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魔王の娘ですがマイペースに暮らしてます  作者: キイチシハ
第三章 獣人の国とウェンサ帝国編
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98話 誠に遺憾じゃ済まされない

「父様……」

「私も陛下の意見に賛成です。男なら自分の足で帰りなさい」

 魔王執務室にいたノイン参謀まで、冷たい視線で金獅子を睥睨する。

 男子だったのか。いや論点はそこじゃない。


「そう言わず、どうにか安全に獣人の国まで行ける方法はありませんか?」

 陸路は論外だし、海路も船の調達など手間が多い。

 風魔法を使える人しか空を飛ぶことができない人間の弱味を活かせる、空路が最適なのだ。


「なぜそこまでするのです?」

「モフモフは放っておけません。ただのエゴです!」

「言い切りましたね……」

「だってゴブリンやオークにもここまでするかと言われたら、答えは多分ノーですし」

 勝手な言い分だと自覚はしている。

 だけどこれが私の正直な気持ちなのだ。


「リリはそやつのような魔物に弱いのだったな……。そやつは魔物ではないが」

「はい。愛しています!」

 モフモフ全力ラブ宣言に金獅子は驚いているように見えた。

 ノイン参謀は困ったものを見るような目で、父様はちょっと怒っている。


「気が変わった。そのような不愉快な者は一刻も早く帰郷させよう。リリ、そやつと隷属の仮契約を結ぶのだ。そうすれば奴隷とだけ名簿に載せられ、詳しく正体を調べられることもない」

「奴隷、ですか……」

 奴隷制度は人間を中心に存在している。

 魔族は魔物を従魔として隷属させるが、人間は同じ人間や時には他種族を奴隷として隷属させるのだ。

 人間の世界も弱肉強食。……この世界は本当に厳しい。


「それが一番手っ取り早くてよいでしょう。奴隷を持つ魔族はいませんが、試験的に買ったことにしておけば問題ないかと」

「……それって簡単に解除できますか?」

「主人がする場合は容易です。付ける首輪に不要だと宣言するだけでよいので」

「首輪までするんですか……」

「ええ。『隷属の首輪』と呼ばれるものですが、それが飼われている証拠となりますから」

 なんでそんなに詳しいの、ノイン参謀。


「知識として知っているだけです。私にそういう趣味はありませんよ」

「顔に出てましたか。ごめんなさい!」

 と、ともかく仮にその方法しかないとして。

 実行するには問題が一つ。

 金獅子の同意だ。

 今からちょっと奴隷になってくださいね、とか私なら冗談じゃない。


「父様とノイン参謀なら、獣人の国に行ったことがあるんじゃないんですか?」

「「…………」」

 無言で顔を逸らされた。

「……あるんですね?」

「私は公務で忙しいのだ(キリッ)」

「こんな時だけ凛々しい顔しないでください父様!」

「そこのなんちゃって王と違い私は本当に忙しいので、すみませんが他を当たって頂けますか」

「ノイン……」

 相変わらず父様に辛辣ですね、ノイン参謀……。


「分かりました。なるべくお二人の手を煩わせない方法を探ってみます」

 でも最終手段として視野に入れさせてもらう。ごめん父様。


「すみません。最悪な行き方しか見つからなくて……」

 膝を折り金獅子の目を見て謝る。

 琥珀の瞳は私の真意を推し量る様に、ただジッと見つめ返してきた。

「何か他にないか探してみます。それまでうちに居てくれますか?」

「……ガオ」

 よかった。怒り出す様子もない。

 随分落ち着いているけれど、何歳ぐらいの人なんだろう。


「というわけなので父様。滞在許可をください」

「嫌だと言ったら」

「ヴァンさんのところに泊まり込みます」

「許可する」

 相変わらずチョロイよ父様。大好き!


「ありがとう父様! ノイン参謀もお邪魔しました!」

 金獅子を連れだって魔王執務室を出る。

 とりあえず私の部屋に来てもらおうと思う。許可した人しか入れない仕様だから安全だ。

 入室の権限は魔法課程修了時に母様から私に移してもらったので、問題ない。


 メイドさんたちにギョッとされながらも自室に着き、金獅子を中へと案内する。

「私の部屋です。知らない人は入って来れないので、安心してください」

 少し躊躇いがちに大きな足を踏み入れた金獅子は、キョロキョロと落ち着きなく室内を見回す。

なんか自分の部屋にライオンがいるのって不思議な光景だ。ニヤけそう。


「あ、そうだ。お腹は空いてませんか?」

「ガオガオ」

「喉が渇いたりとかは」

「ガオガオ」

「そうですか。では自由に過ごしてくださいね。ベッドで疲れを癒してもいいですし。私は調べものをしてきます」

「……ガオ」

「窮屈な思いをさせるかもしれませんが、少しだけ我慢してください」

 膝を折りお願いすると、猫科特有のザリッとした舌で優しく頬を舐められた。

 おお! 猫舌!


「……リリ。そいつ何?」


 そんな感動体験を恐怖体験に変えそうな不機嫌な声が、背後からした。


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