第10話 社長の娘
ボクは毎朝パソコンのスイッチを入れるのが楽しみになって来ました
。だってメールを開くといっぱいの注文や問い合わせメールが届いてい
るからです。社長にどんどん売れていてすごいです! って言うと、う
ーん人を入れるしか無いか・・・・ 意味深なことを言い出しました。
いや今でも人はいっぱいいるんです、でも手伝ってくれないだけです
。もっと人を入れたらボクが稼いでいるぶんが吸い取られてしまい、給
料は上がらなくなってしまいます。はああああ、たのむからてつだって
くれえええ・・・・
隣の席の片海さんは朝会社に来てパソコンのスイッチを入れるたびに
大騒ぎするんですよ、絵が出てこないとか、この前のアレが見れないと
かいろいろです。教えてもすぐに忘れちゃうのでメモしといてください
って言うと、怒るんですよ、そんなことならもう教えない! って思っ
ちゃいました。
ボクは倉庫にいっぱいある売れ残りの商品の数を数えなおしました。
はああああ、このままだとあと1ヶ月で無くなっちゃう・・・・ 売り
切れだああああ。ボクはどうしたら良いかわからなくなりました。社長
に無くなっちゃいます! って言うと、捨てようとしてたのが処分でき
てスッキリだな、ハハハーッ! って。
ボクは新しく作らないとと言ったら、売れ残りだしもう作らなくて良
いよって言い出したんです。だってすごい売れてるのに作らないなんて
もったいないって思いました。ボクはCMAの小島さんから来た注文も
それじゃ断るしか無いですね! って言ったら、それは困る小嶋ちゃん
がっかりするからって言い出したんです。
1分前と言うことが360度回転して追加して作ろうって言ってくれ
ました、ちがう180度だ。社員は小嶋さんと仲良くしたいから新しく
作るだけなんだということがわかりました。でもボクはやった! って
思いました。そして設計の2人に相談しました。
すると機械設計の添山さんは、部品の型はあるからプラスチック屋に
番号を言えばすぐ作ってくれるよ、その他の部品も設計図があるから注
文すれば同じものは作れるよと教えてくれました。
電気部品はどうなんだろう・・・・ 電気設計の木森さんに聞くと、
アイシーは取引先に注文すれば作ってくれるよ、その他の電気部品は電
子パーツ店に注文すれば手に入るよ、ただソフトはこちらで入れないと
動かないよと教えてくれました。
そうか! 部品を注文すれば出来るんだ! すると設計の2人は、今
ケンさんの所もバッタとコケシの生産で手が回らないのよ、作りたいん
だったら、こちらで部品を全部そろえて持って行き、組み立てだけをお
願いしたほうがケンさんの負担が少なくて良いと思うよ! と教えてく
れました。
ボクはさっそく作りたいので設計図と部品表をください! って言う
と、サーバーのこのフォルダを見ると商品名のフォルダがあるからその
中を見れば全て入っているよと教えてくれました。ボクはすぐにそのフ
ォルダの中身を見ました。
部品表の中には図面の番号とか型の番号、それにどの会社に注文した
かと金額が書いてありました。そうかわかった! これを作っている会
社に注文すれば同じ部品が手に入るんだ、わかった! と思いました。
ボクは1つずつフォルダを開いて、部品メーカーに問い合わせをして
注文書を作りました。やり方はわかったけれどこれが結構大変なことも
わかりました。このままだと間に合わない、はああああ、こまったああ
あ! かなり焦ってきてどうしようか考えていたら、社長が突然皆に話
しかけて来ました。
いやあ、私の娘が会社辞めちゃったんで手伝ってもらおうと思うんだ
、明日から来るのでよろしく! って突然言い出したんです。設計の2
人は振り返ってふーん、あっそおって感じだったし、片海さんは聞いて
ません、営業の岩口さんは今日は会社に来てません。ボクは人を入れる
しか無いかって意味深なことを言ってたわけがやっとわかりました。
次の日ですが、朝会社に行くと社長の隣の席に女の人がいました。お
はようございます! って挨拶すると返事をしてくれました。この人が
社長の娘なんだ・・・・・ そう思いました。そして仕事を始める時間
になると社長が娘さんを紹介しました。娘さんはマキさんと言って28
才で旦那さんもいる人でした。
ボクは紹介が終わるといつものようにパソコンのスイッチを入れてメ
ールを開いて見始めました。そして社長がいつものようにタバコに火を
つけて吸おうとしたら、娘のマキさんが一言、外! って言いました。
ボクは顔を上げて見るとマキさんが社長をギロッ! とにらんでいまし
た。
社長はヘラヘラと笑いながら中じゃだめ? って聞き返すと娘さんは
一言、ダメ! って言いました。すると社長はこれからは事務所内禁煙
だからと言い玄関を出ていき外でタバコを吸い始めたんです。うわっ、
えらい社長よりマキさんのほうがえらいんだ、娘さんすごなーーー!
って思いました。
今日も忙しいなあ、やることがいっぱいだ。最近妄想したり商品で遊
んだりする時間が無くてちょっとストレスを感じるようになってました
。社長みたいに好きなことだけやって嫌なことは何もしないでいられた
ら最高だなあって思いました。
そうやって仕事を続けていたら、娘のマキさんが社長にパパ何すれば
いいの? って聞きました。社長は何かないか? って経理の三下さん
に言うと、私の仕事はちょうど良い感じですって言いました。マキさん
のする仕事が無いんだ・・・・・
ボクは社長にやってもらいたいことがあるんですけどって言うと、じ
ゃあ説明してやってと言ったのでボクは助かったと思いました。新しく
作る商品の部品の注文をしてもらいたかったからです。ボクはフォルダ
ーのことを説明し、注文の仕方も説明しました。マキさんは頭が良くて
すぐ理解してくれました。
かなりの仕事の量ですね、がんばってやります! って言ってくれた
のでこれで商品の発送や営業が出来るから助かったと思いました。と、
余裕が出来たけれど相変わらず社長はねえねえ知ってるかなあってボク
に話しかけてくるんです、ハイハイって返事をしながらメールの返信を
しますがやっぱり集中できず仕事は進みません。
モヤモヤしながら仕事をしていると電話がかかってきました。ボクの
始めてのお客さんでカタツムリライターを買ってくれたお客さんからで
した。あーこんにちわ! その後どうですか? そう聞くと、例のあや
しい関西弁のデンマーク人のホッカさんなんだけど、国に輸出したら大
人気であっという間に売れ切れちゃったらしいのよ、それで相談なんだ
けどさあ・・・・・ って話でした。
どうやらホッカさんからはその後たくさんの注文が来たんだけど、う
ちじゃそんなたくさん対応出来ないから、直接取引してくれないかと言
うお願いでした。えらいえらいデンマーク人に馬鹿にされるんじやって
思っていたら大好評だったんです。はああああデンマークにうれたああ
あ・・・・
ボクは電話を置くと社長にこの前のホッカさん、デンマークでバカ売
れしたので直接うちと取引したいと言ってきたけどどうしますか? っ
て聞くと、えっ、ホッカちゃん? いいよいいよウエルカムだよ! っ
て。ボクは営業の岩口さんに相談は? って聞いたら、あてにならない
よ、私がやる! って言い出しました。
すぐにお客さんにうちはOKです! って言ったら今ホッカさんここ
にいるんだよ、そっちにこれから行きたいらしいよって。ボクは待って
ます! って言うと電話を切りました。すぐ社長にホッカさんがこれか
ら来ます! って言うとそうか、デンマークでもバカ売れかアハハーー
ッ! って大喜びの社長でした。
ボクに日本のハイテクは・・・・ とか民芸品に国境はない・・・・
とか、世界進出の時期に入ってきたとか夢中で話を続けたんです。ボ
クはハイハイと聞きながら社長は世界征服をたくらんでいるんだと思い
ました。社長は夢があっていいなあ、ボクは今日発送しないといけない
商品のことで頭いっぱいなのに・・・・・
そんな話を聞いていたらドアが開いて誰かが入ってきました。ホッカ
さんです、早っ!・・・・・ どうもおーまいどおー! って上機嫌で
した。ホッカちゃんいらっしゃい! 大きなテーブルに座りボクと社長
とホッカさんで話を始めました。
いやあ、例のカタツムリライターとジャンピングバッタ、あれ輸出し
たら大人気やあ~、あっというまに売り切れでんねん、そやからもっと
輸出せにゃあかん! って話でした。ボクはこの時とばかり自信作のカ
タログをホッカさんに見せると、なんやごっつあやしいでえ~、アハハ
ーッと大爆笑でした。
ボクはこの時とばかり、どの商品がどれくらい売れているのかを調べ
た秘密の資料を見せて今月これだけ売れました! って言うと、じゃそ
れ全部1.5倍で注文やで、いつもらえるかいな? って聞いてきたん
です、ボクはこのカタログの物はすぐにでも発送出来ます! って言う
と、そなら送料払うで直接デンマークに送ってや! って言われました
。
それから社長とホッカさんはゲームの話で大盛り上がりでした。2人
とも仕事しないで遊んでる感じです。ああいいなあ好きたことだけして
好きなことしゃべってるだけで給料がもらえるなんて・・・・ ボクの
出番はもう無いので途中から席を立って出荷の仕事を始めました。
ホッカさんが上機嫌で帰って行くと社長もノリノリでした。ホッカち
ゃんは! ってゲームの話とかデンマークに本格進出だ! アライアン
スをホッカちゃんと組むんだ! なんてまた世界征服の妄想話をし続け
ました。確かに売れたのはうれしいけどデンマークにどうやって送れば
良いんだろう、そっちのことで頭いっぱいでした。
その後、宅配便の人が来たので外国に送れますか? って聞くと系列
の会社で国際貨物やってるのでこちらに営業に来るように連絡しておき
ますと言ってくれました。伝票にデンマークの倉庫の住所を書けば日本
と同じ感じで商品が送れるらしいです、そうかわかったーーー!
残業時間に入るとボクは何日かぶりに商品をいじって遊びました。あ
ははーっ、もぐらカッター最高! 紙の上にもぐらさんを置いて頭をコ
ンコンするともぐらさんが両手で必死で土を掘り始めるんです、実際は
手の下にカッターが付いていて、紙を切って行くんですが。
ペーパーナイフにもぐらさんが付いているようなもので、封筒をハサ
ミで切って開くより、もぐらさんに切ってもらったほうが早いし楽しい
です、あーなんてすばらしい商品なんだろう、ついでで野菜とか切って
くれるともっとたのしいなあー。商品を観察しながら遊んでいました。
すると突然、ねこぱーーーーんち!・・・・ コンッ♪ って声が聞
こえました。ボクは顔を上げると設計の2人がまねき猫パンチの試作品
を調整している最中でした。すぐに走って行きそれを見ました。ねこち
ゃんの前足の肉球の所にハンコが刺さっていました、そしてねこちゃん
の目の前に紙を出すと、ねこぱーーーーんち! と叫びながら前足が下
がっていき、ハンコを押した瞬間、コンッ♪ っておもしろい音が出ま
した。
はああああ、はんこうがおせたああああ! ボクは興奮してしまいま
した。電気の木森さんがやっと音声が出るようになったと言いました。
機械の添山さんは前足の動く根元にダンパーが入っていてハンコを押す
時にどんな紙でも同じ力で押せるから綺麗にハンコが押せるんだって説
明してくれました。
すごいなーダンパー! ダンパーって何だろう・・・・・ わかりま
せんが黙って動かないまねき猫より実用的だし何より楽しいじゃないで
すか、これもヒットしそうな気分になって来ました。そうだ! この商
品もお客さんに売り込まないと!
次の日ですが試作品を1つ貸してもらい、入り口の受付の棚にまねき
猫パンチを置きました。そしてしばらくすると宅配便のお兄さんが来ま
した。いつものようにハンコかサインお願いします! と言ってきたの
で、まねき猫パンチを指さしてここに伝票を置いてくださいと言いまし
た。
するとお兄さんはここですか? って猫さんの前に伝票を置いた瞬間
、前足が動き始め、ねこぱーーーーんち!・・・・ コンッ♪ ってハ
ンコを押した瞬間、大爆笑でした。ボクはやった大成功だ! って思い
ました。お兄さんは涙目で笑いながらすばらしい! これどこで買える
んですか? って聞いてきたのでこれは試作品です、もう少しで発売で
す! って言うとこれ欲しいです! って。
ボクは猫さんを手に乗せて説明をしました。いつもハンコを押すのに
引き出しから出してって面倒くさいからこれがあれば楽しく押せるんで
す! って説明しました。するとお兄さんはコレ、うちの会社の名前入
れること可能ですか? って聞いてきたんです。
お兄さんの宅配会社は毎年テレビで10万名様に当たる! として、
ジャンパーや、マスコットや、音楽プレイヤーなどの懸賞品をプレゼン
トするキャンペーンをやっているのは知ってました。毎年どんな商品を
懸賞品にするか社員の意見を募集してるそうです。
お兄さんはこれが一番良いかもと言ってました、宅配便の人も配達の
サインかハンコをもらうのが毎回大変だからです、それにライバルの宅
配さんがうちの会社の猫さんからハンコをもらうってると思うと何だか
優越感を感じます! って言ってました。なるほどそういうことか。
ボクはぜひ提案してください! ってお願いをしました。あーなんか
人に喜んでもらえる商品っていいなあーーー、はははーっ! その夜、
猫さんのことを考えていたら顔がにやけてしまい、またまた寝ることが
出来ませんでした。




