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先読みしていた姪(仮題)  作者:
その他いろいろ
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12/13

12.

ここから先は今までの裏側的な話になります。

例のごとくご都合主義を貫かせていただきます!


第二王子ルーカスに関する醜聞は王家の尽力により改善された。


~*~*~*


第二王子の婚約破棄騒動はここ最近周辺国で頻繁に起こっているとある出来事を王子たち自らが演じ、我が国の者達がどのような反応を示すのか知りたかったという。

ただ、あまりの迫真の演技に()()()()()()()によって事実であるかのごとく話が広まってしまった。


そのことに自分たちの浅はかな行いが混乱を招いたと第二王子たちは自ら謹慎をしていた。

第二王子たちがあまりに自分を責めていたため、国王は名誉挽回のためにウェス国にて『人工魔石』のノウハウを取得してくることを命じた。

魔石研究は第二王子にとっては生涯続けたいと願っていた研究であった。


2年間の留学期間を終えた第二王子は研究成果を国に献上し、迷惑をかけたことの責任を取り臣下に下ることを自ら国王に願い出た。


国王は親としては王籍に籍を残したままにしたかったが、国王として第二王子の願いを聞き入れた。


その条件として、『婚約破棄騒動』にて巻き込んでしまったチョッチョ家に貢献することを示した。

チョッチョ家当主は恐れ多いと固辞したが、あの婚約破棄騒動の過程で秘かに思いを通わせていた第二王子とご令嬢の熱意に負け、当主は国王からの『お願い』を聞くことになった。


もっとも、第二王子と令嬢の思いは常に『魔石・人工魔石』が間に入って成り立つという不思議な関係であったがそれに気づいたのはほんの一握りの人間だけである。


なお、ローズ=ヴォルタの婚約者辞退の件は生誕祭の数日前から水面下で進められていたらしいとだけ記しておく。


なぜ、2年前……王妃の生誕祭の直後にそのことを公表しなかったのかという疑問も上がった。

これについて王家は『闇の魔女』が関与していたことを公表。

事実、()()()()()()()()()()()()()()()()()()は『闇の魔女』に深く関わる者たちだった。

『闇の魔女』に関わった者たちは全員が捕縛対象となり、今なお取り調べを受けている。


話題の中心人物である第二王子をウェス国に行かせている間に、『闇の魔女』との関係を徹底的に洗い出し、第二王子の成人祝いの席を利用したことも公表された。



~*~*~*


国民たちは半信半疑で王家の公表を聞き入れたが、それも数年後には『そんなこともあったね』と笑い話と化すであろう。


なぜなら、チョッチョ家に婿入りしたルーカスはウェス国で得たノウハウを駆使してウェス国に負けない『人工魔石』の精製に成功するからである。

だが、そのことを知る者はまだ今この段階では少ないのだから。


***


部屋の中央に置かれた円テーブルの上には王家が公表したことが書かれた新聞などが所狭しと置かれている。

円テーブルを囲うように座っているのは数名の男女。


「......まあこんなところか」

「それにしても、内容が雑すぎない?これなんて未来予想まで書いてあるわ」

「粗があった方がいいのよ。きっちりしすぎると逆に怪しまれるわ」

「結果よければ全て良し!私は名を上げ、弟は大好きな魔石研究に没頭できる身分を手に入れた」

「そして、国は『闇の魔女』を壊滅への道へと導いている」


カーテンを閉め切った狭い部屋。

部屋を灯すのは淡い光がゆらゆらと揺れている光の魔力を閉じ込めた魔具。


彼らの手元にはいくつかの書類がまとめられている。


「そういえば、親父さん表舞台に復帰するんだって?」

ファウスト=スカイ=フィーニの声にその隣に座っていたアリアンナ=リア=ヴォルタがため息をつきながら頷いた。

「ええ、来月正式にヴォルタ家の当主に就任よ。叔父が間接的に『闇の魔女』と関わっていたことと、王令で父と母が動いていたことを公にしたからね。叔父は領地で蟄居予定よ」

「お祖父様たちは?」

アリアンナの隣に座っている女性クラリーチェ=アスマンが面白そうな笑みを浮かべている。

「のんびり田舎暮らしを堪能するそうよ。叔父たちを監視しながら」

「今と変わらないのでは?」

「面倒くさい領主の仕事からは解放されるわ」

「なるほどね、引き継ぎはおじ様が?」

「いいえ、クリスが行っているわ。実質はお父様というよりクリスが当主ね」

「まあ、クリストファー様なら安心ですわね。そうそう、若いお嬢さんたちがクリストファー様のことを狙っているそうです」

クラリーチェの隣に座っていたのはガーネット=チョッチョ。

彼女はドレスに作った隠しポケットから小さなメモ帳を取り出すと次々と令嬢の名前を挙げていった。

その令嬢の名前にアリアンナはさらにうんざりとした表情を浮かべた。

「すでに縁談の申し込みが来ているけど、クリスは見向きもしていないわ」

「あら、すでにお相手が?」

「さあ、私は両親やクリスとの連絡方法が手紙だけだったから詳しいことはわからないけど……あれは本命がいるわね」

顎に手を当ててにやりと笑みを浮かべるアリアンナ。

「ヒルダ様はなんと?」

「クリスの好きにすればいいと」

「父君は?」

「クリスに関しては自由にしろと」

うんざりとした声を出すアリアンナに、クラリーチェとガーネットは顔を見合わせ小さな笑みを浮かべた。


「で、あなたのことはいつ報告しますの?」

「お父様が爵位を継いでからと考えているけど……お母様にはバレたみたい」

「まあ、さすがヒルダ様」

ぽんと両手を叩いて楽しそうな声を上げるクラリーチェ。

「もう、お母様のあのワクワクした表情が……いつ、お父様にもバレるかと……」

「だから、最近は魔法省で寝泊まりしていたのか」

クラリーチェとガーネットとは違い、いたわるような声をかけるファウストにアリアンナは小さな笑みをこぼした。

「それは後処理が終わっていないからよ」

「それも昨日終わったのでしょ?」

「そうなのよ。スカイがあちこちに手をまわしていたからあっという間に……時間が稼げると思ったのに」

「俺は面倒事は早く済ませたいんだよ」

「……でも~」

「大丈夫。コンラート殿の取り扱い説明書を預かってきたから」

「へ?」

足元に置いてあったカバンから1冊のノートがテーブルの上に置かれた。

その表紙にはでかでかと『コンラート=リナルド=ヴォルタの取り扱い方法』と書かれていた。

「これ、クリスの字」

「うん、クリストファー君がお祝いにって直接届けてくれたんだよ」

「…!?ってことは……」

「ああ、クリストファー君は知っているというか、知られた」

「な!?」

「クリストファー君が知っちゃったのは俺のイトコのせいなんだよね」

「イトコ?」

「ついでにクリストファー君の本命」

「え!?スカイのイトコってたしか8歳……」

「違う違う。そっちじゃなくて、2年前に夫に先立たれた方のイトコ」

「……その方って年上……」

「年上と言ってもクリス君より上ってだけで俺と同じ年だよ。貴族内では許容範囲内の年の差だ。まあ、イトコ殿は生涯旦那様を……と言っていたけど、最近は絆され始めているみたいだね」

「時間の問題?」

「たぶん3年以内にケリがつく」

「その根拠は」

「子供たちが『クリスおにいちゃんがパパになってくれたらいいのに』と毎日言っているそうだ」

「子供から落としたのか。子供ってたしか」

「5歳と3歳。ちなみに上が男で下が女」

「元嫁ぎ先の家は?」

「旦那が亡くなった時に着の身着のまま母子共々追い出されているから問題ない。イトコ殿が嫁いだからフィーニ家と取引ができていたということに気付いた頃にはきっと破産しているはずだ」

くすくすと笑うファウストにアリアンナは小さくため息をついた。

「そう、あとはクリス次第ってことね」

「あれ?反対じゃないの?」

「私が親に相談もなく伴侶にあなたを選んで結婚したのに、クリスに政略結婚は進められないわよ」

「リラが選んだんじゃなくて俺が囲い込んで逃げられなくしたんだよ」

「でも最終的にスカイと共に生きることを決めたのは私。だから『私があなたを選んだ』で間違いはないわ」

真面目な顔で惚気始めたアリアンナとファウストに他の者たちは生ぬるい視線を送ることしかできなかった。


「まあ、ファウストとアリアンナの件は二人でよく相談して打ち明けて殴られて来い」

「殴られること前提なんだな」

「逆にコンラート殿に殴られない自信はあるのか?」

「まったくない!」

「威張って言うことかよ」

胸を反らして堂々と言い張ったファウストに呆れたように呟いたのはクラウディオ=ソル=リーゾ。

「まあ、あの娘大好き親父から掻っ攫うんだから仕方ないか。10年もの間、接近・接触禁止令が出ていたから今までの反動が怖いな」

「孫さえ与えればあっという間に大人しくなると私は思いますけどね」

「確かに。アリアンナそっくりだったら文句なしに可愛がるだろうね」

「そうそう、べたべたに甘やかしてヒルダ様とアリアンナに怒られるのよね」

楽しそうに未来を語るクラウディオとクラリーチェ。

その会話をうんうん楽しそうに聞いているガーネット。


ふと、ガーネットがこそこそと何やら話しているファウストとアリアンナをみて首を傾げた。


「あの~」

「ガーネット、どうしたの?」

「前から疑問に思っていたのですが、アリアンナ様はファウスト様を『スカイ』、ファウスト様はアリアンナ様を『リラ』とミドルネームで呼ぶのはなぜですの?ミドルネームはごく限られた者にしか与えられないもので一般的には知られていない隠し名とも言われていますよね?」

「えっとそれは……」

言いよどむアリアンナと決して話そうとはしないファウスト。

メモ帳を片手に瞳を輝かせながら尋ねるガーネットにアリアンナの隣に座っているクラリーチェは満面の笑みを浮かべて二人の代わりに話し始めた。

「ふふ、それはね~」

「ちょっと、クラリーチェ!?」

「別に隠す必要はないんじゃない?知っている人は知っていることなんだし」

「……」

「あのね、二人の出会いは学園の予備科時代で……」


クラリーチェから話を聞きながらガーネットはもの凄い勢いでメモを認めていく。

最後まで話を聞き終えたガーネットはメモを読み直しながら

「なんだか物語を読んでいるようです」

「そうでしょ?私も二人から聞き出した時はそう思いましたわ!」

「別に名前を偽るときにミドルネームを使っただけじゃない。お父様のように公には知られていなかったからお忍びの時に使っていただけってことよ」

顔を真っ赤にさせながら少し冷めた紅茶を口に視線をそらすアリアンナ。

「アリアンナ様がミドルネームを得たのはいつなんです?」

「魔術師試験に合格した時だから9歳かしら? 最年少合格者ということで先代国王陛下がライラ様のミドルネームを与えるっておっしゃったのよ」

「ライラ様ってこの予言書もどきの小説を書かれた?」

「小説は完全に趣味だったそうよ。ライラ様の書かれた物語は本になっていない作品も別邸の隠し部屋に保管されているわ。ジャンルは幅広いわよ。恋愛小説から冒険もの、ミステリー作品に同性同士の恋愛ものまであったわ。おじい様が『これらは封印じゃ!』って隠し部屋を異空間にしちゃったけどね」

「部屋を丸ごと異空間にしたのか!?」

「魔道具を使ってね。今のところ、おじい様か私しか入れなくしちゃったの」

「じゃあ、この予言書もどきは?」

「普通の日記帳に書かれていたからおじい様が書斎に保管していたのよ。それをローズが見つけて……ってわけ」

「それが婚約破棄騒動(?)につながったってわけね」

「あの子、小さい頃から『私はこの世界のヒロインなの!いつか王子様と結ばれるの!』とか言っていたからね。ライラ様の小説を読んで現実と幻想が入り混じっちゃったのかしら。『この世界は私のためにあるのよ。私の望み通りになるの!』と言っているからその手の病院に放り込んだわ」

「退院の見込みは?」

「たぶん一生ないと思うわ。最近では誰かが迎えに来てくれると信じて淑女教育を真面目に受けているそうよ」

「誰かって誰だ?」

「さあ、先生からの情報では騎士団に所属しているらしいけど……名前がわからないからそのまま放置しているわ」

「退院させる気、全然ないじゃない」

「あの子が幸せだって言っているんだからいいのよ」


「そういえば、ファウストはいつミドルネームを得たんだ?」

「予備科に放り込まれる前だったから8歳くらいだったかな?ファーニ領内で暴れていた国際手配されていた盗賊団を壊滅させたからと聞いている」

「自分の事なのに覚えてないの?」

「あー、優秀な兄たちと比べられてむしゃくしゃして森の中で暴れただけだからな。正直、盗賊団を壊滅させたという実感がないんだ」

「だが、その功績のおかげで三男でありながらも跡取りなんだろ?それに予備科に1桁年齢で入ったのはファウストとアリアンナくらいだぞ。通常は12~3歳だからな!学園の予備科というところは!」

「試験さえ受かれば入れるっておじい様が力説していたので受けたら受かっちゃっただけです」

「俺の場合は実技の方で受かったようなものですね。座学は苦手ですから。兄たちは予備科には通えませんでしたが、机上の上では優秀でしたよ。実技が伴っていないだけで。それに、今はそれぞれの婿入り先で上手くやっているみたいですから」

すっかり冷めてしまったお茶をぐいっと飲み干すとファウストは部屋の外へとつながる扉を開けた。


「そろそろ職務に戻ります。殿下もお早目にお戻りください」

「はいはい、じゃあ私たちは先に戻る」

「私はもう少しアリアンナとガーネットとお茶会をしておりますわ。場所を変えて」

「そうだな。じゃあ、この部屋を元に戻しておいてくれ」

「承知いたしました。殿下」

アリアンナは深々と頭を下げ、小さく指をパチンと鳴らした。

すると、部屋のカーテンはすべて開き、テーブルの上に置かれた新聞やティーカップは一瞬で消えた。

そして、クラウディオの手には分厚い書類の束があった。

「これは?」

「『闇の魔女』に関する最終報告書です」

「思ったより少ないな」

「それはほんの一部です。今頃殿下の執務室の机の上だけではなく床にも大量に……」

くすくす笑うアリアンナを尻目にクラウディオとファウストは早々に執務室に向かった。

そして、執務室のドアを開け、部屋のありさまを見て絶叫したとかしないとか……



女三人はそのまま庭園にある東屋に移動し、日が暮れるまでおしゃべりを楽しんだのだった。



「なあ、ファウスト」

大量の書類にサインをしながらクラウディオは以前、母親である王妃から聞いた話を思い出していた。

「ローズ嬢の『誰か』ってお前の事じゃないか?」

「は?なんでです!?」

驚きのあまり手に持っていた書類を落としそうになったファウスト。

「いや、以前母から聞いたことをふと思い出したんだよ。『ローズ嬢のファウストを見る目が狩人だった』って」

「……」

「それに、パーティーでエスコートを頼まれただろう?」

「本来ならリラのエスコートは俺の役なのに、その役をクレート=メリーニに譲る羽目になったあの時の事ですか?リラの親族だからということでシブシブイヤイヤ了承したのですが……王妃様はなんと?」

「別にとくには何も言っていなかったかな。ただ、早めに公表した方がいいのは確かだな。そろそろ目立ってくる頃だろ?今は魔術師のローブで隠せているが」

「……お気づきでしたか」

「時々、腹のあたりを撫でていたからな」

「リラと相談して早急に」

「治癒魔術士を手配しておいてやる」

「…………………………ありがとうございます」



数日後、満身創痍のファウスト=スカイ=ファーニの姿が騎士団内にあったそうだ。



ファウストとアリアンナのあれこれはこの話には盛り込む予定はありません。

クリスの話もしかり。

希望リクエストがあれば、小話または番外編でと考えておりますが……読みたい方いるのかな?


あと数話で終わる予定です。


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