第六話:始まる新生活
第六話
俺はなんと、美少女と生活する権利を手に入れた!
「夢川さん……一緒に寝ませんか。私の身体、好きにしていいですよ?」
「どうせ血を飲ませてくれって言うんだろ」
「はい」
「ノー。一人で寝ろ」
しかし、それは吸血鬼の少女だった……。
去り際、夢川さんが言っていた事を思い出す。
「もし夢川さんに万が一の事があったら安心してください。十分後には精鋭の対吸血鬼部隊がやってきて埜崎の身体は塵も残しませんよ」
十分かぁ……吸血鬼相手に十分はもたないだろうなぁ。
自分の寝室に入ってため息をつく。埜崎と一緒に住む事は勿論却下出来たわけだが……埜崎は俺の血に対して依存が強くなっているそうだ。鎖に縛り付けるなりすれば俺への被害は零になるが……そうなったら埜崎は死んでしまうそうな。
其処まで言われたら頷くしかないわけで……朝の採血以外では血を吸わないと言う約束となった。
埜崎についてわかった事と言えばいくつかある。
一つ、料理がうまい。
二つ、清楚そうに見えて意外と身体で迫ってくる。
三つ、吸血鬼だそうだが年齢が十七(大仁さんはああ見えて自称三十、先生の方は自称十歳)らしい。
明日からどうするかな……そう考えていたら眠ってしまった。
「ん……」
雀の鳴き声で目が覚め、目をこする。
「おはようございます。朝の採決の時間ですよ」
黒のカーディガンに真っ赤なナース服の吸血鬼が目の前に居た。
「……」
「じゃあ、行きますね」
抱きしめられるようにして俺の首筋に歯を立てる。
吸血鬼が吸血行為を行うと吸われる側に気持ち良くさせる物質が流れ込むらしい。これによって痛みは殆ど感じないんだとか。
「はい、終わりました」
「……そうか」
血も気付けば止まっている。
「じゃ、着替えて来ますね。朝ごはん出来ていますからどうぞ」
「悪いな」
「血をもらってますからね」
あっという間の吸血行為を終えると埜崎は部屋から出て行った。
埜崎と一緒に朝食を食べ終えると電話が鳴った。
「まだスマホじゃないんですか」
「悪いか」
「時代遅れですね」
俺の二つ折りにケチをつけるといい度胸じゃないか。五を三回押して変身すっぞこら。
「もしもし?」
『冬治、そろそろお前ん家に着くから学園行く準備しとけよ~』
「え?」
埜崎を見る。箸を咥えて彼女は首をかしげていた。
「なぁ、俺の友達が来るんだが……埜崎の事はなんて説明すればいいんだ」
「夢川さんに彼女っていますか?」
「いないが……」
まさか彼女って言うつもりじゃないだろうな。
「……初めまして冬治の母です」
「無理だ。吸血鬼だって説明していいのか?」
「大仁さんから言うなって言われてますよ」
「そ、そうだよな……でも、あいつ吸血鬼の事知ってそうだったけど」
「たとえそうだとしても言わないほうがいいでしょう。もし、何かしらのトラブルに友達が巻き込まれたら大変ですから」
それもそうである。
「親戚で手を打ちませんか」
「だな。名字で呼び合うと変に思われるから百々って呼ぶぞ」
「わかりました。冬治さんですね」
どうするか決定したところでチャイムが鳴り響いた。
「入るぞ」
おはようもなしに千鶴たんが入ってきて埜崎を見ていた。
「っと……まずかったか」
「初めまして。親戚の埜崎百々です……あれ? どこかでお会いしませんでしたか?」
「そういえば正月ぐらいに在った気がするなぁ……なんだ、親戚だったのか」
あっさりと信じて千鶴たんは俺を小突く。
「なんだよ」
「親戚が来てるんなら言えよ。変に気を使うだろ」
「千鶴たんが気を使うなんて信じられないな」
「……外国人は苦手なんだよ。英語が苦手なの知ってるだろ」
埜崎はどうみても日本人だし、千鶴たんはなにも英語だけが苦手ってわけじゃあないだろう。もしかして金髪だから外国人だなんて思ったりはしてないよな……。
「ともかく、ほら、学園に行くぞ」
「埜崎……じゃなかった、百々、後は頼んだよ」
「わかりました。またあとで」
千鶴たんにせっつかれながら俺は家を出て、学園へと向かうのだった。
「ん? またあとで?」
「なにぼーっとしてるんだよ」
「悪い悪い」
空から舞い散る雪を眺めながら、俺は千鶴たんと一緒に学園へと向かうのであった。




