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四面楚歌

高い所から落ちた私だけど、そこは猫獣人の本領発揮で、私はくるくる回転して華麗なる着地を決めた。両手を挙げて、ポーズを決める。


ーうん、10.0!……って、それどころじゃなかったぁぁぁぁぁ!!!


ここは私の敵と、敵の敵が入り乱れる戦場そして船上の真っ只中!


ーそこの貴方!敵の敵は味方って言うけれど、私の味方になってくれませんかね?どうか私を助けて下さいぃーーー!!


心の中でそう訴えてみるけど、当然私の想いは届かない。切ない。

それにしても、今の私のおかれてる状況って、絶体絶命の四面楚歌じゃない?だけど、せめてもの救いは、私のいる所が船の端っこって事だ。ここなら、少し走って行けば海まで飛び込める。無事、陸まで泳ぎつけるかは分からないけど、もうこれしか逃げる方法がない。もともと泳いで逃げるつもりでいたしね。


「エミリアー!!」

「今、行くからー」


ミレイアさんとアリシアさんが私の元に来てくれようとしてる。


ーありがとうございます。お2人共。


けど、それは危険だよ。だから、私が船から飛び降りる時に受け止めて貰えたら嬉しいッス。

声に出してその事を伝えたいけど、それだと敵にもバレちゃうから、出来ない。仕方がないから、私はミレイアさんにアイコンタクトをした。視線を合わせ、海を見て、また視線を合わせて頷く。


ーう〜ん。これで上手く通じてると良いんだけど。でも、ミレイアさんは夜目が効かないから、もしかしたら通じてないかも。


船上には光の魔石の明かりがあるし、空には月が煌々と輝いている。だから、真っ暗って訳じゃないけど、それでも心配だ。けれど、通じてなかったら、なかったでどうにかするしかない!


私は腹をくくって、海の方に振り向き、走った。そして、ジャーンプ!


「ニャアアアアアアっ!!!」


ー痛い痛い痛い!!!


ジャンプした瞬間、私は髪の毛を思いっきり引っ張られた。ぐいっと。

そして、そのまま甲板の床に叩きつけられる。


「キャっ!」


床に当たったところは痛いし、腕や頬は絶対擦りむいた。じんじんと痛む。

でも、今は痛いよりも怖い。

床に叩きつけられても、私の髪を引っ張った誰かは私の髪を放さなかった。ぐいっと髪を持ち上げられる。


「ニャアアアア!!!」


髪を持ち上げられたから、私の顔も持ち上がった。その耳元で、誰かがそっと私に囁いた。


「逃がしませんよ」


その声を聞いて、私は私の髪を引っ張っているのが誰だか分かった。あの赤毛のどS変態だ。


ーひぃぃぃぃぃ!!!!!


私は何とか赤毛の男から逃れようと、部分形態変化させていた手を赤毛の男に向かって振り上げた。でも、かすりもしなかった。ヤバい。


「いけませんねぇ。こんな事をして。お仕置きが必要ですね」


赤毛の男は私の髪を強く引っ張ると、そう言った。

お仕置きって何されるの?怖いよ。


「「エミリアーー!!」」


ミレイアさんとアリシアさんがこっちに来ようとしているのが、見えた。けれど、矢が射られているから、なかなか船に近付く事が出来ないようだ。


「…ダメ。来ないで」


本当の本当は、超本音を言うなら助けてほしい。怖いし痛いし怖いから。

助けて助けて助けて……。でも。


「来ちゃダメーーー!!!」


私は2人に向かって叫んだ。怖いし痛いし助けてほしいけど、それで2人がケガをしたりまた捕まったりしたらイヤだ!そんな事になったら、私は絶対に助けを求めた事を後悔するだろう。自分を許せなくなるだろう。

それは絶対にイヤなんだ。


「へぇ。こんな状況でも2人の無事を願えるんですね。それがいつまで続くのか興味深い。ですが、多分その願いは長くは続かない。きっと、すぐにこう思いますよ。『何であの2人は助かったのに、自分はこんな目にあっているのか』って。『助かった2人の事が許せない』ってね!」


赤毛の男はそう言うと、私の背中を踏んだ。力を込めて。


「ああああぁぁ!!!」

「フフフ。もう1回いきますよ」


赤毛の男の宣言に、私の心は恐怖した。そして、ぎゅっと目を瞑って構えた。


「ギャアっ!!」


けど、2回目はなかった。それに、私の髪を掴んでいた手も離れていた。

私は何が起きたのか分からなくて、身体を起こして赤毛の男を見た。すると、赤毛の男の手にナイフが刺さっていた。

赤毛の男は刺さっているナイフを抜き取ると、床に投げ捨てて叫んだ。


「誰だ!誰がやりやがったぁ!!」


ーひぃぃぃぃぃ!さっきまでの口調も怖かったけど、この口調も怖いよー。

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