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第十六話 黒暗の開幕と絶対要塞の目覚め
漆黒の闇が都会を呑み込んでいく様は、佐紀にとって何より美しい余興であった。
タワーマンションの地下最深部、そこに設置された佐紀専用の超高速特殊エレベーターは、地上世界の混乱と絶望をあざ笑うかのように無音で下降を続けていた。
「非常用電源すら入らない……予定通りね」
エレベーター内に表示された深度インジケーターが「地下150メートル」を示した時、重厚なチタン合金の防圧扉が空圧音と共に滑らかに開いた。
そこは『第一地下要塞・都心中継ブロック』。
地上世界が完全に機能を停止しても、この空間だけは独自の地熱発電および超小型核融合炉によって、何ひとつ変わらぬ安定したエネルギーを供給し続けている。
白磁の壁に囲まれた通路を進むと、壁面に埋め込まれた全自動ホログラフィックディスプレイが起動し、落ち着いた女性の声で人工知能『イヴ』が佐紀を迎えた。
『おかえりなさいませ、マスター・佐紀。地上世界のインフラ崩壊率98.4%を確認。主要通信網、上水道、電力供給、ならびに政府機能の麻痺を検知しました。計画通り、全要塞の閉鎖シーケンスを開始しますか?』
「ええ、始めて。外部からの物理侵入経路はすべて完全遮断。防衛ドローン群を巡回モードに移行させて。ただし、外部監視カメラの映像だけは最高解像度でいつでも見られるようにしておいてちょうだい」
『了解いたしました。要塞群フェーズ4・完全隔絶モードへ移行します』
低音の駆動音が響き、地上へと続く厚さ三メートルの複合装甲ハッチが重々しく噛み合わさった。
これで、彼女は世界から完全に切り離された。
外でどれほど惨絶な殺し合いが起ころうとも、放射性物質が撒き散らされようとも、未知のウイルスが蔓延しようとも、この要塞の内部は永遠に侵されぬ聖域だ。
佐紀は重厚な革張りのソファに深く腰掛け、目の前に展開された巨大なホログラムモニターを見つめた。
そこには、街頭カメラや要塞独自の偵察ドローンが捉えた「世界の崩壊」が映し出されていた。
暗闇に包まれた高層ビル群。
信号機が消えた交差点では無数の車が衝突し、炎上していた。
スマートフォンが繋がらなくなり、パニックに陥った人々が路上になだれ込み、食料品店や薬局のガラスを叩き割って奪い合っている。
悲鳴、怒号、助けを求める叫び。
三十年前、かつての佐紀が死に瀕した時に聞いたあの絶望の狂騒曲が、より大きなスケールとなって世界を包み込んでいた。
「ふふ……聞こえるわ。あの日の音が」
佐紀はワイングラスに注がれた、完璧な温度管理のもとで保管されていた1982年産のシャトー・ムートン・ロートシルトを静かに口に含んだ。
芳醇な果実香と豊かな渋みが鼻腔をくすぐる。
「美しいわね。みんな、平等に絶望している」
だが、彼女の目的は単に崩壊を眺めることではない。
「イヴ、ターゲットたちのトラッキング状況を表示して」
『承知いたしました。特定個人ネットワーク『グループ・カニバル』の追跡を開始します』
画面が分割され、三人の顔画像と現在位置がリアルタイムでマップ上に表示された。
佐藤、小林、渡辺。
かつて、崩壊した世界で正気を失い、佐紀を拘束してその肉を切り取って貪った悪夢の加害者たちだ。
現在、三十年の時を経て、彼らはそれぞれの場所でこの崩壊の夜を迎えていた。
佐紀の瞳に、氷よりも冷たい漆黒の愉悦が宿った。
「さあ……見せてちょうだい。あなたたちがどのようにして『獣』へと堕ちていくのかを」
第十七話 崩落する平穏と狂気の芽生え
崩壊から一週間が経過した。
街から水と気が消え、スーパーやコンビニの棚から一切の食べ物が消え去るまでに必要な時間は、驚くほど短かった。
佐紀は要塞内の温水プールでひと泳ぎした後、シルクのバスローブを羽織り、メインラウンジのスクリーンの前に立った。
テーブルの上には、出来立ての温かいクロワッサンと、新鮮なトリュフオイルを添えたスクランブルエッグ、そして挽きたてのコロンビア産コーヒーが並べられている。
「今日の佐藤くんは、どうかしら?」
佐紀が呟くと、画面に佐藤の自宅マンションの映像が拡大された。
かつて爽やかな笑顔を振りまいていたバンドマンの佐藤は、すでに三十年の月日を経て三十代半ばの冴えない中年男性となっていた。
部屋の中には、泣きじゃくる妻と幼い子供の姿があった。
「佐藤、どうするのよ!? お水ももうないし、缶詰もあと一つしかないのよ!」
「そんなこと言ったってどうしようもないだろ! 外に出たらみんな狂ったみたいに殴り合ってるんだぞ! 行けるわけないだろ!」
佐藤の声は激しく震えていた。
玄関のドアの外からは、ドスン、ドスン、と隣人たちが食べ物を求めてドアを叩く不気味な音が響いている。
かつて佐紀に親切そうにミカンを分け与えてくれたあの気弱で優しい青年は、すでに極限の恐怖によって顔を歪ませ、己の保身のために妻や子供に怒声を浴びせるただの醜い男へと変貌していた。
「いい顔になってきたわね、佐藤くん」
佐紀はクロワッサンを一口かじり、満足げに微笑んだ。
「そうよ。人間なんて、ちょっとお腹が減って水がなくなるだけで、簡単にその化けの皮が剥がれるの。あなたは元々、そういう醜い生き物なのよ」
続いて画面に映し出されたのは、かつて佐紀の太ももに刃物を突き立てた女、小林だった。
小林は地方の住宅街で、両親と共に閉じこもっていた。
だが、その表情にはすでに「正気」の欠片もなかった。
窓の外を警戒する目つきは鋭く殺気立ち、近所の住人が助けを求めてインターホンを鳴らしても、包丁を握りしめながら「来たら殺す! 入ってきたら刺すから!」と金切り声を上げて叫んでいた。
「そう……あなたもそうだったわね」
佐紀の脳裏に、かつて楽しそうに笑いながら「新鮮な方がいいんだってさ」と言い放った小林の顔が蘇る。
「人は、自分を守るためならどんな残酷なことでも正当化する。あなたは昔も今も、己の欲望と恐怖に忠実なだけのケダモノなのよ」
そして三人目、渡辺。
かつて体育会系で消防士として働き、熱血漢として知られていた渡辺は、崩壊直後こそ近隣住民を救おうと奮闘していた。
しかし、暴徒と化した群衆に救助物資を奪われ、同僚から裏切られ、怪我を負わされたことで、彼の精神は急速に壊れていっていた。
画面の中の渡辺は、暗い部屋の隅でバールを握りしめ、虚ろな目で壁を見つめていた。
「助けてやったのに……みんな俺を殴って奪っていった……許さない……絶対に許さない……」
彼ら全員が、着実に「狂気」の泥沼へと沈み込んでいた。
だが、佐紀にとってこれはまだ「前菜」に過ぎなかった。
「イヴ、次のフェーズへ進めるわ。彼らを『導いて』差し上げなさい」
『承知いたしました。作戦コード『メギドの誘い』を開始します』
第十八話 蜘蛛の糸と絶望の選択
崩壊から一ヶ月が経過した。
街は完全に死に絶えていた。
路上には腐臭が立ち込め、衰弱した人々が乾いた喉を鳴らしながら、泥水を求めて彷徨っていた。
そんな中、佐藤の元に一枚の紙切れが投げ込まれた。
暗闇の廊下から滑り込んできたその紙には、こう書かれていた。
『真の救済を求める者へ。郊外の旧物流センターへ来れば、無制限の食料と水を与える』
それは、極限状態に追い詰められた者にとって、まさに地獄に垂らされた蜘蛛の糸だった。
「食料……無制限……!?」
ひび割れた唇を震わせ、佐藤は目を血走らせた。
妻と子供はすでに衰弱し、床に倒れ込んで意識を失いかけている。
「行く……行くぞ! ここにいたって飢え死にするだけだ!」
佐藤は包丁を懐に忍ばせ、部屋を飛び出した。
同じ紙切れは、小林の元にも、渡辺の元にも届いていた。
佐紀が張り巡らせた「誘導網」によって、狂気と飢餓に囚われた悪夢の加害者たちは、吸い寄せられるようにして指定の場所――郊外の巨大な廃物流センターへと集まってきた。
雨が降りしきる闇の中。
懐中電灯の光を頼りに、ボロボロの服を纏い、目だけを爛々と輝かせた生存者たちが続々と集まってくる。その数、およそ五十人。
その中には、佐藤も、小林も、渡辺もいた。
互いに深い猜疑心を剥き出しにし、刃物を握りしめながら距離を取る生存者たち。
「おい……本当にここに食料があるのか……!?」
「騙したんじゃないだろうな!」
興奮と狂気が渦巻く倉庫内に、突如として高音質のスピーカーから美しい女性の声が響き渡った。
『皆様、ようこそお越しくださいました』
全員の視線が一斉に天井へと向く。
そこに設置されていたのは、巨大な液晶モニターだった。
ノイズが走り、画面が切り替わる。
そこに映し出されたのは――暗闇の倉庫とは対極にある、豪華絢爛な部屋だった。
絹のドレスを身に纏い、最高級のワイングラスを手にした美しく気品溢れる女性。
田中佐紀であった。
「な……なんだあの女……!?」
「こんな時に……なんであんな綺麗な格好をしてるんだ!?」
群衆からどよめきと怒号が上がる。
佐紀は画面の向こうから、優雅に微笑みかけた。
「お腹が空いているでしょう? 喉が渇いているでしょう? あなたたちが求めているものは、すべてここにあります」
カメラが引くと、佐紀の背後にある広大な格納庫が映し出された。
山のように積み上げられた、出来立ての温かいおにぎり、焼きたての肉、新鮮なフルーツ、そして清らかな水のペットボトルが何千本、何万本と整然と並べられている。
「あ……あぁ……っ!」
「水だ! お肉だ!」
群衆が狂乱した。画面に向かって手を伸ばし、爪を立て、液晶画面を舐め回さんばかりに群がる。
佐藤も、小林も、渡辺も、そのご馳走の山を目にした瞬間、正気を完全に失って叫び声を上げた。
「くれ! 頼むからくれ! 何でもする! 何でもするから食べさせてくれ!!」
その惨めな姿を、佐紀は高みから冷たく見下ろした。
「ええ、差し上げますわ。ただし――ルールがあります」
第十九話 コロシアムの惨劇
佐紀の声が響き渡ると、倉庫の壁面に設置された無数の照明が一斉に点灯した。
眩い光に照らし出されたのは、倉庫の中央に作られた巨大なガラス張りの部屋――いや、『檻』だった。
檻の中には、湯気を立てる極上のサーロインステーキと、冷えたミネラルウォーターがポツンと置かれていた。
『ルールは極めてシンプルです』
佐紀の冷酷な声がスピーカーから注がれる。
『その檻に入れるのは、一度に二人だけ。そして、生き残って外に出てこられた一人だけが、そのご馳走を食べることができます』
静寂が支配した。
言葉の意味を理解した瞬間、生存者たちの顔が恐怖と戦慄で引きつる。
「殺し合えってことか……!? ふざけるな!」
「人間を何だと思ってるんだ! この悪魔め!」
怒号が飛び交う。
しかし、佐紀は微動だにせず、ただ軽蔑の混じった笑みを深めるだけだった。
「あら、嫌なら拒否してくださって構いませんよ? そのままそこで、静かに干からびて死ねば良いのですから」
その言葉が、最後の引き金となった。
「うあああああっ!!」
最初に動いたのは、かつて消防士だった渡辺だった。
彼は極限の飢えと怒りに突き動かされ、隣にいた見知らぬ男の首にバールを叩き込んだ。
鈍い音が響き、男が倒れる。
「俺が食べるんだ! 俺が生き残るんだぁぁっ!」
渡辺は血まみれのバールを振り回しながら、男の体を押し退けて檻の中へと飛び込み、そこに置かれていた肉を手で掴んで貪り食った。
「うまい……うまい……っ! 助かった、俺は生き残ったぞ!」
肉汁を口から撒き散らしながら歓喜の声を上げる渡辺。
その姿を見た瞬間、周囲の生存者たちの「理性」は完全に破滅した。
目の前で提示された現実。
誰かを殺せば、生きられる。
誰かを踏みつけにすれば、美味しいものが食べられる。
「俺だ! 次は俺だ!」
「邪魔するな! 死ねぇっ!」
狂乱の宴が始まった。
人々は互いに襲いかかり、首を絞め合い、刃物を突き立て合った。
昨日まで「善人」として生きていた者たちが、一口の肉と一杯の水を求めて、ただの凶暴な野獣へと成り果てていく。
その凄惨な地獄絵図の中で、佐紀の視線は佐藤と小林に注がれていた。
佐藤は恐怖に震えながらも、弱った老人に襲いかかり、その首を背後から包丁で何度も突き刺していた。
かつて佐紀に親切な笑顔を見せていた男が、血みどろになりながら老人のポケットから檻の鍵を奪い取ろうとしている。
小林は、幼い少女を抱きかかえた母親の背中に容赦なくナイフを突き立て、少女が泣き叫ぶのも構わずに檻へと駆け込んでいた。
かつて佐紀の肉を削いだあの冷酷な目が、歓喜と狂気にギラギラと輝いている。
「素晴らしいわ……」
佐紀はワイングラスを掲げ、画面の中で繰り広げられる惨劇に乾杯を捧げた。
「そうよ。あなたたちは元々そういう生き物なの。優しさも、愛も、正義も、すべて腹が満たされている時にしか使えない安っぽい飾りなのよ」
あの日、あの死体置き場で佐紀が悟った世界の真実。
それを、今度は自分が神の視点から彼らに証明してみせているのだ。
第二十話 餌としての結末
惨劇は数時間に及んだ。
かつて五十人いた生存者は、互いを殺し合い、傷つけ合った結果、わずか三人へと減っていた。
佐藤。
小林。
渡辺。
奇しくも、あの日佐紀を惨殺した三人の加害者だけが、他の全員を殺し尽くして生き残っていた。
彼らの全身は返り血で黒く染まり、息は荒く、目は完全に正気を失っていた。
彼らは息を潜めながら、お互いを殺す機会を窺って牽制し合っていた。
そこへ、再び佐紀の声が響いた。
『よく頑張りましたね。生き残った優秀な『けだもの』の皆さん』
スクリーンに映る佐紀の姿。
彼女は優雅に微笑みながら、ゆっくりと立ち上がった。
『あなたたち三人は、特に素晴らしい狂気を見せてくれました。ご褒美として、私のいる『絶対要塞』への入場権を差し上げます』
倉庫の奧にある重厚な壁がスライドし、地下へと続く眩いばかりに光り輝く階段が現れた。
『この階段を降りていらっしゃい。そこには、永遠に困ることのない食べ物と、安全なベッドが待っています』
「あ……ああ……」
三人は顔を見合わせ、最後の力を振り絞って階段へと走り出した。
互いを押し除け合い、転がり込むようにして地下へと降りていく。
階段の先には、白磁の美しい扉があった。
彼らが扉に飛びつくと、プシューという空圧音と共に扉が自動で開いた。
そこに広がるのは、ホテルすら霞むほどの豪華な大ラウンジ。
そしてテーブルの上には、三人が見たこともないような御馳走が溢れんばかりに並べられていた。
「食べ物だぁぁっ!」
三人はテーブルに群がり、手掴みで料理を口に押し込んだ。
ローストビーフ、キャビア、温かいスープ、新鮮なフルーツ。
「うまい! うまいぞ! 生きてて良かったぁっ!」
「あははは! 勝ち組だ! 私は生き残ったんだ!」
狂喜乱舞する三人。
その時、ラウンジの奥から静かな足音が響いた。
ヒールの音。
カツン、カツン、と規則正しく響くその音に、三人は顔を上げた。
そこに立っていたのは――
軍用のアサルトリフレクション装甲を纏い、冷酷な笑みを浮かべた田中佐紀だった。
「お味はいかがかしら? 私が三十年かけて集めた、最高の御馳走は」
佐藤が口の周りをソースだらけにしながら、呆然と佐紀を見つめた。
「た……田中……さん……? 隣の……?」
小林も、渡辺も、目を見開いた。
「な……なんで……なんであんたがこんな所に……!?」
佐紀はゆっくりと歩み寄り、佐藤の目の前で立ち止まった。
そして、その瞳の奥にある漆黒の殺意を解き放った。
「久しぶりね、佐藤くん。小林さん。渡辺さん」
佐紀の声は、氷のように冷たかった。
「三十年ぶり……ううん、私にとっては『あの日』以来かしらね」
「え……? 何を言って……」
佐紀は静かに右手をかざした。
【空間収納】の解放。
一瞬にして、三人の目の前に「あるもの」が出現した。
それは――錆びついた包丁と、太ももの肉を削ぎ落とされた、あの死体置き場の巨大なホログラム映像だった。
「ひっ……!?」
小林が悲鳴を上げて後ずさる。
佐紀は冷たく微笑みながら、言葉を続けた。
「思い出させてあげるわ。あなたたちが飢えに狂い、私の腕を押さえつけ、笑いながら私の肉を切り切り取って食べた、あの日のことを」
「な……なにを……夢でも見てるのか、この女は!?」
渡辺が怒鳴りつけ、バールを構えようとした。
だが、次の瞬間――
バチチチチッ!!
要塞のセキュリティシステムが作動し、天井から照射された高電圧レーザーが三人の手足を正確に貫いた。
「ぎゃあああああああっ!!」
絶叫がラウンジに轟く。
手足を撃ち抜かれ、床に転がり落ちる三人。
佐紀は倒れた佐藤の太ももを、自らのブーツのかかとで容赦なく踏みつけた。
「ぐああああっ! やめろ! 頼むからやめてくれ田中さん!」
「痛い? 苦しい? でもね……私が味わった痛みに比べたら、こんなのただの準備運動よ」
佐紀の瞳には、一切の躊躇も、同情も存在しなかった。
「あなたたちはね、私に助けられ、私に優しくされながら、最後は私を喰らった。だから誓ったの。今度は私が、あなたたちからすべてを奪い返すって」
佐紀は空間収納から、一本の鋭利な外科用メスを取り出した。
銀色の刃先が、要塞の美しい照明を反射して怪しく光る。
「安心して。時間停止のスキルがあるから、あなたたちを簡単には死なせないわ。削ぎ落とした肉はすぐに治療し、永遠に……そう、この世界が完全に滅び去るまで、私の『餌』として生かし続けてあげる」
「ひぃ……! 助けて! 助けてくれえええっ!」
狂乱の叫び声が響く中、佐紀は優雅にメスを構えた。
かつて「餌」として惨殺された女は、いまや最高峰の要塞の中で、復讐の果実を貪る「絶対的な捕食者」となったのだ。
「さあ……反省会を始めましょうか」
暗黒の絶叫が地下要塞の深奥へと吸い込まれていき、彼女の完璧なる世界は、永遠の完成を見たのだった。




