Siempre juntos (いつも一緒)
1話1話が長過ぎて読みにくかったこのお話も漸く完結です。
此処まで読み進めて戴いてありがとうございました。
今回が最終話となります。
最後まで読んで戴けると幸いです。
Medina del Campoに移った両王の子だが、マリアがポルトガルへ嫁いだので残りはカタリナのみとなった。
「フフ」
「カタリナ、何かおかしな事でもあったの?」
「いいえ。ただこの先うまく行きそうな感じがしたのです。理由は特にないのですが」
我が子ながらカタリナは昔から不思議な娘だった。
いよいよカタリナがイングランドへ嫁ぐ日が来た。
「お母様、今まで育てていただいてありがとうございました。」
「お父様、イングランドではしっかりと勤めを果たします。」
其々と抱擁を交わして彼女は宮殿を出て行った。
「とうとう我々の娘たちが全員嫁いで行ってしまったな」
しかし心配の種は残っていた。
ボルゴーニャに嫁いだフアナの夫フェリペである。当時女性の君主が立った場合はその君主の夫が多少実権を握るのは当たり前の事だった。フェリペがフランス贔屓である事を前から知っていた両王は彼に実権を握られる事を危惧した。
一方ヘントにいたジャンヌ(フアナ)とフィリップ(フェリペ)は女の子イサベル(後のデンマーク王妃イサベラ)を出産していた。やがてジャンヌの実家のカトリック両王から書状が届いた。
内容はやはり、夫妻をカスティーリャに呼ぶというものだった。
フィリップは出来るならヘントに留まっていたかった。しかしそれではカスティーリャの実権を握る事が出来ないので仕方なしに着いて行き、摂政にサヴォイア公フェリベルト2世の未亡人になっていた妹マルグリットを任命した。
ネーデルラント総督マルガレーテ・フォン・エスターライヒの誕生である。
そしてヘントに置いて行った3人の子どもの養育を彼女に任せた。
ジャンヌ(フアナ)とフィリップ(フェリペ)は船の難破でフランスを経由する事になり、海路ではなく陸路でMedina del Campoに到着した。
両王は娘夫婦が無事に到着した事を喜んで歓迎の宴を開いたが、フェリペはラテン語ではなく両王の仇敵フランスの言葉(フランス語)を使い続け、フアナが通訳するという嫌な物になった。
またフランドルから連れてきた従者は粗野で騒々しく、これを毅然と注意をしたマルガリータとは違ってフェリペはむしろ良しとしたために日々エスカレートする事になった。そしてとうとうカスティーリャの傭兵がフランドルの傭兵を殺害する事件が起きた。娘夫婦を歓迎していた両王と娘婿フェリペの仲は急速に冷え込んだ。
フアナとフェリペが到着した数日後、フアナを立太子させる儀式を行った。これでイサベルに何かあった時の摂政は夫フェルナンドではなくアストゥリアス女公フアナという事になる。
だがフェリペとしては妻フアナのアストゥリアス女公就任と同時に自らもアストゥリアス公と同等の実権を握られる事を期待しており、それが実現されなかった事に苛立ちを抑えられなかった。
アストゥリアス公に任じられなければフアナが女王に即位しても、カスティーリャ共治王として摂政その他の権利を行使出来ないのだ。
これが厄介であった。
妻が将来女王になる事を約束されているのをいい事に地元フランドルの貴族にカスティーリャの土地を与えたり、自分の側近にカスティーリャの官僚の地位を与えようとしたりと身勝手な行動が目立った。
両王の子であるというプライドを持っていたフアナは、アストゥリアス女公に封じられたから暫くは夫の暴走を毅然と制していた。
だが身重で精神不安定だったフアナは次第に夫の暴走を制止させるどころではなくなる。カスティーリャの貴族達はフェリペの女好きに耐えられなくなった事が原因で狂ってしまったのだと噂した。彼女は議会の最中もボーッと遠くを見つめている事が多いが、そうかと思えばヒステリックなまでに喚き散らすのだ。
挙げ句の果てにはカスティーリャに嫌気が差した夫フェリペが自国ボルゴーニャへ帰った事を「2人が自分とフェリペを引き離した」と両王のせいにして慟哭する始末だ。
無事元気な男の子を出産してもフェリペがいない事による喪失感は変わらなかった。
因みにその子は母方祖父と同じフェルナンドと名付けられた。この子は後にオーストリアに移り、交代でスペインへ向かった兄の補佐(主に神聖ローマ帝国の国事について)をし、兄の後を継いで神聖ローマ皇帝に即位し、オーストリア=ハプスブルク家の祖となる。
イサベル1世は娘の躁鬱状態を見て、母イサベル・デ・ポルトゥガルの姿と重ね合わせた。
(フアナは母上の精神異常を受け継いでしまったのだわ)
そしてカスティーリャの行く末を心配する余り異常なまでの大汗をかいた。
夏が盛りを越えようとしていた。
フアナはフェリペの後を追うようにしてボルゴーニャへ帰って行った。
将来の不安が拭えないイサベルはフェルナンドやチャコンなど信頼している者だけを呼んでこれからの国政について相談していた。
「フアナを名目上の女王にしておいて、実際は私とフェリペで動かすのはどうだ?」
「フアナは確かに精神不安定だけど、統治能力が欠如している訳ではない!フアナから実権を奪うのは望ましくないわ!」
必死にフアナの地位を守ろうとする余り、イサベルは椅子から立ち上がった。
が…
背中から腰にかけて激痛が走り…
「イサベル!イサベル!しっかりするんだ!」
イサベルはそのまま倒れ三日三晩目を覚まさなかった。
フェルナンドは今までイサベルと一緒に行っていた政務を1人でこなし、合間を縫ってイサベルの様子を見守った。
何とか意識を取り戻したイサベルだったが、彼女は死期を悟った。
「私はもう死ぬ。フアナとこの先のカスティーリャが心配だけどもう私には何をする力も残ってない」
「大丈夫だイサベル。俺の目が黒いうちは誰にも悪さはさせない。任せてくれ」
イサベルは泣きながらベッド越しにフェルナンドに抱きつき、恐らく最後となる口付けを交わした。
病床のイサベルは最早泣いてフェルナンドに縋るしかなかった。今までイサベルを支えてきたフェルナンドもまた、イサベルに襲いかかる病魔に対しては全く無力であった。
イサベルは最後の大仕事に取り掛かった。
病床で紙と羽ペンを手に遺書を認めたが、その度に今後予想される権力闘争などで何度も修正を余儀なくされた。
そして見る間に衰弱していき、最後の修正を終える頃には文を書く力も無くなっていた。
そしてフェルナンドやチャコン、カブレラ(侍女ベアトリス・ボバディジャの夫)やバティコ(子の方)ら家臣立会いの元で、イサベルは口述筆記を終えた遺書に震える手で署名した。
「余が崩御した後、娘フアナが即位する。フアナが帰国するまでは夫フェルナンドが摂政として政務を司る。フアナが単独で統治できない場合は孫カルロスが共同でこれを統治する。フアナが統治できず、カルロスが政務を司る事の出来る歳に達していなければ、フェルナンドを再び摂政とする。Yo la reina(我、女王)」
署名するので精一杯だったイサベルは息を切らしながらフェルナンドを見据えてこう言った。
「これでいい?」
遺書を認めたイサベルは安心したお陰か容体が少し回復し、座れるまでになった。
秋が終わろうとしていた。宮殿も例外ではなく、暖炉が焚かれている。
イサベルは暖炉の前の安楽椅子に座り、宝石箱を眺めていた。
そこにフェルナンドが入ってきた。
フェルナンドは机を挟んでイサベルの向かいに腰掛けた。
イサベルは箱の中からブローチを取り出してそれをじっと眺めた。
「これは母上が私に残してくれたものよ」
「これが娘たちに受け継がれていくのだろうなぁ」
イサベルは首を横に振った。
「娘たちが使う事はないわ。
女王になるフアナもね。
あれからもう40年、私の賭けは余りにも大き過ぎたわ」
フェルナンドは、ブローチを見て涙を流しながら昔を懐かしむようにして言うイサベルの顔に死相が出ているように思えた。
フェルナンドは不意に床に膝をついた
「死ぬまで一緒だイサベル
いつも一緒だよイサベル
お前は最高の女だよ」
真正面に座るイサベルを見上げるフェルナンドの目から涙が流れた。
フェルナンドはいつ何時もカスティーリャ中の誰の前でも涙を見せた事が無かったのだ。
イサベルは両手でフェルナンドの髭が蓄えてある頬を優しく包み、ゆっくり抱き寄せた。
1504年11月26日
フェルナンドはその日も暖炉の前の椅子に座っていた。然しその横には…
「旦那様。いよいよです。」
ベアトリスが泣きそうになるのを堪えながら呼び出した。
フェルナンドが回廊を歩いてイサベルの部屋まで向かうと彼女は既に虫の息だった。彼が死んだように眠る彼女の右手を握ると、彼女は僅かに目を開いて真っ直ぐ見据えてきた。
「心配しなくてもいい。お前の望み通りにすると約束する!」
フェルナンドは小声で囁くように然ししっかりと手を握りしめながら言うと、イサベルは安心したように大きく息を吸い込んで吐き出し、再び目を閉じた。
そして遂に目を開く事はなかった。
「女王崩御」
フェルナンドの一声でその場にいた誰もが涙を拭いながら十字を切った。
奪還したばかりのナポリの事が気掛かりでナポリへ向かいたかったフェルナンドだが、イサベルの遺言を執行してそれに従った。そしてフアナ・フェリペ夫妻がカスティーリャに到着するまでの間、摂政として国を治めた。
そして遂に彼が摂政を退いてカスティーリャを去る日が来た。カブレラとチャコンを随えたフェルナンドは宮殿前の広間に進み出た。そしてチャコンが抱えた黒いクッションの台座の上に被っていた王冠を外して載せた。
イサベルが即位した時は白いドレスとマントを纏った彼女が1人でカスティーリャの王冠を被ったが、今度(フェルナンドが摂政を退いた時)は黒い軍用服とマントを纏った彼が1人でアラゴンの王冠を外したというわけだ。
かつてカスティーリャ国内の用事でずっと被り続けてきたカスティーリャ共治王の王冠(王配・王妃の王冠)はイサベルが亡くなった時点で既に彼の物ではなくなっていたのだ。
彼が儀式で自分の王冠を外したのはフアンをジローナ公に任命し立太子させた時以来である。
フェルナンドが高らかに宣言した。
「カスティーリャはフアナを女王に擁する!」
Medina del Campoの群衆がこれに応えた。
「カスティーリャ萬歳!カスティーリャ萬歳!カスティーリャ萬歳!」
長く拙い文章をお読み戴き誠にありがとうございました。
実は1話1時間半のドラマで15話×2シリーズ+9話→39話もある長編物を無理矢理14話にまとめてしまったので、描写の細かさを要する部分でやたらアッサリ尚且つ雑な描写をしてしまいました。
また、人物紹介が雑な所為で登場人物の人間関係が掴めず、読み難い箇所が多くあったと思います。
今回のイサベルの続きとして、次回はフェルナンドのその後、次々回でフアナのその後について書きたいと思います。
文章が上達するよう頑張りますので応援宜しくお願い致します。
ありがとうございました。




