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魔眼フィッターはじめました〜あなたに合う魔眼レンズ、お選びします〜  作者: ムタムッタ
RE 第3章 結膜炎大流行!?(feat.副団長&狐顔イケメン)
80/80

re34.誰が狐を動かした?

※re3章に関してはここで終わり、4章目への流れは同じとなります。

 3章でもre3章でもストーリー自体に大きな差はありません。



「うん、症状も収まったしもう大丈夫。でも、もうしばらくは気をつけて」

「いやはや、騎士団長の自分が1番最後になるとはね」

「そこは個人差があるから仕方ないよ。じゃあ目薬は忘れずにね、お大事に」


 テウメソス討伐から1週間と少し。ハーディー精鋭騎士団の隔離兵舎にて。


 討伐の道中で採取した薬草で作ったアイナの目薬は効果てきめん、隔離していた異世界はやり目の患者である騎士たちは次第に元の目に戻っていった。


 そして今日、症状の長引いていた騎士団長・ケルンも復調の兆しを見せた。……だが点眼自体馴染みのなかった奴らへの目薬布教はなかなか面倒だった。現代と文化が違う場所は一般男性にはちとキツいものがある。


 おまけにアイナもはやり目だったのだから、結局俺がほとんど仕事する羽目になったんだが?


「本業より疲れたぞ」

「それはごめんってば。私だって症状が収まるまで数日かかっちゃったし」


 アイナの指示のもと、徹底した対症療法で異世界はやり目を封殺したのは言うまでもない。


 しかし、元はと言えば騎士団にも原因がある。


「やっぱ異世界だな、手ぇ洗う場所も少なければ消毒もないし」

「都市の成り立ちから違うし、魔法や魔眼っていう要素もあるからね。カンペー達の世界だって、手洗いがまともに普及したのは近代でしょ?」


 よく知ってるなこいつ……

 感染症対策としてウェイドの講じた隔離は不幸中の幸いか、ハーディー内部への感染拡大を塞いだ。騎士団弱体化が黒幕の狙いだったわけだが、噛み合わなかったという。


 しかし騎士団内部で流行ったのは頂けない。はやり目は接触感染が主、対策は『手洗い』と『消毒』である。アイナ並の衛生観念があればどうとでもなったわけで。


「後医は名医だよカンペー」

「どこで知ったんだよその言葉……」


 ともあれ、通常の風邪対策にも手洗いは存分にやって欲しいものだ。


 なにより、便所のあと手を洗わない奴と食事させられるのはたまったもんじゃない。テウメソス討伐後は、《《ウェイドの魔眼レンズ》》を利用しまくることになったぞ。


「んで、今日の総回診をサボってるアホどもは?」

「イヴとウェイドなら城壁外周で魔物の掃討だよ。様子見に行く?」

「テウメソスの魔眼レンズでの初戦闘だっけ? 選定したんだから当然だろ」


 そう、今日はウェイドが『ハーディーの魔眼騎士』となって初の戦闘なのだ。



 ◇ ◇ ◇


 

 場所を移して城郭都市ハーディー、その外周にて。

 城壁近くをうろつくダーティーベアなる熊の討伐に赴いた騎士団たちが各々剣を構えて対峙している。


「回り込めッ」

「爪に注意しろよ、馬鹿力だ!」


 中にはテウメソスによる『異世界はやり目』に罹っていた騎士たちもいるが、後遺症のようなものはなさそうだ。その様子をイヴと並んで眺めていた。


「元気なこって……」

「これが我がハーディー精鋭騎士団の本来の姿だからな! わたしも行ってくるぞ!」


 オレンジの瞳を煌めかせ、イヴは握った剣に炎を宿す。他の面子が注意を引いている間に、彼女の炎剣えんけんが熊を焼く。アイナが新調した、イヴの新しい炎猩々の魔眼レンズである。


 ──guooooooooo


 激しい叫びと共に、熊は泥のような何かを吐き散らす。聞けば触れると暫く匂いの取れない汚泥とかなんとか。だがそんなことは織り込み済みのイーヴァ・クロウ副団長は笑みを浮かべる。


「ウェイド!」

「了解です」


 隊列後方に控えていた狐顔の青年が、黄褐色の瞳を光らせ抜刀一閃。ばら撒かれた汚泥を、刀身を纏う水流で包み、彼方へ吹き飛ばした。


 ――水狐テウメソスの魔眼レンズ。

 アイナの復調後、さっそく作ってもらった(もとい作らせた)魔眼レンズだ。能力としては主に水系の操作など。さすがにテウメソス本体のように大量の水を作ったり操ることはまだできないが、武器に纏わせたり少量を防御や攻撃に使用することはできるようになったらしい。


 相性が良かったのは……狐顔だから?


「使いこなしてるみたいだね」

「アイナ先生、カンペーさん……はい、まるで最初から持っていたように扱えます」

「気をつけてね、つけっぱなしだとイヴみたいになっちゃうから!」

「ははっ、肝に銘じておきますよ」


 気さくに答えるものの、ウェイドの顔が痣だらけである。

 それもそのはず、今回の一件の犯人であり、はっきり言って重罪人だ。街の警備機能を陥れようとしたのだから本来なら投獄ものとか。


 それもこれも俺のフォローである。


『追い詰められてやっちまったんだから許してやれよなー、命に関わる病気でも、ましてや呪いでもなかったんだからさぁ』

『それでは騎士団全体の士気に関わる』

『じゃあこうしよう。とりあえずウェイドが悪い事企んでたのは伏せといて、はやり目を広げちゃったのはこいつが原因ってことでケジメつけてやって』

『……結局同じことじゃない?』


 要約:禊の意味も込めて、イヴにウェイドをボコボコにしてもらいました。


 事件の真相を知るのは俺達4人と騎士団長のみである。

 ……まぁ、手を洗わなかった騎士たちも悪かったってことで。そんなことを言ったらキリはないのでこの話はおしまい! 次似たようなことが起きた時、対処できるのが大事なんだ。


 …………あと、コンタクトのつけすぎもダメ!


「頼むぜウェイドく~ん? これからイヴの魔眼レンズケアはお前が監視するんだからな」

「わかってますよ……本当に、なんてお詫びとお礼をしたら良いか」

「金くれりゃいいんだよ、金くれりゃ」


 アイナはアイナできっちり治療費を取っていたようで。

 騎士団のはやり目治療で金貨200枚。ウェイド・エッジへ作成した水狐の魔眼レンズが金貨100枚。イヴに作り直した炎猩々の魔眼レンズが金貨100枚、しめて金貨400枚。

 この時点で7万円×400という計算式が頭の中で巡ったが……まぁやめておこう。俺は俺の取り分が手に入ればそれでいい。


 ただ、ひとつ気になっていることがまだある。


「そういやウェイド、テウメソスを運ばせた奴ってどんな見た目だったんだ?」

「日焼けとはちょっと違う、浅黒い肌に銀色の丸刈り……あ、そうそう少し目が赤かったですね。ハーディー周辺で放流して、騎士団に追わせるように言われました」

「そいつ……⁉︎」

「あの人……ここで関わってくるのか」

「おいアイナ、やっぱ知り合いなんだろあいつ」

「2人とも……まさかお知り合いですか?」

「お知り合いも何も、俺はその男に追いかけ回されて困ってんだ。アイナの商売敵らしいけどな」


 つーか、あのおっさん帝国のお偉いさんってこと? なぁんでそんな奴が現代日本に来るんだよ。


 大きくため息を吐いたアイナが、観念したのか答える。


「その男の名はランドル・グレイ。帝国でも指折りの魔法使いにして魔眼レンズの共同研究者であり……私の父親だよ」

「お……お父さん⁉︎」


 なんか……いきなり話がスケールダウンしたな。

 え、ってことは俺…………親子喧嘩に巻き込まれてるだけ?


「ウェイド、全員の手洗いだ!」

「今行きます! …………ではお2人ともすみません、僕の仕事やってきます」


 軽くウィンクしてみせて、ウェイドは魔眼の力で水を生み出し騎士たちの手を洗い流していた。お外に出たら手洗いうがいとは言いますが。


「手洗いってそういうこっちゃないんだが……」

「いいんじゃない? まずは習慣づけることが大事だし!」

「つーかお前、剣も使えるんだな」

「私を誰だと思ってるんだい? 極めて優秀な天才魔眼研究者の医師アイナ・グレイだよ?」

「父親と喧嘩中のな」

「むぅ、違うってば! それは……」

「はーいはい、親子喧嘩にぼくちゃんは干渉しませんよ」

「んもぅー結構深刻なことなんだからね。はい、カンペー今回の報酬だよ。お疲れ様!」


 雑に手渡された数枚の金貨と共に、光の扉が俺を覆う。

 気になることはあるが今回は一旦終わりだ。はやくふかふかの布団で寝かせてくれ……


「あ」


 帰ったら……午後の診療からじゃねぇか……!


 そして気づけば走り回った跡の路地に戻っていた。時刻は14:30、まだ休憩時間だった。


「あーぁ、だる」

「ドンマイデース」

「……は?」


 隣にはカタコトで慰める異世界の雇用主。なんの因果か仕事終わり(休憩中)にまでついてきやがったのである。






 re 第3章 結膜炎大流行!? 幼馴染み狂いと狐顔のイケメン

       おわり



 

水狐テウメソスの魔眼レンズ


 水を操る狐の魔物の魔眼をコンタクトレンズに複写したもの。装着すると水の生成と操作が可能になる。いつでも手洗い可能!



 

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