちゃったんだろ。俺達と連絡を取りたくないだけなのかな、それとも何か別の理由があるとか?」


「私は蓮兄様を信じてる。八岐大蛇の件もあったし、蓮兄様も忙しいのよ。本城家が仕えていた御子柴家が、全員殺されたんだから」


「なぁ、雛。蓮兄様が好きな女の子って、御子柴家の人間じゃないの?」


美月の言葉を聞いた瞬間、体から嫌な汗が流れ、喉に何かが引っかかる感触がした。


本城家の次男である蓮兄様が御子柴家の人間に仕えていてもおかしくない、あの女の子は御子柴家の人間で間違いない。


生き残りがいないって事は、蓮兄様の好きな女の子も殺された事になる。


そんな…、じゃあ今、蓮兄様のはどんな気持ちで日々を過ごしているの?後を追て死んだり…、していないよね?


「雛、蓮兄様は死んでないよ。もし、蓮兄様が死んでいたら連絡が来るだろ」


「そ、そうだよね、蓮兄様は死んでないよね…。ごめん、変な事考えてた」


「俺達は蓮兄様の為に強くなるべきだ、今やるべき事は。蓮兄様の影武者になったじゃん、絶対にまた会えるよ雛」


「うん、ありがとう美月」


美月に繋がれた手に視線を落とし、心の中を埋め尽くしているざわつきを押し殺した。

 

あれから月日が流れ、九年の時が立ち、私達姉弟は東京の陰陽学院にスカウトされ入学するべく、地元の京都を離れて東京に出て来ていた。


幼馴染の花も東京陰陽学院に受験をして無事に合格、桜が舞う四月に東京で再会し、地元に居た頃よりも妖怪退治の依頼をこなす日を送る中。


暫くして蓮兄様に似ている先生が赴任し来たが、私達は確信持てなかったから接触はしなかった。


こんな所に蓮兄様が居る筈がない、彼は京都にいるのだから。


九年経った今でも、蓮兄様との連絡は取れないままで、本当に蓮兄様と会う事が出来るのかと不安になってきていた。


蓮兄様、生きてはいるんだよね?生きているなら、連絡をしてきてほしいよ。


私と美月が最終学年に上がって一ヶ月後、鬼頭楓の姉と言う女の子が転校してきたらしく、早乙女隼人が早々に喧嘩を売ったと言う噂が学院中に広まる。


「鬼頭楓の姉ちゃんが早乙女隼人と決闘を恥じめるみたいだぞ!!」 

 

「マジかよ!どこでやんの?体育館?」


「そうそう、昼休みの間にやるみたいだぜ」


美月と花と昼食を購買に買いに来ると、二年生の男子が転校性の話をして言うるのが聞こえ、美月がニヤニヤしながら口を開く。


「なぁ、俺達も身にいかね?例の決闘をさ」


「えー、ご飯食べる時間が無くなるじゃん。私はやめとく、美月と雛は見てきたら良いよ」


「分かった。雛は?当然、行くだろ?」


私は美月の問い掛けに黙って頷いて返答し、花と別れて体育館に向かうと、想像以上に早乙女隼人と転校生の決闘は盛り上がっていた。


カァァァンッ!!


二人の木刀が激しくぶつかり合い、汗を流しながら息が荒い早乙女隼人を転校生は涼しい顔をして、早乙女隼人を追い詰めて行く。


動きに無駄がなく、フェイントを混ぜながら攻撃をし、早乙女隼人は転校生の動きについていけていない。


この子、どこかで見た事がある。


どこで見たかと記憶を巡らせ、九年前に蓮兄様が見せてくれた写真の女の子と容姿がソックリだった。


そんなまさか、あの子がこんな所に居る筈がない。


だって、御子柴家は全員殺されたって…、本当に全員殺されたのだろうか。


「雛、あの子、蓮兄様が持ってた写真に写ってた女の子だよな?」


「美月、御子柴家って全員殺されたのよね」


「え、そうだって聞いたけど」


「蓮兄様の好きな女の子は生き残っていたんじゃない?本当は」


私の言葉を聞いた美月は一瞬だけ驚いた顔をしていたが、すぐに納得したような表情を浮かべる。


転校生の戦い慣れした立ち振る舞い、動き方、転校生を見つめる蓮兄様に似た先生の二人を交互に見つめると、私の憶測が核心に変わった。

 

何故、転校生の事を殺された事になってるのかは分からない、分からないけど蓮兄様と再会出来た事が嬉しい。


「やっぱり、あの先生は蓮兄様だよ。だって、あの子が学院に居るんだから、間違いないよ」


「良かったな、雛。蓮兄様に会えて、俺も嬉しいし。決闘が終わったら、蓮兄様に会いに行くか?」


「ううん、行かない」


「え、何で?」


「蓮兄様が私達の事に気付いてないし、今じゃないのよ。それに、あの子との間に割って入ろうとも思わないから」


私の気持ちを聞いた美月はこれ以上、何かを言ってくる事はなかった。


決闘は転校生の勝利で終わり、数ヶ月後に私達は壱級集会の場で正式に顔を合わせ、彼女と初めて会話をする機会が出来た。


彼女は先輩の私に気を使いながら話していて、そんな姿を蓮兄様は微笑ましそうに見ている。


やっぱりこの子は蓮兄様が好きな子で間違いない、私と美月の事を忘れてみたいで少し寂しかった。


***


美月達と分断された今、九年ぶりに私と蓮兄様の二人の時間ができ、私の事を思い出してくれた。


あの子に向けられていた視線が、ようやく私にだけ向けてくれている。


「すまない、成長した雛達に気が付かなかった。集会の時は声を掛ける訳にはいかなかったんだ」


「あの子が御子柴家の生き残りだから、バレれては困ると思ったんでしょ?蓮兄様」


「その口振りだと、随分前からお嬢が御子柴家の人間だと確信していたみたいだな。いつから気付いていた?」


 「確信したのは転校生として現れて、早乙女隼人と決闘をしていたのを見た時かな?本当は連絡をしてほしかった、 蓮兄様に会いたかったの」


私の言葉を聞いた蓮兄様が申し訳けなさそうにした。


蓮兄様に向かって飛んで来た細かい岩の破片を弾き飛ばし、


キィィンッ!!!!


「私達に連絡をしなかったのには、理由があるんだよね?」


「うん、雛達を巻き込みたくなかったんだ」


「ちゃんと話してほしい、蓮兄様達に何があったのか。蓮兄様は下がってて、コイツは私が()る。


「私の愛はこの人を守る事で実るのだから」、そう思いながらだいだらぼっちを睨みつけた。

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