㉜ 雪子の総仕上げ
そそくさと男湯を出て行く、河合曾良を尻目に、真田雪子は成雪に声をかけた。
「大丈夫?コワイ思いをさせちゃったわね。」
「ええ、大丈夫です。おかげで助かりました…でも、どうしてこんなにピンポイントで、ボクの危険を察知出来たんですか?」
「アナタのその腕に着けたリング…発信機や通信機の機能もある、マルチデバイスなのよ。防水性能も高い優れモノ。」
「つまり、コレ、盗聴機能も有るって事ですね?」
「まあ、そういう事ね。ごめんなさい。怒った?」
「いや、命が助かったので……。」
「そう。なら良かった。まあ、さっきのアイツの、首から下げた数珠も、多分似たようなモノよ。」
「じゃあ、今の会話も筒抜けなんですか?」
「あいつが、気の効いたスパイなら、そうしてるわね。いいのよ。私が今から、アイツの頭の中から盗んだ情報に基づいて、各地のポータルを潰しに行くから。」
「無駄に、長話をしていた訳じゃ無かったんだ。流石ですね?」
「まあね。でもこのテレパシー能力は、つい最近身に付けたスキルなのよ。」
「イロイロありがとうございます。じゃあボク、そろそろ上がりますね。何だか、のぼせて来ちゃった。」
「あら、ごめんなさい。カグヤさんには、アナタから報告しておいてもらえるかしら?」
「了解しました。どこにワナが有るかも分かりませんから、雪子さんも、気をつけてくださいね?」
「ありがとう。じゃあ、また、ね?」
雪子はそう言うと、左腕のデバイスのスイッチを入れて、その場から消えてしまった。
どうやら、彼女のリングには、一人用のトラベル機能もあるようだ。
その後、成雪は風呂場を出て、すぐにカグヤに事の一部始終を報告した。
それなら、ただちにこの時空から、撤退した方が良かろうという事になり、湯冷めする間もなく、元の研究所の一室に戻ったのだった。
「あ〜あ、もう少し温泉郷で、ゆっくりしたかったなあ。」
ソファーに埋もれながら、カグヤが本音を漏らした。
「それも、これも、あのアラハバキの連中のせいですね。」
成雪もちょっと残念そうだった。
「でも、あんな風に襲われた時には、自分で対処できるようになりたいな。」
「そうね。今後に備えて、そっち方面のスキルも鍛えなきゃだね。」
カグヤも同意したが……やはり、何処かに、不安が残る。もしも雪村さんのような強大なチカラを、私の成雪が身に付けてしまったら……。
慎重に、でも確実に、成雪が、自分で自分の身を守れるようにしてあげなくっちゃ。密かにそう心に誓う、カグヤであった。
以上で第21巻は完結です。
引き続き第22巻もヨロシクお願い致します(>ω<)




