表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

第四話 炎と炎

11歳の少年の前に、一人の男が舞い降りた。

少年は孤児院の前に立っていた。

あちこち燃え、人々の悲鳴で満ちていたエイスプラザの街に静寂が訪れた。


その男は天使のようにゆっくりと舞い降りた。

白いローブを羽織り、オレンジ色の炎の宿った刀を持っていた。

男が空中に浮かんでいる事から、鳥呀は男が魔術師である事を見抜いていた。


「ふむ、たしかにお前のようだな、トリガーロックは」


男は地面に足がつくと同時に、鳥呀の顎を指で上げた。

鳥呀はその手を払いのけ、地面を蹴る。


「お前は何なんだよ! いきなり俺の故郷を破壊しておいて、んで俺を挑発して来て! 何が目的なんだよ!」


鳥呀は肩で息をしながら目の前の男を見た。

輝くような銀色をした初老の男だった。

紳士的な身なりに反して、目は猛獣のようにギラギラしていた。


「………私と勝負しろ」


初老の男が言った。


「はあ?」


「言葉の通りだ。私はお前のそのトリガーロックという力が欲しい。しかしその力が噂程強くなければ、手に入れても意味が無い。そこでお手合わせだ。私がお前を殺せば、その力は私の物」


「馬鹿なんじゃないのか!?」


鳥呀は叫んだ。

もう度胸とかそんな物を越えていた。

こいつは、何がしたいのだ。


「トリガーロックは死ぬと同時に力が消え去る! どう頑張っても俺のこの力はコピー出来ない!」


「愚か者。それは自然死の場合だけだ。トリガーロックが死んだ場合、そのトリガーロックを殺した者は、死後十分以内なら自由にその力を扱う事が出来る」


初老はにんまりと笑った。


「お手合わせ出来るかな?」


鳥呀は奥歯を噛み締めた。


「よろこんで」


初老が炎の宿る刀を構えた。










「………あの時、私はお前に負けた。理由は二つだ。一つ、私はただの魔術師で、身体戦闘に慣れていなかった事」


鳥呀とアマテラスは対峙していた。

お互いの距離差は訳50m。


「二つ目は、私が油断していたからだ」


アマテラスが刀を構えた。

どこからともなく炎が宿り、刀がオレンジ色に光る。


鳥呀は興奮していた。

やっと。やっとこの日が来た。


復讐を果たす時が来た。



誰かに認めてもらえる時が来た。




「戦いを始める前に質問だが、私が去ったあの時から5年間、お前はギルドで何をしていたのだ?」


アマテラスが嘲笑の表情を浮かべながら尋ねた。

鳥呀は準備体操をしながら、自信ありげに言う。


「Sランクの任務をこなして、戦いを学んでいった。んで、色んな奴と戦って、自分の強さを自分で確信した」


鳥呀は腕をまわした。

準備万端だ。


絶対に、こいつは殺してみせる。



二人の周りに男達が結構な距離を置いて観戦していた。

中には賭けに応じる者も居る。


全員の視線が注目する中、鳥呀が呟いた。



「お前は今日、ここで、死ぬんだよ」


アマテラスが走り出す。


戦いのゴングが鳴った。




アマテラスは燃える刀を構えたままこちらに向かって走った。

鳥呀もアマテラスの様子を見ながら距離を縮める。


まだ間合いに入ってないというのに、アマテラスが刀をぶんっと振る。

すると刀から岩のような炎の塊が飛び出し、真っすぐに鳥呀に向かって飛んで来た。


そう、これがアマテラスの能力だ。

炎を宿した刀から様々な火系統の魔術を発動させつつ、刀本体の切れ味を武器にする、魔法と身体戦闘の組み合わせ。

ただ炎を出現させるのには、刀を振る事が必須とされていた。


鳥呀は真っすぐに飛んでくる炎の塊を左足で地面を蹴り避けた。

左へと吹っ飛ぶ体を右足を出してバランスを整え、また走り出す。


が、炎の塊でアマテラスから目を離していた鳥呀は一瞬困惑する。

左右どこにも彼の姿が見えない。


突如、鳥呀は悪い予感を感じ、後ろへ急いで下がった。

1秒前まで彼が立っていた場所に、刀が突き刺さる。


アマテラスは鳥呀が目を離した隙に間合いに入り込み、ジャンプし、ホッピングのように縁の部分に足を乗せて鳥呀を上から突き刺そうとしたのだ。

炎をまとった刀は鳥呀ではなく草に突き刺さる。

草が燃え、あたりに焦げ臭い匂いが広がる。


が、これは鳥呀にとってチャンスだ。

アマテラスは刀の縁の上に立ってるが、落下の衝撃でバランスを崩さないように両手で刀の柄を持っている。

ということは、今のアマテラスは完全にガードの出来ない状態だ。


鳥呀は一歩踏み込み、そのまま全体重を乗せたパンチをアマテラスの顔を狙って突き出した。

が、アマテラスは人間離れした動きで右手を柄から離し、鳥呀の拳をパシッと受け止める。


が、焦らずに鳥呀はすぐに左足の蹴りを繰り出す。

しかしこれもアマテラスに受け止められた。


手と足を掴まれ、情けなく動きを停止する鳥呀の耳に、アマテラスの囁きが届いた。


「--爆ぜろ」


その瞬間、地面に突き刺さっていた刀の周りの地面から、いくつもの火柱が出現した。


鳥呀は舌打ちをしながら後ろへ飛んだ。


幸いにもアマテラスは火を逃れるために火柱が出現する直前に手を離したので、鳥呀は持ち前の瞬発力で後ろに下がれた。

が、火柱は鳥呀の膝と腹をかすめた。


クリーム色の、戦闘用の半ズボンは焦げ、上半身の黒パーカーには火の粉がついていた。


アマテラスと距離を置いて、鳥呀は考える。



刀を振らなければ炎が出現しないと思っていたのは、こっちのミスだ。

まさか振らなくても炎を出せるとは思わなかった。


だが、ある疑問が脳に渦巻く。


ならなぜ、わざわざ炎を出すときに刀を振るんだ?

鳥呀は人差し指をガリっと噛み、冷静に考える。


あ、なるほど。

振って勢いを付けるのか。

ならなぜ勢いをつけるのか?


簡単だ、威力が増すからだ。


合点がいく。


つまりまとめると、アマテラスは刀を振らずに火系統の魔術が使えるのが、それをすると炎の威力が下がる、と。


言われてみれば、ギリギリで攻撃を受けたあの火柱も、殺傷能力はさほど高くなかった。


よし、と鳥呀は呟く。

こうなったら頭脳戦だ。


「ふん、学習したかトリガーロック」


いつのまにかアマテラスが刀を構えていた。


「それでは、そろそろお楽しみと行こうかな」


アマテラスは刀をくるくるとまわした。

炎の粒子のようなものが刀に集まり、巨大な炎刀となる。


そしてくるくると刀をまわしながら、アマテラスが言った。


「巻き込め」


火が、炎が、大きな渦となり鳥呀を襲った。

それはまるで竜巻のようだった。

地面の草を燃やし、あらゆる水分を蒸発する。


鳥呀は横に吹っ飛んで避ける。

炎の渦が拡大した。

目の前に迫ってくる-----。




「まだこの程度で死んでないだろうな?」


アマテラスが笑う。

遠くにいる男達も歓声を上げた。


あたりは煙でよく見えない。

炎の渦は消え去ったが、煙はアマテラスの視界を奪う。


その時、背後で音がした。


ザッ、という草を踏む音だ。

アマテラスは高らかに笑うと、背後をむいて刀を構えた。



そして、衝撃がアマテラスを襲った。


後ろから頭を殴られたのだ。

その強さは拳とは思えなかった。


アマテラスは吹っ飛び、地面に体を激突する。


なぜだ、どういうことだ。

音は攻撃の逆の方向からしたし、あの音はすぐ近くで発生した。


激突の衝撃で口の中を切ったようだ。

血の筋が垂れる。


あたりに漂っていた煙は、風に流されていた。


さっきまでアマテラスの立っていた場所に、鳥呀が立っていた。




作戦成功、と鳥呀は心の中で言った。


煙であたりが見えないのをいい事に、鳥呀は拾った大きめの岩をアマテラスの背後に上から投げた。

奇麗なアーチを描いて岩はアマテラスの背後に落ち、アマテラスがそっちの方向に向いた瞬間、攻撃をしたというわけだ。


しかしまぁ、よく成功したなと自分でも思う。


さて、これからいたぶり殺してやると鳥呀が攻撃の体勢に入った瞬間、狂ったような笑い声があたりに響いた。


「くくく………そういう事か…………ははは、はっはっは! ひーっ!」


腹を抱えてアマテラスが地面に転がり、笑っていた。


「こんな形で馬鹿にされたのは、生まれて初めてだ! ひひ、ひーひひ!」


鳥呀は悪い予感を感じる。


アマテラスがゆったりと起き上がり、鳥呀を睨んだ。


「お前、絶対に殺す」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ