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86.テンプレ的に、事業の打ち合わせをする俺。

シンジ君、モノづくりテンプレの第一歩を踏み出すの巻。

やっぱりテンプレと言えば、モノ作りだよね?(ウンウン)

 ランチェスト兄妹と王都観光を敢行した翌日、朝稽古を終えたシンジは、ひとりで本神殿に向かった。


 目的は、石鹸の復活準備。


 本神殿のハルクは、この国の神殿を司る立場だ。だったら、領都であるチェスタニアに戻ってからより、ハルクに手配を直接材料などを依頼した方が、より迅速に物事を進められると思ったからだ。権威権力バンザイ、である。


 当然この世界には、苛性ソーダを造れる科学技術などはない。であれば、原始的な木灰アルカリを使った軟石鹸が良いところだ。だが、人間の歴史とは偉いもので、科学技術は無くても硬石鹸を造っていたのだ。有名なのはマルセイユ石鹸だろう。だからこの世界でも材料に拘れば、ちゃんと造ることは出来るはずだ。


 だが、それを造るのに必要となる上質な植物油と海藻類は、海が近くに存在しないチェスタニアではコスト高になる。


 そこで、権威権力溢れる本神殿の登場だ。


 高級路線から始めれば、資金は集まりやすくなる。庶民用の石鹸は、それから広めれば良い。最初から庶民用を量産するのは難しいからだ。


 これが、作り方が明確でなかったり、権力が無かったり、資金面が厳しかったりしたら、話は別である。それこそ、実験を兼ねて造り、それを販売しながら自転車操業の様に回転を増していくようなやり方を取らざるを得ない。


 しかし、それをすれば権力者に目を付けられて酷いことになるのは、この世界の歴史が証明しているではないか。


 つまり、この世界では貴族レベルであっても、前世チートをするには条件が厳しいのだ。


 しかし、唯一どの貴族にも王族にも、いや国そのものにも対抗できる存在がある。それが神殿だ。


 ただ、神殿が商売をやって良いのか? それも確認しなくてはならない。


 「という訳で、ハルクさんとフレディさんにいろいろ確認したくてねえ」


 「なるほど、良く分かりました」


 ハルクが口ひげを撫でながら肯く。


 「まず、神殿が商売をやって良いかどうかですが、治療院という形ですが実際に行っていますからな。もちろん商売ではなく、寄付という形にはしていますが。それに、奴隷の扱いもありますな」


 「えッ!? 神殿が、奴隷商人やっているのッ!!?」


 これにはシンジも驚いた。良くあるファンタジー物では、悪役となることが多い商売なのに。


 「正確には、奴隷紋を施すのが神官の聖魔術でして。奴隷商館は神殿関係者が運営しています。扱っているのは、借金奴隷と犯罪奴隷ですね」


 どうやら、犯罪奴隷は刑務所収監の代わりに働かせて、その賃金は被害者への救済金額に充てるらしい。合理的と言えば合理的だ。借金奴隷の場合は、労働力の提供により自分の身を買い戻すことが出来る。その賃金も、当然下限が法律で定められている。事実上の社会セーフティネットとして機能しているのだ。


 だからこそ、良く物語にある違法奴隷というものは非常に存在しづらいし、それが発覚した場合は貴族であっても犯罪者で終身奴隷行きだ。


 この辺は幼女が厳しいらしい。これも、過去の国で転移者が奴隷化されようとしたときに、幼女が神殿と国を厳しく罰したことから、絶対的な法として扱われている。つまり、幼女のせいだ。


 なるほど、神殿としては商売とは言いづらいが、借金奴隷や犯罪奴隷に施された奴隷紋の代金返済が定期的な収入になるので、実質は商売になっているという訳だ。


 もちろん組織の維持にも金は必要だし、神官だって霞を食って生きているわけではない。寄付だけでは国や貴族に依存することになるし、独立性を保つためにも定期的な収入は必要だろう。


 「あ、そう言えば、孤児院も経営しているって聞いたけど」


 「そちらは慈善事業ですな。完全に持ち出しですな」


 それはそうだろう。孤児院で儲けるとか、どれだけ悪辣な話か。


 「うーん、石鹸制作が軌道に乗ったら、孤児院での制作を考えても良いかもね。そうしたら利益が落ちるし、生活ももっと良くなるでしょ」


 「そうですな。ただ、あまり良くし過ぎると、孤児院を出たがらない子も出てくるでしょうからな。難しいところですな」


 「工場化して、そこで働けるようにしたら?」


 「なるほど、それならば良いですな。冒険者が向いていない子もいますからな」


 早速シンジは、材料の無心をする。


 「でね、材料は植物油、出来れば高級で香りの良い食べられる油が良いかな。黄色い花の種から採れる油があったら、食べられなくても大丈夫だけど」


 コスト削減の場合は、オークの油を入れてもいいかもしれない。この辺は、チュートリアルのレシピがあるから大丈夫だろう。


 「残念ながら、王都の神殿で作るのは時間的に難しいので、材料をお試し用にチェスタニアの神殿に送ってくれると嬉しいんだけど。で、フレディさんは、俺が帰って材料が届いたら、実作に人手を貸してね」


 ふたりは快く承諾してくれた。これで実作が出来る。


 「使徒様、こちらは発明者専売条例に登録をされますね? 利益の配分はどのように?」


 「ん? ちなみに、発明者専売条例ってどんな法律なの?」


 「簡単に言いますと、守られる期間は20年ですね。自分で制作する場合は、他の者は同じ物が作れません。制作を委託する場合は、ふさわしいギルドが統括して、製法を統括します。そして、制作数などの条件を決めて、ギルドから発明者に対価が支払われる仕組みです」


 なるほど、特許や実用新案登録に近い。もしかしたら、これも幼女か転移者が絡んでいるのかもしれない。


 「一般的には、利益の4割を5年間であと15年は2割とか、様々な条件を付けて契約します。今回ですと、6割が使徒様、1割が神殿、3割が製造者が妥当かと思いますが」


 「いやいやいや、俺取り過ぎでしょッ!? 俺1割で良いよ。後は神殿と孤児院と製造者で分ければ?」


 「いやいやいや、それでは使徒様の取り分が」


 「いやいやいや、俺、まだたくさんネタあるし、今回の目的は孤児院の経営黒字化だし」


 「いやいやいや……」


 結局、俺2割、神殿2割、孤児院2割、製造者4割で落ち着いた。製造者は、それを元手に冒険者の武器防具や商売を始められるようにという事で、大目に配分する事になったのが救いだろう。


 まあ、シンジとしても正直ありがたい。これから村を立ち上げなければならないので。遠慮なく貰うことにした。


 ただ、今はまだ、取らぬ狸のなんとやらなので、早めに事業が立ち上がるように頑張ろうとシンジは思った。

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