序章
「ピー!来てみろ、すげえ景色だ!」
その男は、崖の先端まで駆けよると、大声で叫んだ。
「もう!待ってよ、ヴォルク。先行しすぎ!危ないわよ」
枝を掻き分け背後の森からは凄い美女が現れた。よく見ると耳が尖っている。エルフだ。
「わあ!本当ね‥」
眼前には雄大な大自然の絶景が広がっていた。右手は、見渡す限りの平地。川が流れ、大きな湖に注いでいる。左手は、所々に森が点在し、その奥には山々が、さらに奥にはかなり険しい山々が連なっている。頂上付近をワイバーンの群れが飛び交っているのが小さく見える。
「見ろよ。街の上に虹がかかってる」
男の名はヴォルク。ヴォルクが指さす彼方にスクルドの街が見え、その上に霧のような薄曇りの雲が漂い太陽の光を反射して帯のような虹を作っていた。
「私たちを祝福してくれているのかしら」
目を細め、にっこり笑いながら、超美系エルフのリリーが言う。
「1ヵ月かかっちまったな、戻るまで。やっとここまで来たかあー!」
ドカッとその場に腰を下ろし、大の字に寝転んで言う。
「転移魔法で戻ってくればすぐだったのに」
不満そうにリリーが言う。
クジュ王国の辺境都市スクルドは冒険者・ヴォルクたちのホームベースだ。
「まあ、そう言うなって。この脚のリハビリも兼ねてたんだからよ。転移が使えるようになってからは、久しく長旅なんてしてなかったんだから、たまにはいいんじゃねーか?二人きりでキャンプしながらの旅行ってのもさ」
「ふふ、そうね。確かに楽しかったわ」
ヴォルクの隣に静かに、優雅に座りながらリリーも言う。
頭の後ろに組んだ手を枕にし、遠くの空を見つめながら、ヴォルク。
「やっとここまで来たんだなあ‥」
「ええ」
「スクルドに戻ってギルドにクエストの報告をしたら、俺たちはS級だぜ。信じられるか?」
S級とは冒険者ランクのことだ。ここ100年近くS級冒険者は不在である。
「俺たちが全世界の冒険者のトップだ。事実上、世界最強なんだぜ?凄えよな」
まるで他人事のようにヴォルクは言う。
今でこそ『雷帝』などと二つ名で呼ばれるようになったヴォルクだが、10年前まではまるで冴えないC級冒険者だった。
隣に座るリリーの横顔を見上げながらヴォルクは思う。
——— 10年前のあの日、偶然リリーを拾ったあの夜、そこから全ては始まった。
ちょこちょこ校正してますm(_ _)m




