説得
間が空いてしまい、すみません。
私の返答に、伯父さんはどうやら安心したらしかった。
「そうかー」
そう言って、ニコニコと笑っている。伯父さんがニコニコしてるのは嬉しいけど、私の心は複雑だ。
ーいやいやいや、私としては何かあってほしいんだよーーー!
けれど、伯父さんは私の内心の叫びに気づかず(そりゃ、エスパーじゃなきゃ気づかないけど)、さらに話を進めていく。ニコニコしていた表情から一転して真剣な表情で。
「それを聞いて安心した。アルフレドからお前を任されてるからな。お前の身に何かあったらアルフレドに申し訳がたたん…」
その伯父さんの真剣な表情を見て、私の心は更に複雑になった。伯父さんは、私の身の心配だけではなく、私や父さんへの罪悪感とか使命感とか色々な気持ちを抱えているようだった。なのに、私ったら呑気に『レイさんに口説かれたい』だなんて考えてたよー。ごめんね、伯父さん。
更に『ごめんね』なのは、私の身に既にとんでもない事が起こってしまったからなんだよねー。『拉致監禁された上に、奴隷として売られそうになりました』なんて言ったら、伯父さん真っ青になっちゃうよ。伯父さんの心が心配になる。大丈夫かな。やっぱりこの話は伯父さんと伯母さんには話さないでおこうかな。
「ああ、すまんな」
「ううん、大丈夫」
しばらく沈黙していた伯父さんが、その後ぽつりと謝ってきた。私には何を謝ってるのかよく分からなかったけど、『大丈夫』と答えておいた。
ー父さんの話題を出して申し訳なかったって事なのかな?それとも、湿っぽくなっちゃったから?
どちらにしても、大丈夫。いや、本当は少し大丈夫じゃないんだけど、今は無理やり気力を湧き立たせる。だって、まだ信じてるから。父さんがまだどこかで生きてるって。
「エミリア…」
「そう、大丈夫だよ。だって、私、信じてるから。父さんがまだ生きてるって」
「「エミリア…」」
伯父さんと伯母さんの顔を見ると、二人共泣きそうな顔をしていた。そんな二人を安心させたくて、私は無理やり笑顔を作った。そして、言った。
「だからね、私、探しに行こうと思うの」
「えっ…?」
「はっ…?」
二人は私の言葉を聞いて、キョトンとした。
「うん。突然こんな事を言われて驚くのは無理ないと思う。けど、私は本気だよ。私、父さんを探しに行く!」
「はぁーーーー!?」
「えっ!本気で言ってるのかい?」
私の突然の宣言に、二人は目を丸くして驚いている。まあ、突然こんな事を言われるなんて、思ってもみなかったでしょうからね。驚くのは、無理ないね。
「伯母さん、さっきも言ったじゃない。私は本気だよ」
「で、でも、そんなの無茶だよ」
「そ、そうだとも」
二人がそう言い出すのは、想定内だ。『探しに行く』なんて、無謀だと思うよね。私も他の人がそう言ったのなら、『止めておけ』って引き留めただろう。
「うん、無茶だよね。私もそう思う」
「な、なら!」
「でも、もう決めたんだ。無茶でも無謀でも、探しに行くって。諦めたくないって」
伯父さんが私を止めようとしたけれど、私はそれを遮って意見を言った。無作法でごめんね。でも、伯父さんと伯母さんの、私を心配する声を聞くと、辛くなるからさ。大目に見てよ。
「エミリア…。本気なんだね?」
「うん」
伯母さんに頷いてみせると、今度は伯父さんが聞いてきた。
「船はどうするつもりなんだ?」
「船は、レイさんにお願いするつもりなの。レイさん、船乗りさんなんだ。だから、レイさんのいる船に乗せて貰えるようにお願いするつもり」
「金は?」
「お金は、貯金してあるのを持って行く。後は、船で仕事をするから何とかなるよ」
「甘いな」
ーうう、それを言われると辛い。
自分でも甘くて無謀で杜撰な計画だって分かってる。けれど、行くしかない。じゃないと、絶対、私、後悔する。ただ待ってるだけなんて、辛すぎるんだ。あの家で一人で過ごすなんて、寂しすぎるんだ。
「甘いのは、分かってる。けど!」
「危ない事がたくさんあるぞ」
「…うん」
「辛い事だって、たくさんあるだろう」
「…うん」
「それでも、行くのか?」
「うん。今行かないと、私、絶対に後悔する」
「もう少し待ってからじゃダメなのか?」
「うん。多分、何年も何年も待ってからじゃ、探しに行こうっていう気力がわかないと思う。何年も何年も待ってるうちに、私の心が枯れちゃうんじゃないかと思うの。だから、行くなら今なの!お願い!伯父さん、伯母さん。私が父さんを探しに行く事を許して!!」




