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カフェオレ  作者: ヤマト〆
第2章 共に
16/19

アレンは

__遡ること少し前


ポッツーーーーーン。


アレンはとても暇を持て余していた。この酷く暗く静かなこの牢屋の中で、何をする事もなくただボーッとしていた。


過ぎて行く時間の中で、アレンはステラの事やカイルとゼロの事共々心配にはなるが、かと言って力になるのかは微妙な所だ。


アレンの中に眠る、良く分からない力で力になれるならば、それはそれで歓迎するところではあるが、アレン自身が得体の知れていないものなど使いたくはない。


そんな悶々としている最中__音が響いた。


コツコツと刻み良く聞こえてくるその音は正しく靴音に違いない。だが、問題は誰なのかという事だ。


魔女がアレンを殺しに来たという可能性もある。アレンは肩唾を飲んで、その靴音に念じた。味方であって欲しいと。


「うん?君きゃな?ここに収容された魔女の地を荒らす不届き者は?」


灯りを手に持ち、黒い三角帽子と黒い装束を身につけた可愛い金髪のポニーテールの女の子がそこにいた。


まだ変声期を終えてないのか声も高く、少し崩れた日本語を使う少女は、死神には程遠い容姿だった。


「…あぁそうだよ」


逃げても無駄だと悟ったアレンは素直にそう答えた。その言葉に、その少女は何だか納得したように「ふ〜ん」とあまり興味無さげに呟く。


「お前は一体誰だ?」


「えーっと…パメラ!この魔女の国に住む可愛らしいまだまだ幼気な少女だよ?貴方のお名前は?」


「アレンだ。それより、ここに魔女が来たって事は俺を殺しに来たのか?」


「__!!い、嫌…そんな訳ないでしょ!?パメラは大婆様の所に連れて行く役目なだけで…」


アレンの一言で完全に動揺しているパメラ。嘘は苦手なのだとアレンは思った。


パメラは見た所14歳位の可愛らしい少女だ。そんな彼女が死刑執行の案内役を担っているのだ。負担が重過ぎることこの上ない。


「分かった。そこに連れて行ってくれよ__但し、条件がある」


「え!!こんな時にそんな条件が通ると思ってるのきゃな!?」


「思ってるさ。何たって俺は天使になれるからな。その力を使えば簡単に逃げられるさ」


アレンにとって意味の分からないこの力を、脅しに使うのは危険な賭けだ。


発動条件は未だ不明だ。しかも使った事があるのは一度だけ。こんなの、平等な取引だとはちっとも思えない。


けれど、すごすごと殺されに行くのはまだゴメンだ。やり遂げなければいけない事は山程残っているのだ。


「え…ほ、本当なの!?」


「え…あ、あぁ!翼を生やして空を飛んだり、弓を使って相手の邪悪な精神を破壊する事も出来る!!」


因みに最後のはゼロの受け売りなので、使った事はない。というか、食い付きが思った以上に良くてアレンは少しビビる。


「じゃ、じゃあ!!ステラのおきゃあさんを治す事も出来るの!?」


「あぁ出来るさ!!__え?」


聞き慣れた単語が突然飛び出してきた。このパメラの口から。この可愛らしい金髪ポニーテール少女の柔らかそうな唇と唇の間からだ。


「なんきゃ今変な事考えなきゃった?」


「あ、いや別に何も…」


アレンの話の斜め右を行った妄想にパメラは敏感に反応し、ジト目で此方を見てきたので、アレンは目を泳がせる。


「まあいいわよ。それより情報を整理しましょう!!」


「いや、それよりステラの話を!!」


「情報を一旦整理するのよ!!」


「だから!!」


「情報整理を!!」


「言いたいだけだろ!!」


とまあ論争が起こり、最終的にはパメラのゴリ押しで勝利したのは言うまでもない。


「なるほど…つまり貴方はステラの味方なのね!?そして今牢屋に閉じ込められていると…そしてこれからパメ…私が魔女の館に案内する。

けれど、アレンはステラのおきゃあさんを助ける不思議な力を持っていると…これでいい?」


「まあそんなところだよ。それより早くステラの事を教えてくれ」


ため息混じりに言うアレンに対して、パメラの顔の輝きはまだ終わってないようだ。


「まだよ!!ねぇ、何でアレンはここに来たの?しきゃもどうやって?ステラとはどうやって知り合ったの?」


「あのなぁ…いいからステラの話を聞かせろやあぁぁぁぁ!!!!」


アレンの不満が爆発すると、パメラは急に表情を崩し、瞳からうるうると大粒の涙を流し始めた。


「良いじゃない!!良いじゃない!!パメラは外の人とお喋りするの初めてなんだし!怒らなくったって!!うわ〜ん!!」


「あ、いや…ごめん。悪かった泣き止んでくれ。頼む。な?分かったよ。お兄ちゃん、とことんパメラに付き合うから許してくれよな?」


「え、本当に?ありがとうアレン兄ちゃん!」


「あは…あはははは」


どうしてこの子を案内役にしたのか、アレンにとっては不可解過ぎる疑問だが、取り敢えず泣き止んでくれたのは良しとしよう。


だが、ここからステラとの出会いを話さなきゃいけないとなると、少し時間が掛かりそうだ。


「アレン兄ちゃん優しいきゃららステラの事話したげるね!ちゃんと聞いててね!」


「おお、本当か!良かった…」


その事にホッとしたのも束の間、アレンはパメラの口から紡がれる優しいようで蓋を開けたら悍ましいその言葉の羅列は、話をしたのがパメラで良かったと思わせるほど残酷なお話だった。


パメラ本人も、話の内容を分かっているのか、最後の方の内容では涙を流しながら話していた。


優しい子だな、とアレンは思った。


けれど、少し胸につっかえる物がある。それは__ステラの記憶喪失だ。


きっとステラはこのパメラという少女を覚えてないだろう。


それが酷く心に突き刺さり、アレンも涙が出そうになった。けれどそれを必死に抑え、彼女の話を黙って聞いていた。


「__っていう事なの…ぐすっ…うぅ」


「話してくれてありがとな。それよりここ開けてくれるか?」


「…うん。分きゃった」


パメラは鼻水と涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらも、ポケットに入れてあった鍵でアレンの牢屋の鍵を開けた。


ガチャンと、重い響きが室内を響き渡り、アレンは牢から出た。


「ねぇアレン…このまま魔女の館に行ったら、アレン死んじゃうよ?パメラやだよ?」


「大丈夫だよパメラ。俺がなんとかするさ。それに__用があるのはこっちもだからな」


奥歯を噛み締めて、アレンは一歩一歩外へと歩き出した。その後ろをひょこひょことパメラが付いて来る。


アレンとパメラでは身長が大分違うので歩幅もかなり差があるので、パメラはとことこと駆け足気味だ。


それを後ろで感じつつも、アレンはそれを止められないでいた。内で燃えている闘志が、早くしろと叫んでる。


「待ってろよ…ステラ」


顔を顰めたアレンに対してパメラは思った。


__怖いと。


それは怒り以外の何者でもないのはパメラも何となく分かる。


だが、とても恐怖を感じた。それは幼い彼女なりの直感なのだろう。


それを言い出せぬまま、パメラは後ろをついていく。


目指すは__魔女の館だ。

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