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第七話:四季小春の周りの変化

第七話

 休み時間、結構遠いところからのトイレから戻ってくる途中で(個室はナニをしているのか知らないが近いところは大体満杯)四季先生がよろけながらプリントを運んでいた。

「……身長が低いって言うのにあんなに高く積むからだろうなぁ」

 危なっかしいし、俺自身がえーっと『四季先生を応援する会』だったかの担当になったのでこれは手を貸すべきだろう。

「あっ」

「俺が持ちますよ。どこへ持っていけばいいんですか」

「そんな、悪いよ」

「大丈夫ですって。それで、どこですか」

「教室」

「わかりました」

 そのまま素早く教室へとプリントをもっていく。少し遅れて四季先生が入ってきた。困惑気味ではあるものの、お礼を言われた。

 男子達が寄ってきて親指を出す。

「いい具合だな」

「ああ、これからみんなで頑張って四季先生の負担を少しでも減らしてやろうぜ」

 これが青春って奴だろうか。

 担任教師を助けるのが青春なのかどうかはともかく、改めて四季先生を注意深く観察しているとどこか抜けているところがある。

「っと、危ない危な……きゃあっ」

 プリント数を間違えたのか先ほどの授業で使ったプリント三十枚を廊下にぶちまけたので素早く回収し、渡す。

「あ、ありがとう」

「四季先生怪我は……」

 見れば膝小僧から血が出ていた。

「ちょっとすりむいただけだから大丈……」

「大変だっ。血が出てる……誰か担架を頼むっ」

「おうともっ」

 俺の声にB組の男子生徒が二人やってきて先生を担架に乗せる。何事かと周りの生徒が眺める中、そのまま廊下を疾走していった。

 その日の最後の授業はまた四季先生が担当だ。

 時間になって現れた四季先生はどこか浮かない表情である。

「どうかしたんですか」

 女子のクラス委員長が尋ねると困った顔で頭を掻いている。

「あうう……え、えーっと、このクラスのプリントがなくなってね。どこに置いたのかわからなくなっちゃって」

「それならあれじゃないですか。夢川君が持ってきてくれてましたよ」

「あ、あれ? 本当だ……夢川君これをどこで?」

「コピー室ですけど」

「そうなんだ……うーん、今日もダメダメだなぁ」

「せんせーそんなことより早く授業をしてくださーい」

「あ、ごめん。じゃあ授業を始めます」

 こんな感じで一日が終わり、掃除の時間となった。掃除当番などはなく、人海戦術で掃除をしていく。

 羽津学園では教師も掃除に加わることが多く、四季先生も率先して掃除をしてくれていた。

「う、うーん」

「あ、俺が持ちますよ」

 重たそうなバケツを横から持ってあげると四季先生がぽかんとしていた。

「な、なんだか今日夢川君優しくないかなぁ?」

「気のせいじゃないですかね」

「そうですよ。四季先生」

「前からこんな感じでしたよ」

 他の男子達がかなりにこやかーな笑みを浮かべていた。

「そ、そうなの? わたし君たちの事を少し誤解してたかも」

 それは誤解ではないのだろう。それなりに悪いクラスメートたちなのだ。表面は別にただ、今回ばっかりは四季先生に恩返しをしようという純粋な気持ちだろうが。

 次の日、授業も終わりに近づいてきて残り十五分。先生が小テストの紙を配り始めた。

「最後の問題は『朝起きたら~』から続く簡単な文章を作ってください。発表してくれた人は内申点もプラスしますよ」

 五分程度の小テストも終わり、このままトラブルなく終わるだろう。俺もそう思っていたし、他の連中もそうだったに違いない。後は掃除をしてばいばいだ。

「最後の問題を発表してくれる人はいませんか」

「はいっ」

「では早乙女君」

「朝起きたら股間がアクセルペダルになっていた。小春先生っ、踏み込んでくださいっ。おれのアクセルペダルを踏み込んでくださいいいいいっ」

 全員絶句。俺はすぐさまくだらない事を言った奴の所へ向かい、胸倉を掴んでやった。

「お前誰の授業を受けている最中にそんな事を言っているんだっ」

「うぐぐ……」

「おい、お前らっ、バケツを二つに水入れろ。そんで縛り付けてから廊下に立たせとけ」

「ラジャー」

「あ、そ、そこまではしなくていいから」

 四季先生が慌てて駆け寄って温情采配をしてくれる。

「ちっ、四季先生に心の底から感謝しとけよ」

 他の男子生徒も俺と同じ気持ちらしくあいつは後で再教育が必要だなと呟いている。これだから下ネタに走る奴は油断ならんのだ。

 いつもだったら調子に乗って大騒ぎするはずの男子が今日は珍しく事態を収束させたので女子からはおかしな眼を向けられた。四季先生からもそれに似た視線を少し感じている。

「まさかあのアホな男子が真人間になったっていうの……」

 クラス一のお金持ちがそう呟くが、誰も反応せずに静かに席に着き、先生に告げた。

「さぁ、授業を再開してください」

「あ、え、えーっと」

 チャイムが途中で鳴り、今日の授業は終了となった。

 例の男子生徒が袋叩きになったのは言うまでもない。


前々回のあとがきに書くべきことがあったのに少し引き延ばしてしまい、後悔。次の次からがまぁ、パラレルみたいな感じですかね。繋がっているように見えて、繋がっていない。あとのほうになれば顕著になるかと。それまでこの作品が続いていればですけどね。予定としては野崎百々編ではより吸血鬼についての見解を深める話、山野千鶴だとそれらの背景に当たる方、四季小春はあまり関係ない感じ、最後の一人はこれまたちょっと違う話です。次回、登場します。

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