第10話 「朝は来る」
夜空の星だけが足元っを照らす明かりの中、二人は黙々と歩いた魔力感知を恐れて召喚したスライムやスケルトンは召喚を解除していた。
どれ位歩いたか砂浜がやがてなくなり、海面に出てる岩の上を歩くこと約30分ついにそのまま進むか陸側により、岩肌に設けられた獣道のようなところを登るかの選択を迫られた時に彼女はそのまま滑りやすい岩の上を進んでいった。
それはまるで道を知っているかのようだった。
「とりあえず、この隙間にはいるかな?。」
岩場を歩きふと見上げたところにあった岩の裂け目、横幅が1メートル位で海面から3メートル上にある。もしかしたら満潮時には海面があそこまで上がるのかもしれないが、今は足がかりを探している。
ベネットを先に上げて危険がなければいいがーあっても何とかしそうだけれどちょっとできなかった。ミントを出してもらえば楽なんだろうけれど、今魔力を使えば感知されるかもしれないからそれもできない。
「まず、俺が上がって安全を確認するから少し待ってて。」
そういってボルダリングの要領で登っていく、片手を縁にかけて体を引き上げて中に入り様子を伺う。こういうときも暗視ゴーグルは役に立つ奥行きは不明かなり奥まであるようだ、天井は5メートルほどか?蝙蝠のような生き物がぶら下がっている。足下は比較的なだらかで、所々水が流れたあとがある。
近くに手頃な岩がある上が平面で大きさが3平方メートル程で、苔もなく厚みは地面から1メートル程か・・・できすぎてる感じもするが
なんか20センチくらいの段差が側面に刻んであって階段みたいになっているってーできすぎじゃね?。
まさかと思って振り返る俺の首の動きがぎこちない、その視線の先には下に置いてきたはずの少女がいた。
「あまり派手なのはどうかと思うがこれ位はかまわんと思うぞ。」
にこやかに笑って言うな~おまけになんだその後ろにいる青いのは。
ミントひっこめたんじゃないのか?何で出てきてる??。
「これか、だって一人じゃ上がれないじゃん。」
いやだから待ってろって言ったじゃん、聞いてなかったの?。
「おまえ、鬼だろ女にもてないだろ、常識欠如してるとかいわれないか?。」
なんかボロクソに言われる、なんなんだいや俺は間違ってないぞ、安全か危険かわからないところに連れていけるわけがないじゃないか。
「今俺は間違ってないとか思ったろ?ここに危険があるかもしれないとかー一歩譲ってそうだとしても外はじゃあ安全なのか?波の中から敵対性のある魔物がでてこないのか?幼い少女が足も立たないところに置き去りにした自分は正しいとおもうのか?。」
それは、考えなくもなかったがーって譲るの一歩だけ?普通百歩くらい譲ってくれない?足が立たないって、ちゃんと立ってたじゃないか。
言い返そうとしていると岩場の上にベッドが出現した、フリルの付いたピンクの羽布団付きだし枕の横には熊のぬいぐるみまである。
唖然としてる俺の横をスタスタと通り抜けてベッドの側まで行き、パッパっとパジャマに着替えて布団の中に潜り込んだ。
「ミント、警戒よろしくね。その男は無視しててよし。」
ちなみにこの岩の中?ひんやりとしていて快適な空間になっている。
いやそうじゃなくて、魔力を感知されたらどうするんだこんな狭いところで襲われたら・・・
「床で寝る許可はあげるー風邪引くなよ?。」
なんて、心優しいお言葉なんでしょうーじゃないって
「あのな、さっきの仲間が・・・」
「大丈夫さ、まさかおまえ偶然ここを見つけたとでも思ってるの?。」
偶然じゃないってまさか魔法で穴を空けたとか言うのか?。
「まさか、魔法でこんな穴空けるわけないでしょ?ってか、流石にこの規模だと相手が何であれ気が付くわよ?。」
「えっ、じゃあ・・・。」
「ボーン達を偵察に出したときに見つけたらしいのよ、さっきの後処理の時にボーネを先行させて場所を確認しておいたわけ。」
何かさっきから心を読まれてるような気がするけど気のせいなのかな?。
今俺たちの周りには淡い光が灯っている、彼女が召喚した光の妖精が飛び回っているからだ、その姿はよく絵本でみるような姿をしている。
「とりあえず、寝ましょう。後は明日起きてからで、ちなみに警備はミントに任せればいいから。」
それもそうかな、とりあえず体力の回復をして・・・背中が痛いな、流石に石の上だな冷たいし、そう思いながら眠りに落ちていったー目がさめたらログアウトしてることをどこか心の隅で祈りつつ。
朝の光が顔を照らし、一日の始まりを告げる。
暖かい掛け布団にくるまって二度寝を決めようとして、傍らのライフルに顔をぶつけて目が覚める。
寝る前にはなかった掛け布団が身体の上にかかってる?。
起き上がると身体のあちこちが痛む、でも背中の下は岩肌ではなく敷き布団が敷いてある。
傍らのベッドの上に少女の姿はなく、ベッドメイクも済ませてあった。
洞窟の入り口を見ると青いスライムの代わりか黒いのがいた、たしかカカオとかいう強酸性の体液を持つタイプだったなぁと思っていたら、その身体の一部が広がってベネットが現れた。
「起きたんだね、まじそのまま岩の上で寝るとはね。」
いや、お前がそういったじゃん。と口には出さずに今は布団の礼を言うのが大人の対応だろうなんて思いながら口に出す。
「布団ありがとう。」
心なしか顔をそらしてぼそっと返事が帰って来た。
「うん、まぁ風邪でもひかれると行動に支障があるからね。」
ん、あれだな、ツンデレとかいうやつだなこの子。
ベネットのあとからお馴染みの骸骨兵士が現れるかと思ったら、そうではなくてなんか~石像のような物が現れた。
それは器用に足場の悪い中を進み、片隅で止まると何やら背中に担いでいた物の解体を始めた。
「あ・・あれも君が?。」
既に片隅には簡易キッチンがしつらえてあり、そこではてきぱきと動く石像がお鍋を火にかけていた。
少女はテーブルと椅子をどこからか調達してそこに腰掛けて本を読んでいる。
「しばらく、そう食事ができるまで黙っててくれるかな?。」
ん~どっちが子供なんだか・・・お勉強の邪魔をしたんだと気が付いて立ち上がり、
とりあえずライフルだけを持って外の空気を吸おうと黒いスライムのいる出入り口に向かいダメもとでスライムに話しかけてみる。
「通してくれるかな?。」
驚くほどスムーズにスライムは出る場所を開けてくれた。
外に出て左右を見回して波に洗われた岩の上を滑らないように移動して小用を足す。
水平線が見えるのは地球と同じなんだななどと考えながら、ふと海面から突き出した島のような岩に目をやる。彼処の方がいいんじゃないかな隠れるのには、問題はあの絶壁ぽい崖をどうやって登るかだろうな、その分防衛力が高そうなんだけど。
ただ、今の状況は持久戦なんてしても仕方ないからなぁ。
っはぁ帰れるのかな?この世界から死に戻りも出来そうにないしな。
帰るときに入り口でスライム(カカオ)に拒否されるかと思ったけれど、驚くほどスムーズに入れてもらえた、そして中ではとても良い匂いが漂っている。
少女はテーブルの上に朝食を並べている動く石像に何か語りかけていた。
「あいつの分も持ってきてね、量は私の3倍にしてあげて。」
3倍ですか、全身赤く塗るべきかもしれないな・・。