33話 制服は意外とモチベーションに反映される
こ、怖かった!
攻撃されるのめちゃくちゃ怖い!
当たっても痛くないと分かっていても、自分に向かって来る極炎、爆風その他諸々は視覚の暴力だった。
慣れると「は? 何それ効きませんけど?」的な感じになるらしいが、慣れる程攻撃されたくない。怖い。
結局、軍人の皆様は私を守り抜いてくれた。
今まで半刻が限界だったらしいのだが、その二倍。頑張った!
制限時間を無事に迎えた瞬間、みんなで抱き合って泣いて喜んでいた。
「死なずに済んだ……!」と。なんかごめんよ。
報酬として母さまからも大金貨一枚を貰えた。
目標金額まであと大金貨一枚だ。
昼食を部屋で食べ終え、午後からは何をしようかと悩む。
兄さまは早速、火竜討伐に向かってしまい不在。
何か仕事をもらえないかという目論見は外れてしまった。
悶々としていると部屋の扉をノックされる。
「リリシア様、キリノムです。入ってもいいですか?」
「はい、どうぞ」
「失礼します」
入って来たのはコックコート姿のキリノムくん。どうしたんだろう?
「リリシア様、何かお仕事を探されていると王妃様から聞きました。ぜひ手伝ってもらいたいことがあるんですが」
「本当!? やります!」
「僕が言うのもなんですが、内容も聞かずに決めちゃ駄目ですよ……」
「た、確かに……。でもキリノムくんだし! 信用してるから大丈夫」
「リリシア様。僕と結婚してください」
いきなりどうした!?
王子様がプロポーズをするように私の手を取り、真顔でキリノムくんが告げてくる。変な物でも食べたのだろうか……?
「ガウッ!!」
「あ? なんだ居たのか、お前」
「ガウゥゥゥ……!」
バチバチと火花を散らすソラとキリノムくん。
この組み合わせも仲悪いな……。
「えーっと、手伝ってもらいたいことって何?」
「僕の求婚は無視ですか。悲しい……。まあそれは追々し続けるとして。リリシア様、カフェテリアのウェイトレスをしてもらえないですか?」
なんか前半気になることを言ってたけど、ここはひとまずスルーさせてもらう!
カフェテリアは城勤めの人たちが食事を摂る食堂の隣にある。
食堂がセルフサービスであることに対し、カフェテリアはファミレス方式。
値段も食堂より高めで、だけどその分落ち着いて飲食ができるのだ。
「でも人足りてるよね?」
「実は今日、一人休んでしまったんですよ。なんでも趣味の劇薬調合の最中に誤って吸ってしまい寝込んでいるとかで」
「だ、大丈夫なの? その人……」
色々と。
「毒自体は治癒魔法で抜いているので死にはしません。吐き気が残っているくらいだそうです」
「へえー……」
他人の趣味に口を挟む野暮なことはすまい。
「どうでしょう? やってくれますか?」
「あ、うん。私にできるならぜひ!」
「では決まりですね。制服はこれを」
ふりふりエプロン再びである。
しかも今回はヘッドドレスとエプロンの下に着るワンピース付き。
キリノムくんが空間魔法でふわりと取り出した。
「……うん、カフェテリアの制服ってさ、黒いシンプルなやつだったよね?」
ユニセックスのシンプル極まりないグレーのエプロンに、黒シャツだったはず。
なぜ英国風メイドさんのセットが用意されているのだ。
「あんなのリリシア様に着せるわけないじゃないですか」
「あんなの!? そう思ってるなら改善しようよ!」
「有象無象の制服なんて何でもいいです。衛生さが保たれれば」
ひ、酷い……。
現場責任者とは思えない発言だ。
キリノムくんは調理場、食堂、カフェテリアの最高責任者なのである。
「僕は外に出ているので、着替えたら出て来てくださいね」
「はい……」
文句を言ったけど、着たらちょっとテンション上がってしまった。




