くすりの没収(自害用)
ハーイ! 久しぶり! 元気してたー? 私ミーシェルだよー!
今日は評価低いのに作者の作品でブックマークが一番多いと言う謎の現象にお応えして、また舞い戻ってきました!
皆さん私とアロイス様の応援本当にどうもありがとー!
今日の私はひと味違う。何故なら大事なミッションがあるからです。
本編最終回で永遠の眠りに就こうとしていたアロイス様ですが、このままだと私に何かあったらまた永眠するとか言い出す前に自害終了している場面が易々と思い浮かぶ為、アロイス様が寝ている間に家探しして怪しいくすりをぽいする計画的犯罪をするのです!
相変わらず紳士なアロイス様は婚約者になったって言うのに寝室は別。何故か夫婦の寝室を使っているのは私だけで、私室にある小さなベッドで今日も一人で寝んでいるんですよ! 誘拐までしといて許せん!
この日の為に昼寝はバッチリ3時間した。起きちゃった時の為の言い訳も用意して、さぁれっつごー!
「……しつれいしまーす……」
気分はアイドルの寝起きドッキリだね! 私の永遠のアイドルアロイス様の普段見れないだらしない姿を拝見! どきどき
なんだかんだでアロイス様の私室に入るの初めてだったりします。合鍵はもらってたんだけどね。
あ! 前回のマフラー無いと思ったら額に入れられて飾られてる! 3mは編んだから異様!
ああ! 捨てたと思ってたのに、卒業パーティーで着てたぼろっぼろのドレスがトルソーに飾られてる! 泥まで付いたままだよ。せめて洗濯して!
しかし時間は有限だ。とにかく薬を探さなければ。あるとしたら机の引き出しかな〜 枕元のチェストとか怪しくない? 本棚っていう線もあるかな。
思い当たるところをガサゴソ探すも見つからなかった。もしかして寝てる間も肌身離さずもってたりするのかな。
じっと寝ているアロイス様を観察する。呼吸は一定。寝ている。よし。脱がそう。
シャツのボタンをぷちんぷちん外していく。はわぁ〜ゴツゴツ骨張った鎖骨っていいですよねー
え? 腹筋が割れている……だと。これがスタント成功の秘訣か!
お腹一面にあった痣はもうすっかり完治していて安心した。思わず撫ぜ撫ぜした。硬い!
背中にも痣がないかひっくり返して確認。オッケー! ツルッツル健康だ!
しかし、薬が見つからない。あーポッケか? 脱がしたシャツが本命ですか?
ベッドにポイしたシャツを回収。胸ポケットに——あった!
「……ミーシェ。それは危ないから返してね……?」
起きてらっしゃるーーー!
「どうしたの? こんな早朝に」
そう。実は昼寝したけど寝過ごして今ちょっと早いかなーってぐらいの夜明け。最近日が登るの早くなってきたよねー。お陰で窓から差し込む朝日で色々探しやすかったよ!
「えっとーあのーお掃除! お耳のお掃除なんていかがですか?」
用意してきた言い訳その1! 綿を糊で丁寧に固めて作った手作り綿棒で耳掃除をしてうっとり忘れさせよう作戦!
「……それって膝枕……」
「はい!」
耳掃除と言ったら膝枕でしょ。異論は認めん。
靴を脱いで、枕元に正座して膝をぽんぽん叩く。
「アロイス様どうぞ?」
少々固まった後、のそのそ半裸のけしからん格好のアロイス様が私の膝にそっと頭をのせた。
ほっぺが赤いですよー 耳と首もー かわうぃーですね!
自分のポケットから特製綿棒を取り出して耳をこしょこしょする。
あ、耳垢が一欠片も確認できない! この世界には耳垢すら存在しないのか。そういえば自分でも耳掃除したことないな。ジーザス!
「きれいですね〜」
でも、せっかく作ったんで、空いてる手も使って前世で聞き齧った耳つぼを押すように指圧もとい綿棒圧する。
「気持ちいいですか〜?」
いつかの手のひらマッサージのお返しになってるといいな。
「……この上なく」
よかったー
おまけで頭を撫ぜ撫ぜして反対側も向けて貰う。
こしょこしょ ぎゅっぎゅー
「このまま二度寝してもいいんですよー」
囁くように告げる。寝てくれれば無事脱出できるっていう寸法です。
「……眠るなんて勿体無いことできないよ……」
目は瞑ってるけれど、アロイス様は確かに真っ赤で眠りそうもない。
こうなったら言い訳その2だ。結局少しも汚れなかった綿棒を紙に包んでポケットに戻して
耳元で囁くようにして言う。
「アロイス様。私思ったんです。もう婚約者になったのだから、少しぐらい先に進みたいなって」
アロイス様は目を見開いた。顔がと言うか上半身全部赤くなっている。下手したら全身赤いかも。
「私と……しましょ?」
「貸し借り!」
婚約者=カレカノと定義すれば物の貸し借り! という訳で。
「私アロイス様の(この怪しい瓶の入った)シャツ! もらっていきますね!!
私の物はこの部屋にあるみたいだし。これで貸し借りの仲ですね! 嬉しい! 最高! それじゃあ。そう言うことで!」
逃げ出そうとしたら捕まった。
「……ミーシェ。ここまで僕を煽って帰るの……?」
ああ。イケメンの色気漂う物憂げな顔に目が離せないっ!
しかし、言わなければならない事がある。
「この瓶の中身、毒薬ですよね?
私。アロイス様にどうしても安易に命を投げ出して欲しくないんです。
お願い。アロイス様。私の為に、もう永眠するなんて考えないで……?」
「ミーシェ……僕は……無理だ……」
「貴女がいなくなってしまったら、息をしたくない。
それでも、死んで欲しくないっていう貴女の希望を叶える為には、ずっと意識を失くして眠り続けるくらいしか出来ないんだ。ごめん。ミーシェル……」
アロイス様がミーシェルって言った! 本名覚えていた衝撃で言葉に詰まる。
……まぁ。いっか。
要は私が長生きすればいいんだし。この世界の平均寿命も女性の方が長いし。私とアロイス様同い年だし。
「仕方ないですね。それじゃあ、私が生きてる限り死んだら駄目ですよ?」
「うん」
「言っときますけど、私図太いんで絶対長生きしますからね!」
「うん」
「平均寿命なんてググッと飛び越えて、百歳目指す勢いですからね! 絶対ついてきて下さいよ?」
「うん。頑張る」
泣き笑いみたいな表情で彼が幸せそうに笑うから。もうそれでいいかなって思ってしまったんだ。
「でも、私だってアロイス様の物が欲しいです! シャツはもらっていきますから!」
今度こそ私は逃げ出した! どさくさに紛れて薬も没収した! ミッションコンプリート!
その後、アロイス様は薬が危ないからと言ってまた四六時中一緒に過ごしてくれるようになった。
瓶の中身は既に害のない色水に差し換え済みだけどね。
私が生きている限り絶対教えてあげないんだ。だってずっと一緒にいたいから。
これからも、ずっと一緒。
お粗末様でした!有限の時間を共有して下さった方々へお礼の気持ちをこめて!




