第9話 「襲撃」
食事を終えた後のテーブルで少女と迎え合わせに座りお茶を飲みながら会話している。
「思うに、君のボーネを攻撃したのは俺を焼こうとしたのとは違うと思う。」
机の上にはティーカップ以外に人骨が載っていた、俺はそれを手に取って調べてテーブルの上に戻してからそう言った。
「それは何を根拠に?。」
口をつけていたティーカップをソーサーに戻してテーブルに戻す仕草は子供には見えない。
「範囲が狭すぎるだろう?。おそらく別の奴がいる、そして近くまで来ているかもしれない。」
そっと椅子を引いて立ち上がりながら床に置いておいた背嚢を背負いなおす。
「その理由は?外にはボーンやミントや美子がいて警戒してるわ。」
「恐らく相手は複数、そこそこの知能があり集団行動も取れる~俺は地下でオークも見た彼らかもしれない。」
テーブルに立てかけてあったライフルを取りコッキングハンドルを引く、モードはバーストにさり気なく立ち上がり少女に近づき座っている彼女を抱き上げてテーブルの上に立たせる。ボーラは給仕の後片付のためにここには居ないが物音がしない・・・。
「高床が仇になったかな?。」
冷静だなこの子、全く本当の歳いくつだよw。床からより遠い机の上に移動させたのは床下からの攻撃を考えてだ、気配を感じるとかではなくあくまでも予防措置だったんだが。
この時バンガローの外の闇の中ではオークではなく、ゴブリンの集団が柵の外を取り囲み
ボーンや美子達は既に排除されていた、ミントはバンガローの屋根に移動して屋根と同化しているんだが中の俺達はそれを知らなかった。
「再召喚にかかる時間は?。」
「一体あたり?30秒からだけど。」
「なら、ボーラから初めて。」
彼女が今まで座っていた椅子の上に上がる、お子様サイズで俺がさっきまで座っていたのよりも座面が床よりも高い。
「なぜ?ボーンの方が近接戦闘には向いてるわ。」
「外で戦ってるとしたら、ヘイト付いた状態で出てくることになるぞ。」
「あら、意外と詳しいじゃない。」
「まぁ、それぐらいはゲーマーとして常識で知ってるさ。」
彼女の召喚詠唱が引き金になったのか途端に殺気が足元から立ち上がる。
次の瞬間、一気に床から槍が生える。
椅子の上の俺のところまでは届いていないがちょっと穂先がブーツの底にあたってる。
床一面がトゲトゲじゃんと思った時には床に向けていたライフルの引金を引いていた。
獣のような唸り声が聞こえる中、床に7.62ミリの空薬莢が落ちていくーもちろん穴も開いていく・・・。
「底が抜けるわよ?。」
「なんとかならないかな?。」
少女が横でブツブツ呟くと何か黒いのが床を覆っていく、あれなんか見たことがあるような?。
「黒いとこ撃っちゃだめよ、反撃されるから死ぬわよ?。」
「もしかして・・・青いのと同類?。」
そう言った途端、天井の一部からその青いのが垂れてきて少女の胴体を包み込む、ついでに俺も腰回りをがっちり抑えられた。
「カカオに下は任せて上に上がりましょう。」
言うや否や屋根に引き上げられる、その際に少女はスライムに指示を出していた。
「カカオは床はもういいわよ、入ってくる敵を飲み込んで時間を稼いで。」
「ミントは近くの木に手を伸ばして脱出路確保する。」
「弓に狙い撃ちされないか?。」
「ミントに矢は効かないと思うけど?。」
いや、俺には効くと思うけどと言うまもなく屋根の上に引き上げられていた。
すぐさま伏せるー熱源探知なんて技が在るかもしれないし、なんたってファンタジーな世界だし。
背嚢の中にしまってたナイトビジョンスコープを取り出して周囲を見回す。
弓兵の配置とその背後にいるはずの指揮官を探しだすことが目的だ、頭を潰すーこういう組織的な敵には効くはずだーいたあいつだろう。
「周囲に弓兵が10人か、あと離れたところに11人、うち一体は他よりでかいし装飾が派手だからおそらく指揮官だろう。」
そういいながら、ライフルにスコープを装着し伏せたまま射撃姿勢をとる。
風の向きを計り狙いをすまして、ゆっくり引き金を絞る。
「ターーン!。」
「見つけたのか?。」
「ああ、頭をとばしたから死んだと思うが、蘇生魔法なんてあるとやっかいかもな。」
続けて銃声があがる、その数10回。弓が届かないと思われる距離を空けていたので攻撃されるとは思わなかったのだろうか?。
「弓は死んでないから、攻撃される可能性はあるが、下は骨さんたちで片づけられるかな?。」
すでに彼女は骸骨兵士のボーンやゾンビを召喚していたようなので任せる。
骸骨兵士が近接職のゴブリン戦士を迎え討ってるのが、ボーラと呼ばれた骸骨兵士が戸惑うゴブリンの弓兵を狙い撃ってるのが屋根から見える、屋根のからミントによって地上に下されながら少女がベネットが聞いてくる。
「残弾大丈夫?自動でリロードしないでしょ?。」
「詳しいね、確かに限りがあるから慎重に使うけれど、けちってそれで死なないようにしないとね。」
バンガローの下にはゴブリンの死体が何体も並んでいる、中には銃撃で死んだ者も混ざってる。
それ以外の死体の傍に俺はベネットとともにいた。
どうやら、ベネットもなぜ問答無用で、襲ってきたのかを聞きたいと考えていたようで
捕虜にして尋問したかったようではあるが・・・。
「溶けかけだけど・・・意識があるから聞いてみる?。」
「いや、これ無理じゃね?意識というかこれ単なる筋肉の反射現象だし。」
足下には身体の殆どが溶けかけて、わずかに首から上が残ってるゴブリンの残骸が転がっている。
青い体のミントと違い黒い体のカカオの体内の酸の濃度はかなり濃いようで、バンガローに突入した戦士組はほとんど溶けてしまったー武器防具込みで。
「何をやったのか知らないが、かなり恨みを買ったようだな?。」
周りに生きている敵はいないようだった、一気に殲滅してしまったようだ。
「何もやってないんだけどなぁ・・・もしかしたら、不法占拠とか伐採禁止区画とか密漁にあたるんだろうか・・・?。」
まぁ、いきなり気が付いたら目の前に海と空と浜辺とくれば無人島かな?と思うよなぁ。
「彼らにとってここが神聖な場所とかか?、なくはないだろうけどそれにしてもいきなりこの規模で攻撃を掛けてくるのがこの世界の常識だとするとかなり好戦的な世界だな。」
そうだよな俺は倉庫の中だったけれど、屋根がない屋外に出ててなんとかできる力があれば、なくてもサバイバルの基本は拠点=家を作らないとな。
そうやって二人で話をしている間にもボーンやボーラに美子を使って襲撃者の遺体をバンガローの下に集めている。さらに、取りこぼしがないかの確認を兼ねてカカオとミントが周辺を調べながらライフル弾の弾頭の処理をお願いした、見つけたら体内に取り込んで溶かしてもらう。俺が使った物はこの世界ではあってはならないもの・・・だと思うからね。
「ここは燃やした方がいいだろうな。」
バンガローを挟んで海側を背にして俺は彼女の召喚したモンスターの働きを見ていた。
「簡単に言うのね、床で寝てもいいのよ?。」
「えっと、その床もう抜け落ちたからねっていうか、こいつら火矢で燃やそうとしてたでしょ?。」
「ええでもミントが防いだわー後続部隊がいるかもしれないと?。」
「可能性はある、俺が知ってるーもちろんゲームや小説や映画の中のやつだがーゴブリンはここまで組織的に攻撃を仕掛けてこないはず、ということは。」
「より上位な種族がいることになる?。」
「そういうこと、報告に戻ってこないと確認をしにくる可能性が高い。」
「こいつらが先発隊だとしたら後続はより強力なわけね、それでバンガローを燃やすとそいつらが来ないと?。」
「来ないかもしれないし、来るかもしれないーでも遅らせることはできる。」
「確かに今の戦力じゃあ迎え撃てないかもしれないわね、じゃあ燃やして逃げましょうか。」
ボーン達が一通り片付けを済まし、カカオとミントが周辺の掃除を済ませて戻ったところで召喚を解除してもらう。魔力を感知して追ってこられるかもしれないからとベネッタに忠告した形になる。
「行こうか?あてなんてないだろうけど。」
そう言って彼女は歩き出す海辺のほうに向かって、彼女が浜辺に沿って歩いていく。
その方向は俺が来た方向とは逆の方向のようだ。
「やれやれ、切り替えが早いな・・・な火持ってるか?。」
彼女が何かを放ってよこした、右手で受け取るーこれは火壺?。
ゴブリンの持ち物か、フタを開けるとまだ火が残っている。
バンガローの周辺に火を放つ、油欲しいよなぁ・・・と思ってたら台所付近からさらなる火が上がる。そういえばさっきの肉焼いてあったもんな・・・
バンガローの全体に火が回ったのを確認して、ベネットの後を追う砂浜に残る足跡を木の葉っぱを使って消しながら不自然にならないように気をつけて。
「そっちは有るのか、行くあてってやつ。」
「ない!でもお前が来たのとは逆方向だしボーネが襲われた方向でもないから、こちらがましだと考えるが?。」
「なるほど、でもあまり波打ち際に近寄るなよ?足跡を消すのはいいが海の中から襲われるかもしれないからな。」
「うん、気を付けるー泳げるかどうかまだ試してないし、水着は召喚してないから。」
そこですか?




