㉗ カグヤの推理
場面変わって、コチラは、無事に研究所の部屋に戻って来た二人。
カグヤと成雪は、ソファに座って、まったりと旅の疲れを癒していた。
そこでカグヤが、おもむろに成雪に向かって、語り始める。
「成雪、お疲れ様。さあ、約束の説明をするわね。」
「はい。是非お願いします。」
「結局、東洲斎写楽は、見つからなかった。そうよね?」
「はい。ボクなりに頑張ってみましたが…。」
「…見つかる訳が無いのよ。」
「えっ?」
「だって、アナタが、その写楽だったんですもの。」
「ええっ!?」
「さっき、一部持ち帰った、アナタの描いた似顔絵、見せてもらったんだけど…。」
「…はい。」
「もう、言い訳出来ない程、画風が写楽そのモノだったわ。」
「えっ、そうなのかなあ…。」
「本人に全く自覚が無いところが、何とも罪よねえ。」
「アナタは今日まで100余枚程の絵を描いた。」
「…はい。」
「それを劇場主から受け取った、版元の蔦屋重三郎が、浮世絵版画として仕上げていたのよ。」
「そうなん…ですね?」
「そして活動一年を待たずしての、作者の失踪。」
「ああ、ボクですね。」
「後半の作風の変化…は多分、贋作。」
「ボクが居なくなったから?」
「何より、写楽の正体とされている、人物の名前。」
「ボクは"十郎"と名乗りました。」
「一番有力な説は…能役者の、"斎藤十郎兵衛"と言われているわ…アナタの偽名に、アレコレ後から付け加えて、別人にしたんじゃないの?もちろん、諸説有るけどね。」
「そんなあ…。」
「ずっと気になっていた、謎の芸術家の正体が、実は自分だったなんて、皮肉よね?」
「う〜ん。ボクはナルシストなんでしょうか?」
「どうなんだろう?まあ、でも、自分の事を愛せないより、マシなんじゃない?」
そう言って、カグヤが成雪を慰めた。
そんな訳で、二人の初めての歴史探訪は、一定の成果を上げる事が出来た(?)のである。
成雪はこの結果に、しばらくの間へコんで居たようだったが、少し時が立つと、またカグヤにお願いして来たのだった。
「実はボク、江戸時代にもう一人…いや、コンビだから二人か、気になるヒトが居るんですけど…。」
「もう、ヤメてよ?もしソレも正体がアナタだったりしたら、私、出るところに出るわよ?」
「えっ、どこに出るの?」
「…どこでもないわよ。言葉のアヤよ。それで…誰を調べたいの?」
カグヤは、既にイヤな予感がしていた。




