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第十九話:裏方の努力と頑張り

第十九話

「雛菊部長、せっかく助けてもらった四季先生を踏み台にしてしまっていいんですか」

「いいのいいのー、あの先生は元から騙すつもりだからねぇ」

「え、本当ですかっ。お願いしに行った時に部長が流した涙は……もしかして偽物?」

「そうだねぇーあれは目薬。だって、騙されやすそうな人じゃない。おまけに人望もなさそうだし、悩みも一人で抱えて折れちゃいそうなタイプだし。何かされても泣き寝入りするねぇ、絶対」

「雛菊部長も悪ですよね」

「そーだねー、あんた達も連帯責任だからばれないようにしないとだめだねぇ。余所でばらしたりしないよーに。いつものように罰金とるからねぇ」

「えー、またですかー」

「いいじゃない。新聞部が復活すればお小遣い稼げるんだから」

「以上が諜報部隊の努力の結果だ」

 諜報部部隊の姫野姫哉が教壇から降りる。

 かわって俺が登壇し、静かに口を開く。

「御苦労さま。みんな、諜報部隊が調べてくれた通り新聞部に情けは無用である」

「そうだー連中に裁きを!」

「四季先生を食い物にするなんて許せないな」

「相変わらず下衆な連中だ」

「何人の女子生徒が涙を流したのか」

「そして、何人の男子生徒が新聞部に賄賂を渡して突撃動画を買ったのか……」

「それらは一切関係がないっ。今こそ俺達の出番だ」

 書記に今後の予定を簡単に書かせて俺は言葉を続ける。

「諜報部隊、実行部隊、指令室……みんなは既に自分がどれに所属しているか知っていると思う。これから先、君達にしてもらうことはどれも重要で連携をとる必要がある。万全を期して男子ではないもののメンバーに加わってもらった生徒もいるからな。みんなで新聞部を潰そう」

「どうやって新聞部を潰すんだ?」

「これも学園側に提出すれば中々いい材料になるとは思う。だが、いくら匿名希望でこのボイスレコーダーを提出しても調べられて尻尾を出してしまう可能性が高い。だから俺は内部分裂を推したい」

「内部分裂?」

 書記に図を描いてもらい、俺は説明を始める。

「新聞部部長である雛菊真衣は金に汚い。学園裏映像を非合法で売りさばいてその窓口までしている。他の部員に金は渡してはいるものの、一割ずつ配り終えたら自身の懐にいれるってやり方だ。そこに付け込む必要もあるが諜報部隊にもう少し詳しく調べてもらい、内部からの崩壊を狙う。実行部隊はその事を新聞部に告げるって感じだな。わかったなら今日は解散だ。ああ、悪いが指令室担当の人たちは残ってくれ。掃除をするから」

 他の生徒達が居なくなって残ったメンバーを見やる。

「私今日は早くスタジオに入らないといけないんだけどなぁ」

「今日発売のちこエッグ売切れたら冬治君が悪いんだよね」

「あたしだって家でティータイムがあるのに」

「冬治さん、この後お買い物があるんですが……」

「みんなが協力的で俺は非常に嬉しいよ」

 俺は更に集まってくれたみんながやる気を出してくれるよう黒い手帳をとりだした。

「天導時空、一週間前飼い猫を蹴っ飛ばしてしまったところを飼い主に見られ責められる。しかし、四季先生が謝ったくれたおかげで丸く収まる。地藤鈴蘭、本来は追試のはずだが四季先生の優しさにより免除され、更には留年も免れる。青空奏、金に幅を利かせるが友達が今一つ出来ず、四季先生に悩みを聞いてもらっている」

 あっという間に手帳を奪われ、ズタズタに引き裂かれてしまった。

「だ、誰から聞いたのよっ」

「別に。俺が本気を出したら凄いって事を教えたいだけさ……四季先生に救われた事があるんだから今度は先生を救う番さ」

「ぐぬぬ……仕方がないわね」

「うーん、四季先生にはお世話になってるからな。ちこエッグはいいかぁ」

「やる気を出してくれて嬉しいよ」

 さて、と前置きをして俺は教壇から降りた。

「……みんなには俺らが駄目だったときのバックアップをしてほしいんだ」

「バックアップ?」

「そうだ。新聞部が復活したらそれぞれに支障が出る情報を流されるかもしれない。そこは当然わかっているよな? 今回の事を他人事だなんて思ってると酷い目に遭うぜ?」

「一体あたしらに何をしろって言うのよ」

「その時は手段を問わない。新聞部を潰してくれ。民衆の力だろうと、金の力だろうと、萌えの力だろうと……えーと、まぁ、そんな感じで」

 新聞部の脅威について俺は四人に伝えて、解散にするのだった。

 そして次の日、登校してきた俺は職員室に呼び出された。

「夢川君っ、新聞部が解散するって話聞いたかな?」

「え? いや、初耳ですが」

 どうやら部長が死にそうな顔で今朝それを告げにやってきたらしい。そして、四季先生に謝ったそうだ。

「……余程怖い目に遭ったようだな。あの四人を焚きつけてよかった」

「え? 何か言った?」

「いえ、何も……良かったですね」

「うん、あ、そういえば記念にどうぞって一枚の写真をもらったんだ」

「へぇ、どんなのですか」

「わたしも今からみるからどういうのかはわからないんだけどね」

 そういって封筒から写真をとりだすと俺はうんうんと頷いた。

「これ、この前の休みのやつですね」

「うん、よく撮れてる」

 参考書を選んでくれている四季先生と、俺のツーショットだった。この程度だったら別に流出してても問題ないだろうか。

 少しばかり、新聞部には悪い事をしたかと思いながら廊下を歩いていると新聞部部長の雛菊が立っていた。

「旦那―、この写真買ってもらえませんかねぇ」

「はぁ?」

 渡された写真をみて俺は驚いた。俺と四季先生が少しだけ顔を近づけている写真で、みようによってはキスをしているように見えるではないか。

「これでどうです?」

 パーを見せられ、俺は財布をとりだす。五百円をとりだすと人差し指を振っていた。

「桁が一つ、足りませんよ」

「え? 五十円でいいのかよ」

「足りないって言ったでしょ。五千円ですよぉ」

「はぁ? あんたなぁ……」

「何、新聞部を解散させたんだからこれぐらい噛みつかないとこっちもやってらんない。あたしは負けず嫌いの性格でねぇ」

 やらしく笑みを浮かべて写真を押しつけられた。

「なぁに、損はさせませんって」

「……もう迷惑かけないって約束するんならいいぜ」

「わーってますって。あんなぎらついた犬が四匹も周りうろうろされちゃあこっちも仕事が出来ないからねぇ。今回は痛み分けって事で」

 四匹か……どうやら、バックアップで頼んでいたほうが我慢できなかったようだな。

 去りゆく新聞部部長を見送っていると彼女は途中でこっちに戻ってきた。

「まだ何か?」

「こっちはサービス。あの記事の完成形」

 手渡された新聞記事を読む。

「……こう言った事情で我々はこのカップルを祝福したい。教師と生徒は確かに問題があるが、節度を守ればいいのではないか。何も堅苦しくする必要はない……か。思ったよりはマシな内容だな。ま、悪いけど別に俺と四季先生は何でもないよ」

「こっちもそれは知ってるからねぇ。別に新聞部じゃなくても稼ぐ方法はいくらでもあるさ」

 今度こそ雛菊は去っていき、俺だけが残ったのだった。


さて、次回作の話でもしますかね。ええ、まだ作品の途中ですが次回作を考えていたりします。気になるあの子と惚れ薬からこっち冬治君は徐々に三年生に近付いていってますが次ではとうとう三年生に……なるのかな。題名はいくつか考えていて気になるあの子とバンパイア、気になるあの子と透明人間、気になるあの子と女子高侵入といったところでしょうか。まぁ、これからもこの作品は続きますのでよろしければ読んでください。

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