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35話 悪魔の手腕再び

 危ないおにいさんに強制退場願ってからは何事もなく順調に時間は過ぎ、きっちり二刻働いた。現在、闇の三刻。


「リリシア様、お疲れ様でした」

 キリノムくんが終礼をしてくれる。なぜかニコニコ笑顔で。

「お疲れ様です。なんでそんなにご機嫌なの? 何かいいことでもあったの?」

「はい。調理場からリリシア様の様子を時々見られて幸せでした!」

 仕事に集中しようよ!


「キリノムくん、そんなに子ども好きなら結婚したら……?」

「やだなぁ、前にも言ったじゃないですか。そこら辺のガキなんて砂利同然だって」

「あー……。でも自分の子は可愛いって言うし」

「産んでくれるんですか?」

 三歳児には無理です。


「キリちゃん、その発言はアウトだヨ……」

「何がだ。僕は真剣そのものだぞ」

 よりアウトだよ!

 でもさっきのおにいさんみたいな嫌悪感はない。不思議。


「それより、リリ様にお給料あげなきゃだヨ」

「そうだな。だからリリ様と呼ぶな殺すぞ」

「ハイハイ。今から混んでくるから早くしてネ」

 コロネさんのスルースキルを私も見習いたい。

「じゃあワタシは先に戻るネ。リリ様、お疲れ様でしタ!」

「お邪魔だったとは思いますが、お世話になりました!」

「そんなことないヨ! 休んだ間抜けよりよっぽど優秀だったヨ! また手伝ってネ!」

 コロネさんは私の頭を撫でるとフロアに戻って行った。

 薬品マニアさんの進退が俄然気になる。


「ではリリシア様、ありがとうございました」

 白い封筒を差し出してくるキリノムくん。中にお金が入っているのだろう。

「こちらこそありがとうございました」

 会う機会のない人たちとも話せて、良い経験になった。

 遠慮なく封筒を受け取ろうとして手を伸ばしたまま固まる。


 ……ぶ、分厚すぎない?

 どうみても羊羹くらいの厚みがある。


「リリシア様?」

「キリノムくん。失礼を承知で聞いてもいい?」

「何でもどうぞ。僕のスリーサイズでも総資産でも!」

 いやどっちも興味なくはないけど、今はそうじゃない。


「これ、中身って中銀貨?」

 分厚くても百円硬貨と同額の中銀貨なら大した額ではない。

 でも違うなら受け取る前に確認が必要だ。

「大金貨ですよ?」


 一 万 円 の 厚 さ。


「おかしい! 報酬がハイパーインフレ!!」

 金貨だから紙幣より厚みがあるとしても、二百万くらいはある!

「あまり多過ぎても遠慮されるかと思ってこのくらいにしたんですけど……」

「多い! 充分多いよ!!」

「そうですか?」

「そうだよ……。キリノムくんってさ、お金持ちの家の子だったりする?」

 ボンボンだから金銭感覚がおかしいの?

「まあそうですね。無くはないかと」

 やっぱり……!


「キリノムくん、こんなに受け取れません」

「遠慮しなくていいですよ? 僕の私財ですから」

「そういう問題でなく!」

 グイグイと押し付け合う。

「うーん、困りました。そろそろ僕も本当に仕事に戻らないと」

「そ、そっか。ごめんね」

「というわけで時間もないですし、ここはお互いに……というか僕が大分妥協するので大金貨二枚にしましょう」

 最初の提示額の百分の一を提案してくるキリノムくん。まあ、それなら。

 うん?


「いやでも多い……よね?」

「そろそろ混んできちゃうなー。急がないとまずいなー」

「分かった! 分かりました! ありがたく頂きます!」

「はい、では大金貨二枚です。お疲れ様でした」

 なんか上手く丸め込まれてしまった。


 あれ? こういう手口って詐欺とかにあるやつじゃない?


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